66話 悪童、許すまじ③
金曜日!一週間で1番目に楽しい一日!土曜日が1番だという意見もあるだろうが、土曜日は一週間の疲れで動けないし、月曜という脅威がじわじわと迫る恐怖が誤魔化しきれない。やはり解放感という意味では金曜が最強まのは間違いないだろう。その解放感が待ち遠しい金曜の朝のホームルーム。クラスに二人の欠席が出ていた。ナイトウと…トッシュである。
「ナイトウと、トシくんも休み?まさか…」
留学生が来て早々サボタージュを決めたとは思えないし、ナイトウが何かやらかしたんだなと察する。昨日のアレで登校し辛いのだろうが、関係のないトシくんまで巻き込むのは一体何を考えているのやら、と証拠もないのにナツキは憤慨する…が。
(でも、許す!なんたって今日は放課後に…ウフフ)
ナツキは放課後にクラウス先輩との外出を楽しみにしているのだ。深夜0時、日付が変わる頃に素敵な場所に連れて行ってくれる。それまで素敵なホテルで素敵なディナーを楽しもうと約束してくれたのだ。
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「留学生…これは?」
「これは魔界に伝わるマジックアイテムでな。これを引き抜くと俺に合図が送られる。クラウスたちがそっちに来たらすぐにそれを引き抜け。逆に俺のとこに来たら俺が合図を送るからすぐに来るんだ」
「おう…しかし連中は5人、いや手下のソルジャー入れたら7人だ。俺たちだけで勝てるのか?」
「大丈夫だよ、虚弱な貴族の坊ちゃんどもに負けるような体じゃないだろお前は。俺だって魔界でいろいろやってんだから」
トッシュとナイトウはクラウスがやって来るであろう場所を絞り、それぞれ張り込むことにした。トッシュは先日の夜クラウス宅に潜入し、いろいろ情報を集めた結果一つの…いや、多数の証拠を掴んだ。
それはこれまで行われてきた肉の宴の画像映像である。これらをネタに脅迫し、被害者の女の子を売春させたというもの事実だった。顧客名簿までしっかりと残っている。その中にはどうやら王国の有力者たち多く食い込んでいた。おそらくはこの顧客情報もまた、揺するネタにでも使うつもりなのかもしれない。
そしてその証拠画像や映像は、常に二つの場所のどちらかで行われているようだった。
一つは、クラウス宅の別室。このマンションの所有者はクラウスの実父ゴッドバスター超爵であり、部屋をいくつか自由に使えている。そのうちの一室が、おおきなベッドを始めとしていろんな拘束具やら何やらかんやらが揃っている。直近の映像ではメガネをかけた女の子がこの部屋でレイプされていた。
そしてもう一つが、市内に用意されている秘密クラブの地下。ここの店長はゴッドバスター超爵の馴染みであり、地下にいくつものシチュエーションを再現した部屋が容易されている。電車の中のような部屋、体育館倉庫みたいな部屋、大きなプールが設置された部屋…。
今回はホテルで外食すると言っていたので、おそらく市内の秘密クラブで行われる可能性が高い。というわけで、二人でその秘密クラブに侵入しているというわけだ。
「なんで誰にもバレずに忍び込めるんだ?こっち見えてるよな…?」
「見えてはいないけどあんまり大きな動きや声を出すとバレるから慎重にな」
トッシュは八卦龍拳の応用で気の流れを操作し、こちらを認識できなくしている。そうして地下室入口までやって来た。
「よし、たぶん次はこの部屋でヤる予定だから、ここで見張ってな」
トッシュが案内したのは部屋の中央にマットが敷かれた、体育館倉庫を再現した部屋である。仲には跳び箱やハードルなんかも設置されており、おそらくいや間違いなく運動ではなくそういったことに使われているものだろう。ハードルはちょうどお股に当たるくらいの高さだ。跳び箱は上でうつ伏せになるとちょうど脚が地面に付くくらいで、後ろからヤるのにちょうどよさそうだ。
「この中で待つのか…」
トッシュはナイトウを跳び箱の中に入れる。部屋にはトイレも設置されているので催したときはそこを使ってもらう。
「じゃ、俺は行くから。何かあれば呼べよ」
「おう…」
そうしてトッシュは秘密クラブから出る。時刻は14時。あとは放課後にクラウスとナツキを尾行するだけだ。ナイトウは万が一アクシデントが起きたときのために設置している。例えば邪聖拳ネクロマンサーが妨害をしたりしてはぐれてしまったりとか。
「ていうかディナーのあとはヤるんかなあいつら…まぁそれは別にいっか…今更だし」
トッシュはクラウス宅に潜入した時にナツキがクラウスに抱かれている場面も見てしまった。ナイトウには黙っていたが、好きな女が他人に抱かれてる姿というのはなかなかにお辛いものがある。
「ん…?なんでマユ姐さんを思い出してんだ俺…」
ふと、トッシュは別離したマユ姐さんを思い出す。そう言えば初めて見た女性の裸はマユ姐さんのものだった。マユ姐さんが勇者量産計画で犯されていると聞いて、すごく心が痛んだ。
「あぁ…そうだな。俺はあの話を聞いてからマユ姐さんを意識してんだよな」