第1章『おかしな家の住民達』1
急に神家へ住むと言い出した鈴。
彼女が足を踏み入れたその家には、ほとんどラリアス・シティへ出ていて週に一度しかいない家主と、やたらと腕には評判の良い医者だがかなりのショタコン(男には必ず『ちゃん』づけしたりとかしてる)と、優男で鬼畜な少年と、何故か闇鍋に熱中する女が同居していた。彼女は、そんな住人達と同居する中、龍稔の正体を暴く事は出来るのだろうか…
次の日の朝…
ここは、神家の屋敷。
「おはよう。皆、起きな!」
桃色の髪をした女が、フライパンとお玉を持って起こし回っていた。
しかし…まだ誰も起きない。
「全く…またか。仕方がないねぇ」
女はそう言うと――
「コラ~ァ!」
と、ある部屋の扉を思いっきり開ける。そして――
「いつまで寝てんだい!?さっさと起き――」
女は、その言葉のあとに「起きな!」と言おうとした。しかし、そこには――
「え…?」
紅い髪の少女が、鏡の前に立ち、パジャマから日中着に着替えようとしていた。
「あ…」
少女は、女に気づくと手を止め慌てて服を着ると、入口の方へと躯を向けた。
「ア…アンタ、誰…?」
「あ…あの…あたしは、その――」
鈴は、昨日の事情を話そうとした。すると、そこへ一人の少年が廊下へ現れる。
「ったく…朝っぱらからうるせぇな…」
龍稔は、欠伸をしながら出てくると、鈴と目が合い、
「あ、おはよう」
「おはよう。よろず屋君」
とお互いに挨拶を交わした。
それを見て彼女は、
「龍稔…アンタ、この娘は一体何なのさ…?」
と聞いた。
「今日からここに一人新しい奴が住むって言っただろ?そいつだよ。昨日話してた奴は」
「はぁ?」
龍稔の言葉に、女は
「自分は全く聞いていない」
と主張した。しかし――
「あれ?聞いてなかったんかぁ?」
今度は反対の方から声がした。振り向いてみれば、階段から黒髪で肌黒の男がこちらへ顔を覗かしていた。
「兄上、無理はおっしゃらない方が…あの人、昨日かなり酔ってたじゃないですか」
それともう一人の声も肌黒の男の横から聞こえてきた。
「あ…あのさぁ、一体どういう意味な訳…?」
女は、何もかも訳が分からず、疑問符を投げ掛けた。
★・★・★
――話を遡る事、六時間程前。
もう既に日付が替わっていた事もあり、龍稔と鈴と大和はそっと屋敷へと足を踏み入れ、彼女の荷物を全て中へ運び終えようとしていた。
「ちょみゃりゃにゃい~♪(訳:止まらない♪)」
すると…何やら食堂より女の歌声が聞こえてくる。しかも、酒を飲んで酔っているのか…呂律が回っていない。
「あの…今の誰の声?」
「ハハハ…あれは絶対に義姉さんだな…」
鈴の問いに、苦笑をしながら龍稔は答えた。
「一応、挨拶した方が良いかなぁ…あたし」
「明日の方が良いと思うぞ?俺は」
「それじゃ駄目よ。せっかくなんだもん。あたし行ってくる」
「あ、ちょっと…!」
龍稔の制止を省みず、鈴は食堂へと向かう。勿論、彼も慌てて後を追った。
「ごみぇんにぇ、しゅにゃおじゃにゃくっちぇ~♪(訳:ごめんね、素直じゃなくって♪)」
彼女が食堂へ入ると、女は更に歌っている。しかも、先程とは全く違う曲だ。
「ほ…宝蘭、そろそろ止めへんかぁ?」
その隣でグッタリとしている黒髪の男が問いかけた。しかし――
「だみぇ!みゃだのみゅ!!(訳:駄目!まだ飲むの!!)」
女――宝蘭はそう言うと、近くにあったビール瓶を手に取り、口へと運ぼうとした。
「はい、ストップ」
龍稔が彼女の側に行き、素早くビール瓶を取り上げる。
「ちょっと!にゃにしゅりゅのさ!?(訳:何するのさ!?)」
「義姉さん、飲み過ぎ…近所迷惑だから、程々にしろよ」
彼は、呆れた口調でそう言い、周りに散らばっているビール瓶を拾い集め始めた。
先程から、龍稔が宝蘭の事を『義姉さん』と呼んでいるのはちゃんと理由があるのだが…今の段階で話す訳にはいかない為、説明は差し控えさせて頂きたい。
「あ、あたしは何をしたら…」
「ああ…アンタは、義姉さんに水を汲んで来てあげて。あと、多分結構飲んでると思うから、台所の入口の棚から赤い瓶を持ってきて」
「赤い瓶?」
「ワイが作った二日酔いの薬や。他のと見分けが突くように赤にしとるんや」
龍稔に鈴が問うと、黒髪の男が答えた。
はい…ちょっと使用した曲を言っときます。
『ゆずれない願い』(魔法騎士レイアース)
『ムーンライト伝説』(美少女戦士セーラームーン)
もしかしたら、他のも使用しちゃうかもしれません。