67話 反抗!ナイトウは意地っ張り①
秘密クラブの入り口を見張っているナイトウは、ついにその姿を捉えた。ナツキの肩に腕を回し秘密クラブへと連れ込むクラウスの姿。もうすぐ時間は午前0時を迎えようとしているが、王都の繁華街は不眠都市。酒や女を楽しみに来る大人たちでごった返している。まだ学生のクラウスも、そんな大人たちに混じって不埒な悪行を働き、今またナツキをその毒牙にかけようとしている。
「絶対に許さないからな!」
ナイトウもクラブに乗り込もうとすると、入り口で武装従業員たちが立ちはだかる!先ほどナイトウと死闘を繰り広げたそのうちの一人が、あらたなエモノ釘メイスを構え、言い放つ。
「貴様の狙いはクラウス様だな。ここを通すわけにはいかん。ボッコボコにコロコロしてやる!」
「…邪魔だどけェ!」
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「先輩…どこに行くんですか?」
「いいからいいから、楽しいところだよ」
明かりの少ない廊下をクラウスに連れていかれるナツキは、少し不安になる。いままで連れていかれたお洒落なお店やらお高そうなホテルやらとは趣が違う、何と言いうか品がない空気が漂っている。睨みをきかせるいかつい従業員がナツキの不安を煽る。
「さ、ここだよ」
立ち止まったクラウスが、目の前の扉を開く。その中は妙なセットが揃っていた。部屋の中央に敷かれたマット、片隅には跳び箱、ボールが詰まれた鉄のカゴ、障害走でコースにセットするハードル他、いろんな陸上競技に使うアレコレが揃っている。
「ここ、体育館倉庫?」
「そ♡こんなのも用意してるんだ。あそこで着替えてきてよ」」
クラウスが倉庫の棚からコスチュームを取り出す。上は体操服とその上から着るジャージ、下はあえてブルマではなくハーフパンツ。ハーフパンツの隙間から見えるおパンツが良いんだとはクラウスの弁である。
「もー、先輩って変態なんですか?」
「もちろん」
「むー…運動靴は無いんですか?ボクの今の靴じゃ合わないですけど」
「あ、靴は履かないでね。ていうか屈しても脱いできてね♡」
「うへぇ…わかりました~」
倉庫の中にある扉を開けると、倉庫の中には似つかわしくない設備がそこにはあった。バストイレ、そして洗面台。あくまでセットなんだな、とナツキは改めて思う。
(あのハードルに跨らされそうだな~…やれやれ。顔、洗った方がいいかな?)
下着を残し脱衣したナツキは、洗面台に顔を向ける。薄くお化粧しているし、ホテルでご飯も食べたし、顔を洗おうとすると扉をノックする音がする。
「ナツキくん、まだかい?」
「ちょ、先輩ちょっと待ってください。顔を洗おうとしてて…」
「あ、それはあとでいいよ。着替えた格好を先に見たいから」
「えー、はいはいちょっと待っててください」
我慢できない先輩だなぁ、とナツキは呆れながら体操服を着用する。この姿なら化粧は落とした方がいいんじゃなかなと思いながら。そして扉を開けた瞬間、ぐいっと手を引かれ中央のマットに引き倒される。
「あいた、ちょっと先ぱ…い…?」
ナツキの手を引いたのは全裸の男。どんだけ我慢できないんだと一瞬思ったが、その股間のモノはナツキが見慣れたクラウスのモノとは明らかに違う。そして見上げる。その顔は整ったクラウスの顔ではなかった。それだけではない。同じような全裸マンたちが周囲を取り囲んでいる。状況が理解できない。いや、理解できないわけではない。受け入れられないと言った方がいい。信頼していた先輩が、男たちの中で笑みを浮かべているその姿が、今の状況を。
「え…?」
「ナツキくん。始めようか…輪姦学校を、ってね♡」
一糸まとわぬ男たちが、ナツキを取り囲む。
(私は…レイプされるんだ…)
この期に及んで、彼女は理解した。自分のこれから辿る運命を。
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バチィ!ナイトウの道を阻む武装従業員たちが突然痺れたように硬直する。
「なんだ!?」
「今です!先に行かれよ!」
何者なのかはわからないが、その声の主がやったのだろう。すぐにナイトウは秘密クラブに突入する。
「待て…グワァー!」
痺れと痛み耐えナイトウに掴みかかろうとする武装従業員を、その男が放つ電流がまたも遮る。
「スタンサンダー。諸君らの動きを数秒止める我が忍術である」
その男は、武装従業員たちを遮るように入口を遮る。痺れから復帰した武装従業員たちが、すぐに侵入者ナイトウを追おうと立ち上がるが、謎の男が秘密クラブの入り口に立ちはだかる!
