序章『始まりと終わり』8
すいません…他のを書いてたら、忘れてました
「だろ?半永久的にってとこが完全に引っ掛かってるだろ?」
「それはそうですけど…ケイアス」
「ん?」
「ここ、今回の調査をするギルド『ブレス』ですよ」
「…え?」
それを聞いて目が点になる龍稔。
大和は、ため息を吐きながら、彼に依頼状を見せた。
そこには、
【<依頼状>
貴公に今回調査して頂きたいのは、ギルド『ブレス』である
まずは、ギルド帳に目を通してもらい、それから我がもとへ来られよ…
A.H】
と書かれていた。
「マジかよ…」
龍稔はそう言い、深くため息を吐くと、ペンをその場に置いた。
「あの人、苦手なんだよなぁ…俺」
と呟くと、
「ほお…どんなところが苦手なんですか?」
と彼の後ろから声が聞こえてきた。
「そりゃあ…腹黒いというか、二重人格というか…なんか…あの人、言い方次第じゃコロコロと人が変わるからなぁ。あの性格だけでも、どうにかして欲しいんだよなぁ――って、え?」
龍稔は気付く。自分の後ろに誰か居るのに…
「よう…」
「!?」
振り向くなり、彼は慌ててその場を離れた。
何か恐怖を見たような顔をしていた。
「誰が腹黒いんだ…?」
龍稔の後ろに立っていた男は、先程とは全く違うドスの効いた口調でそう言った。
「い、いや…その――」
「貴方の事を言ってましたよ。アルベルト」
「ほ~ぉ…」
龍稔が言い訳をしようとすると…大和がニコニコしながら、真実を男――アルベルトに言った。
それを聞いたアルベルトは、両手を胸の前に合わせ、指を鳴らし始める。
「(ひ~ぃぃぃぃぃ!)ご、ごめんなさい!俺が悪かったです!!」
その姿を見て、龍稔は一気に冷や汗をかき、慌ててその場に座り込み、土下座をし始めたのだった。
「――で?依頼を引き受ける気にはなりましたか?」
数分後、アルベルトは龍稔が座ってた椅子に座り、一方の彼はあれからずっと正座をしていた。
アルベルトの口調は、さっきの荒さとは別に、鋭い刃物のような…そんな感じがしていた。
「い…一応…」
流石に、さっきのが答えたのだろう…龍稔は、反論すら出来なくなっていた。
「なら、良いです。私は失礼しますが、くれぐれも失敗のないようお願いしますよ?ケイアス」
「は…はい…」
「では…」
アルベルトはそう言い残し、その場から姿を消した。つまり、異空間を渡り天界へと帰ったのだ。
その瞬間、龍稔は大きくため息を吐き――
「大和!客は来てないって言っただろ!?来てたじゃねぇか!!」
と怒鳴り出しだ。
「ああ…それは、『玄関からの』という意味ですよ」
「ったく…お前、たまにややこしい事を言うよな…」
大和が微笑みながら答えると、彼は更にため息を吐いた。
「さて…準備をしようか」
「あ…でも、どうしますか?確か、ギルドを逮捕するのは国王軍ですよ?」
龍稔が立ち上がると、大和は思い出したかのように言う。
「おい…お前なぁ、忘れたのか?あの人があそこに居るじゃねぇか…あの人が」
それを聞いて、龍稔は呆れた口調で答えた。
「あ…そういえば、居ましたね。あの人」
流石にそれを忘れていたらしく、手を軽く叩く大和。
「そうそう、あの人に言えば大丈夫だから…大和は例のを頼むな?」
「御意…それで、ケイアスはどうするんですか?」
「俺か?俺は、これからやる事があっから別行動」
「別行動…ですか?」
龍稔の言葉に、彼は聞く。その顔は、なにやら寂しそうな顔をしていた。
「ああ…あの人に使いを頼まれててさぁ、先に行かなきゃなんないんだ」
「そうですか…」
しかし、理由を知るとすぐ笑顔になる。どうやら、龍稔と離れるのが少し嫌だったようだ…
「それじゃあ、またどこかで落ち合いましょうか」
「ああ、そうしよう」
そして、二人は別々にその建物から出た。
☆・☆・☆
「お邪魔しま~ぁす…」
それから一時間後。龍稔はそう言いながら、街の中心にある立派な屋敷へと足を踏み入れた。すると――
「『お邪魔します』じゃなくて、『ただいま』でしょ?龍稔」
庭の方から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「げっ…雷兄…」
振り向けば、そこに立っていたのは、庭の手入れをしている雷鳴だった。
そう…ここは、神家の屋敷であり、龍稔の今の家でもある。
「『げっ…』とはないだろ?『げっ…』とは…」
「だって、雷兄が刃物を持つと、なんかこゎぃ――」
「ん?今、小さく何か言わなかったかい?」
「ぃや…何でもない!」
龍稔はポツリと呟くと、雷鳴に聞かれ慌て出す。
何故なら…昔、初対面の雷鳴に刃物で脅された事が、彼にとってトラウマ化しているからである。
「なら、良いけど…お使い行ってきてくれた?」
「ああ…これだろ?」
雷鳴に聞かれ、龍稔は鞄からある物を取り出した。
それは、赤子の手の大きさくらいの赤翡翠だった。
どうやら、彼がお使いを頼んだらしい。
「そうそう。これこれ…」
雷鳴はそれを受け取ると、マジマジと見出した。
「良く見つけたね…この大きさのを」
「雷兄に言われてまさかとは思ったけど、質屋で売ってあったのを偶然見つけたんだ…」
雷鳴に聞かれ、龍稔はそう答える。
どうやら、その大きさの赤翡翠は滅多にない貴重品のようだ。
「でも、それどうする気なんだ?雷兄…」
「ある人を助ける為の鍵だよ。これは」
義弟の問いに、雷鳴はウインクをしながら言った。
その言葉に、龍稔は何が何だか分からず、ただただ首を傾げるだけだった。