序章『始まりと終わり』10
「え~ぇぇぇぇぇ!?」
とある部屋で、一人の男が大声で叫んだ。
その男は、金髪に金色の瞳をし、額に青い丸い痣があり…彼の机の上には、淡い紫色がかった水晶玉が一つ置いてあった。
「どうかなさいましたか!?ミカエル様!」
そんな彼の声を聞き、緑の髪の男が、扉を思いっきり開け飛び込んできた。先程、人間界に居たアルベルトである。
どうやら、驚いていた金髪の男は、ミカエル当人のようだ。
「な、何でもないよ…アルベルト」
「あ、あのねぇ…大声をあげてるのに、何でもないってのはないでしょうが…」
アルベルトは、そう言いながらミカエルへ近付き…
「つか、あんな大声を上げりゃあ、駆け付けない方がおかしいだろうが!」
と口調を変え言った。
「んで…誰と話してたんだ?このエセ野郎」
「ハハハ…(こうなるとどうしようもないなぁ…)」
「何か言ったか…おい」
「い、いや…何も…」
アルベルトの変貌に、ミカエルはやや引き気味に答えた。
どうやら、ミカエルでさえも、彼のコレには対応し切れないようだ…
因みに、最初の方からアルベルトの事を二重人格と言っているが…実際そうではない。彼はもともと性格がこうで、人前では優しく敬語で接している優男のイメージを持たせ、影では何かと言って文句や悪口を吐く腹黒い奴なのだ。
あ、これ以上説明すると、作者自身が殴られる可能性が高いので止めにしてぉ――(殴られる
「んで…誰と話していたんですか?ミ・カ・エ・ル・さ・ま」
口調を戻し話すものの…最後の主へ対する言い方は何かしら意味を込めていた。
「だ…だから、誰とも話して――」
[どうかしたのか?聖王]
ミカエルが話すまいとすると、水晶玉から何やら声が聞こえてきた。
「え?」
何処かで聞いた事のある声が聞こえてきた為、アルベルトは目を点にした。
「ミカエル様、今のは…?」
「あ、いや…その…何と言うか――(ど、どうしよう…)」
使用人の問いかけに、ミカエルが戸惑っていると…
[だから、どうかしたのか聞いておるのだ!この馬鹿が!!]
と、彼を怒鳴る声が更に聞こえてきて…
「う、五月蝿いなぁ!静かにしててよ、兄さん!!――って、あ…」
と口を滑らし、慌てて自分の口を両手で塞いだ。
しかし、それは既に遅く…
「ほほ~ぉ…成る程」
アルベルトは、両手を胸の前に合わせて指の節々を鳴らし、不敵な笑みを浮かべる。
それを見て、ミカエルは1歩一歩後退りをしようとする。だが、しかし…ここは彼の書斎。椅子から立ち上がっても、後ろはすぐ壁である為、これ以上は後退りをする事が出来なかった。
「これはどういう事ですか?ミカエル様、ルシファ様」
「あ…いや…その…」
[何と言うかなぁ…その…何だ…?]
「お二方、ハッキリ言ってくださいよ…?」
二人がどういった説明をすればいいか迷っていると、彼は更に追求しようとする。すると…
[あ~ぁぁぁぁぁ!元々、ミカエル…貴様が我輩の前に姿を見せたから!!]
「え~ぇ!何!?それじゃあ、私だけが悪いように聞こえるじゃないかぁ!!兄さん」
[何!?我輩まで悪者扱いにする気か!?]
と兄弟喧嘩が勃発した…
しかも、あちらでは今はミカエルが人には見えない映像だけの存在である為、壁と喧嘩しているとしか見えないようだ。辺りから笑い声が聞こえてきている。ある意味迷惑な話である。
「何をやっているのんだい…!?聖王殿!!」
そんなやり取りをしている中、入り口より一人の老婆が中へ入ってきた。