「ここから先は通さぬ。かかって参られい!」
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「どけどけぇ!」
手練れの武装従業員たちは入り口に集まっていたため、中には普通の従業員しかいない。クラブ内で暴れるナイトウの姿に客たちもやれやれーと盛り上がっていたが、ナイトウが暴れた結果巻き込まれた客や従業員が別の場所で乱闘を起こし始めたりもうてんやわんやである。
「この騒ぎのうちに…!」
ナイトウは先ほど撤退した地下へと向かう。武装従業員はいない。バックヤードから騒ぎを聞きつけた通常従業員たちをのして、ナイトウは体育館倉庫入り口前までやってきた。
ガキン、と開け放とうとした扉の動きが止まる。やはり鍵がかかっていた。
「クソ…!カギは…!」
今しがたのした従業員がカギを持ってないか調べようとしたナイトウは、内部からの音を耳にする。
ヴィィ~んという電動音。そして、女の、口内にある異物のせいで声にならない声。
「んぐっ…おぇ…」
ナイトウの血圧が一気に上昇する!脈拍が加速する!怒りのパワーが一気に臨界まで上昇し、そのまま扉を蹴破った!
「ナツキィ!」
ナイトウは目にする。左右から両腕を、そして後ろから頭を拘束されているナツキの姿を。ナツキの前にたつ全裸の男の尻が前後に動いている。男の足の間には、ナツキの口の淵から垂れた白濁した液が、地面へ垂れ落ち小さな水たまりを作っている。ナイトウは自らの怒りのボルテージが天井を超えたのを理解した。怒りのままに、叫ぶ。
「テメェら何してやがるゥ!」
「何って…見てわかるだろ?」
男たちの背後から姿を現したクラウスが、ナツキの前にたつ男の背中を叩く。股間を全く隠さない男をナイトウへ向き直させながら、クラウスは説明する。
「歯磨き」
「ハァ!?」
向き直った男の股間、そこに聳え立つムスコにおおいかぶさっているシリコン製のカバーは、人の手の形をしていた。その手が握っているのはヴィィ~んと動く電動歯ブラシ。これでまずおしゃぶりの前に口腔ケアをしていた、とクラウスの弁。歯ブラシの先端に泡立っている歯磨き粉がミントな香りを振り撒いているのにナイトウは気付いた。
「口の中ってのは雑菌が手のひらの40万倍もいるんだ。そんなとこにチンチン入れるんだから、まず洗浄しないといけないよね」
クラウスの説明中、歯ブラシから口が解き放たれたナツキは手元に置かれた水でぐちゅぐちゅと口をゆすぎ、同じく置かれている洗面器に白濁した歯磨き粉とまざった今の水を吐き出し、ナイトウへ目を向ける。
「ナイトウ、なんで来たんだよ…」
先日放課後でナイトウが言っていた言葉が事実だったナツキは、あまりものショックの大きさにもはや抵抗する気力すらなかった。もうこのままでいいやと思っていたところにやって来たナイトウが、信じられなかった。信じなかった自分の所になんで来たんだろうと。ただ、それだけが疑問で、それが反射的に口に出た。
「そりゃな…ぐぇっ!」
応えようとするナイトウだったが、中で待機していたクラウスの手下の一級ソルジャー二人に組み敷かれてしまう。
(こいつら…マンションにいた…)
無様にも床をペロペロした状態のナイトウを見下ろしながら、クラウスが勝ち誇ったように口を開く。
「ワハハハハ、ナイトウくん。君は幸せだよ、好きな女が他の男たちに無理やり犯される場面を見れるのだから。NTRは心を豊かにする。君はこれでまた一歩大人になれるってことだ」