原生生物との戦い1 VSゴブリン 逃走
黎明望は、全力で移動していた。なぜ『走る』ではなく『移動する』なのか、それは――
(下半身欠損の人間相手にハードモードすぎないかこの世界ぃぃ!!!――いや、当たり前か。当たり前だな。うん。そもそも人間は二足歩行する動物で、両手を使って走るわけではない。召喚した奴の顔、絶対一発ぶん殴ろう。なんで肉体の保護ができてないのに未開の地に放り出すのかなー。チートを貰って俺TUEEEとかは期待してなかったけどさー、王城に召喚されて王と謁見とかあるじゃん。どうでもいいけど腹減ったなー)
なんでここまで思考が脱線して迷走して暴走しているのかって?もちろん
(現実逃避に決まってんだろおおぉぉおおぉ!!)
なおこの時、王城の勇者がくしゃみをしたことは言うまでもない。余談だが、望もしっかりチート級ではないにしろ能力を貰っているのである。
後方にはゴブリンが5,6体、両側にはうっそうと茂った森。森に入れば間違いなくやられる。
(いや、もっとよく見るんだ。何か現状を打破するきっかけがあるはずだ。エート後方のゴブリンは・・・木の棍棒らしきものを待っているのが三匹、弓をもっているのが一匹、体格のいいのが一匹・・ん?弓!?)
弓持ちのゴブリン【ゴブリンアーチャー】と命名(仮)が矢を放った。望の背筋に悪寒が走った。矢は、望の顔の横数mmを風を切って通過し、その先の木に当たった。
(やばい死ぬ!)「うおおおおおおお!!!!」
少しだけ、ゴブリン達を引き離した。
(今だ!)左へと進路を変え、中規模の洞窟に文字通り転がり込んだ。岩陰に身を隠し、ゴブリンが立ち去るのを待つ。
「ギャギャ!ゲギャ!?」「ギョゴギャ、グギャ?」
じっと耳を澄ます。
「ゲギャ?ゲギャ?(ドコダ?ドコダ?)」「ギャギャ!ギャギャ!(サガセ!サガセ!)」
何となく、言っていることが分かった。(多分、[言語理解能力]のおかげだな。)
しかし、五分ほど待っても、立ち去る気配はない。見つかるのも、時間の問題だ。望は、手元にあった石を投げて注意をそらさせることにした。
コツン
「ガギャ!ガギャ!(アッチ!アッチ!)」
ゴブリン達は森の中へ去っていった。
「ふう~」
緊張が解けたため、望に強烈な睡魔が襲ってくる。疲れ切った体を癒すため、そのまま眠りに落ちた。