第二幕「残光」
美術館へ足を運ぶと、噴水の前にあるベンチに神道刀娘先輩が座っていた。待たせてしまったと思い駆け寄った。
「すみません、お待たせしてしまいましたか?」
「ん?あぁ来たか。いや大丈夫。先ほどまで友人と話していたところだ。さて、人払いはすんでいるから、安心して座ってくれ」
そういうと刀娘先輩は自分の座る横をポンポンと手で叩いて呼んでいる。確かに美術館の周りは誰もいない。私は少し気恥ずかしかったが隣に座らせてもらった。
「あ!お礼!遅くなりましたが助けていただきありがとうございました!それに病院代まで…。おかげで速見、親友も元気に生きてます」
「私はただ君達を救出したにすぎない。妖使を倒したのは君自身、君の勇気の力さ」
「勇気、ですか。あ、今日は…」
私が姉さんのことを聞こうとする前にすでに先に読まれていたらしく、刀娘先輩が話した。
「天花先輩のことだね。まずはそこからは話そう。君の姉さん、辻騎天花先輩はこの神道学園を妖使から守る”辻斬り”という仕事をしていたんだ。」
「それで、お姉ちゃんはどこに?」
「それは……わからないんだ。去年ある事件が起きてから行方不明なんだ。他の仲間達と共に。私も、探しているんだ。」
「その、事件って?」
「一年前に、海底に封印されていた妖使”イデア”の復活によって大規模な戦闘が起きたんだ。これによって神道学園の辻斬りやその関係者が324人死亡した。」
「そ、そんなに犠牲者が!?ニュースになんて…」
「政府も隠してくれているから、もちろんニュースになんてならないさ。そして、その戦いで天花先輩達は行方不明になった。でもきっと生きているんだ。イデアの最後の抵抗で次元の狭間と呼ばれる場所が開いてしまった。きっとそこへ飛ばされたんだ。見たのは私だけだが、金色の海が見えていた。」
「その金色の海への行き方は?」
「わからない。それも探している。だから六花君、辻斬りをして妖使を倒していれば天花先輩への道が繋がるかもしれないし、神道学園の人々を守ることにもなる。」
「守ることができる…。私があの化け物を倒せるんですね?」
「あぁ、倒せる力”羅刹”を持っている。羅刹は妖使に唯一対抗できる人間の力だ。君の羅刹がどんなものかまだ分からないが、今夜2時、またここに集まってくれ。仲間を紹介したいからね。」
「仲間、ですか」
「あぁ、神道学園高等学区を守る仲間さ。もう、5人しか残っていないけどね」
「たった5人で!?」
「最強の仲間達さ、それに裏方で活躍してくれる仲間達も複数いる。その人達も紹介する」
そして部屋へ戻ると私は色々なことが起きたせいで疲れたのかベッドに倒れこむとそのまま眠りについてしまった。
夢の中で何故か私は目が覚めた。目が覚めたという表現が合っているのかわからないけれど、意識がある。でも、目が開かない。そしてなにかを枕にしている感覚がある。
『ようやっと、会えたでありんすな』
「誰ですか?」
『誰……ふふ、そうでありんすな。わっちは』
「ひ…ぶぇっくし!?あれ…寝ちゃってたか。」
何か夢を見た気がしたが、思い出せない。
「あれ?なんで涙なんて…」
悲しくないはずなのに涙があふれていた。それどころか、私の心の中には何故か嬉しさが込み上げている。
「わけわかんない…。」
困惑しつつ、時計を見るとすでに1時を超えていたので準備をして待ち合わせに向かうことにした。