表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

第1章『おかしな家の住民達』2

「ところで…貴方は?」

「ワイか?ワイは水城 闇火(みずき あんか)や。ぅんで、こん部屋の片隅で酔いつぶれてんのが弟の――」

「酔いつぶれてなんかいませんよ」


 黒髪の男が答えていると、部屋の片隅でうつ伏せで横になっていた水色の髪の少年がゆっくり起き上がった。


「それに、僕はまだ未成年です。お酒を飲めば、法律で罰せられますよ。今まで横になってたのは、単に眠かっただけです」


 笑顔なのだが、どうやら闇火の言葉でイラッと来たのだろう…明らかに、顔が引きつっていた。しかし、鈴に気づくと――


「こんばんわ、お嬢さん。僕が弟の飛鳥(あすか)です。以後、お見知りおきを」

「は…はい…」


 彼女の前に跪き、手を優しく握ると、甲に軽くキスをした。 この兄弟――闇火と飛鳥は、とある理由で居候している。その理由は、飛鳥は雷鳴に剣術の弟子として、闇火はただくっついてきただけで何故かは不明である。


「あ!あ、あたし、取ってきます!!」


 鈴は、真っ赤になった顔を隠すように、慌てて台所へと入っていった。


「なぁ…ケイちゃん」


 そんな彼女を見送り、闇火は龍稔に話し掛けた。

 因みに、この家に居る者達は龍稔の事情を良く知っており、たまに『ケイアス』と呼ぶ事もある。まあ、必要な時のみだが…しかし、この男――闇火のみどこでも彼の事を『ケイちゃん』と呼ぶ。それは、無意識なのか…それとも、本気なのか…または、嫌がらせなのか…その真意は未だに判明していない。


「何だよ…?闇火」

「あの娘、誰なん?もしかして、ケイちゃんのコレかぁ?」


 そう言い、彼は右手の小指のみ立てた。


「ち…違う!ア…アイツは、王鈴っていってだな…ある事情でここで暮らす事になったんだよ…!!つか、俺は龍稔…ケイちゃんとか呼ぶんじゃねぇ!!!」

「そのムキになってるとこが怪しいですよ。龍稔」


 龍稔の言葉に、飛鳥が横から釘を刺した。


「ム、ムキになってねぇよ!」

「冗談ですよ。龍稔」


 顔を真っ赤にして更に声をあげる彼に対し、飛鳥は相変わらずニコニコしながら言う。


「飛鳥…お前が言うと、冗談に聞こえ…へ――」

「何か言いました?兄上」

「い…いや…何も…」


 そこへ闇火が言うが、言葉を妨げるように、弟の竹刀が彼の喉元に当たりかけていた。



 ★・★・★



 話は戻り…


「あのね、アンタ逹…アタイに、あの時この娘の名前言った覚えはあるかい?」


 宝蘭は、昨晩の事をぼんやりとだが思い出し、呆れた口調で聞いた。


「そういえば…言ったっけ?俺達」

「確か言ったと思うけどなぁ…ワイは」


 龍稔と闇火が互いに言うと、


「いいえ。言ってませんよ…僕達にしか教えてもらってませんし」


と飛鳥が横から釘を刺した。


「ほら見な…アンタ逹は肝心な時に言わないんだから…少しは飛鳥を見習ったらどうだい?」

「見習えって…義姉さん、薬を飲んだあと寝たじゃん」


 そう、あのあと…



 ★・★・★



「鈴ちゃん、薬を早ぅ」

「あ、はい!」


 闇火の手招きで、鈴は慌てて宝蘭のもとへと駆け寄った。


「で…どうすれば?」

「せやな。コイツは元々酔ったら暴れ出すタイプやからな…まずは、ワイとケィ――やなかった…リュウちゃんが押さえる。んで、飛鳥が口に指を入れ開かせて――」

「あ…兄上、ちょっとそれは強引かと…?」


 兄の説明に、飛鳥が口を挟んだ。


「この際、んなのお構い無しや。お前、コイツにこれ以上暴れられたくないやろ?」

「ええ…まあ…」

「だったら、やるでぇ?」

「はいはい」


 そこまで言われては流石に誰も口に出せず、皆彼の指示に従い、薬を宝蘭の口へと入れた。

 そして、彼女が水を飲み干すと、少しずつ吐息が聞こえてきた。しかも、優しい。


「え?」


 鈴は不思議そうに覗き込んだ。


「どないかしたか?鈴ちゃん」

「ね…寝てる…」


 そこには、気持ち良さそうに寝ている宝蘭の姿があった。


「しゃあない…ワイが寝かしに行くわ…」


 闇火は、そう言い彼女を抱きかかえると、食堂をあとにした。



 ★・★・★



「――という訳や…まあ、知らんと言っても無理ないなぁ」

「確かに無理ないですね」

「そういう事」


 全てを話し終える三人。

 そんな彼らを横目に――


「ま、まあ…良いわ。アンタ逹、ご飯だよ…早く下に降りてきなさいよ?自己紹介はそこで改めてするとしましょ…」


 宝蘭は、深くため息をつきそう言うと、階段をゆっくりと降りていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