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序章『始まりと終わり』13

「――え?」


 鈴は、恐る恐る後ろを振り向く。

 地面の石を割るくらい勢い良く降りてきたのだろう…そこには、地面に足がめり込んだ状態で、ゆっくりと立ち上がる大男の姿があった。

 しかも――


「ちょ…ちょっと…」


 その顔は、彼女が知っていた。


「ガイア!何でアンタがここに居るの!?」

「王鈴…貴様をブレス様の所へ連れていく…」


 鈴の問いに、大男――ガイアは静かに答えた。


「だ…誰が、アイツのとこに帰るものですか!あたしは、自分の力で記憶の手がかりを探すわ!!」


 しかし、鈴は断る。

 余程、ブレスに何かされたのか…彼女の瞳からは、恐怖の色が見え隠れしていた。


「これは、命令…命令は、絶対服従…」

「な、何が絶対服従よ!あたしは、服従なんてしないんだから!!」


 鈴が大きい声で叫ぶと――


[へ~ぇ…やっぱり、裏切るんだぁ…]


 大男の口から、全く違う声が聞こえてきた。

 その声は、大人ではなく口調からにして子供であり、どこかお遊びめいたような感じがした。


「え…?」

「な…何だ?」


 鈴と龍稔は、聞き覚えのない声に眉をひそめた。すると――


[『アンタ、誰?』って、今思ったっしょ?]


と、聞き覚えのない声は問いかけた。

 その言葉に、二人は動揺を隠せずにいた。


[それじゃあ、自己紹介しよっか…ぼくの名前はディープ]


 声の主――ディープは、そう言い一瞬止めると、また言葉を続ける。


[この大男の躯をちょっと借りたんだ。さっき…やっぱ、人間って馬鹿だよね?簡単に取り憑かせてくれるだも――!?]


 しかし、それを遮るかのように、何かが大男の顔の前を横切る。

 大男は簡単に右に避けるが、左頬に軽く切り傷が出来、血が顎へと伝う。

 良く見ると、龍稔が横を飛ぶように蹴りを入れていた。


[いきなり蹴らないでよ…痛いじゃん…!]

「今、何って言った?」


 ディープが怒るように言うと、彼は地面に降り立ち、静かに聞く。


[あ、聞こえなかった?んじゃあ…もう一回言おっか。人間って馬鹿って言ったんだよ。君も馬鹿?]


 ディープは笑いながら答えると――


「人間を馬鹿呼ばわりするのは勝手だが…俺を馬鹿にするのは聞き捨てならねぇな」


と、両手を合わせ指を鳴らし始めた。


[あ、気が触ったんだ。だったら、謝るよ…同族として]

(ど…同族?どういう事?)


 ディープがそう言うと、鈴は首を傾げ、二人を交互に見合った。


(どう見ても…種族が違うような…)


 しかし、その言葉の真意は全く分かっていなかった。

 確かに、両者見た目は人間。例え龍稔が神族でも、これでは見分けはつかないだろう…


[とりあえず、今回は挨拶…としておこっかな。面白いのを二つ見つけたし]

「面白いの?どういう事よ」

[アハハハ、まだ分かってなかったんだ…一つ目は、ギルドの裏切り者の君]

「あ、あたし?」


 名指しをされ、鈴は恐る恐る自分に指を差す。


[そうそう。誰とは言わないけど…操られてるのをいち早く気づいてたし、それに力がそろそろ覚醒しそうだし。あと…ぼくと同族の君かな]

(ちょっと…同族、同族って一体…)

「…」


 ディープの言葉に、鈴は疑問符を頭の中で投げかけ、龍稔は黙った。


[どうして、君がここに居るの?ぼくらの一族は、もう滅んであるはずっしょ?]

「はぁ?」


 龍稔は、思いがけない言葉に間の抜けたような声を上げた。


[あ、やっぱしこっちも記憶がないんだ…じゃあ、仕方がないね。今日はこれまでにするよ]


 龍稔の顔を見て、ディープは分かってたかのような口調で言う。


「ちょ、おまっ!一体どういう意味なんだよ!?」

[ルシファにも伝えといてね?ぼくはまだ『アレ』を諦めてないって事を…勿論、君の事もねってね。あと、その紅髪の娘]

「え?あたし!?」

[そうそう、君…力強すぎるから、多分色んなのから狙われてるよ。だから、言っとくね…近々、ぼくが君を殺しに行くっから、それまで死なないでね?んじゃあ、またね]


 そして…龍稔と鈴の言葉を完全に無視し、彼は意識から消え、器代わりとされていたガイアはその場で後ろへ仰け反り倒れた。

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