プロローグ2 バグった召喚
「はあぁあああぁ~~」
この世の幸せの半分くらいが逃げていきそうな盛大な溜息をついた青年、黎明望。16歳、ぼっちである。
なぜか昨日から、身の回りの機器が次々に故障するという災難に見舞われている。
『まったくツイてないな・・・切符は使えなくなるわ、時計は機能しないわ、果ては電車のドアが閉まらなくなる。ついでに自動ドアが5回に1回くらい反応しない・・のはいつものことか。』
彼は、勇者が召喚される予定だった場所を47時間前に通過していた。その結果、召喚のエネルギーが強力な磁気フレアを発生させ、電子機器を破壊している。幸い、エネルギー供給が不安定なので改札・家電・列車の駆動系には大きな影響はなかった。
そして、召喚の時が来た。
突如、足元が光りだした。体が引きずり込まれる。
『チッ、今度はなんだ!?最近web小説でよく見る異世界召喚って奴か?いや、お約束の魔方陣らしきものは見えないな』この間、0.1秒である。
結果、弾き出した行動はとっさに目をつぶることだった。
「くっ―――」
そして、望の意識は暗転・・・しない。
「あぐぁ!>!@q3]q1\!!!!!」
突如として体に襲う痛みに、大急ぎで目を見開いた。いや、見開こうとした。
『右目と左目の感覚がおかしい、光か空間がへそ曲げたのか!!?』
痛みは治まらない。
side:Nozomi
[/#%%&z+88y=~~rang;?\'!■■■―言語理解能力の付与を実行 成功]
[システム言語理解能力の剥脱 失敗]
[再試行:システム言語理解能力の剥脱 失敗]
[強制スキップ]
なんだこれ。何か見えてきた。最初は訳がわからなかったけど、途中からわかるようになったのは“言語理解能力”のおかげだろう。
[転移時の肉体の保護 一部失敗]
[エラー:続行不可能]
さっきから体が痛いのは、保護がうまくいってないからか。なるほど。いや、なるほどじゃねーよ!!仕事しろよ召喚者ああぁ!!
[深刻なバグが発生しました:深刻なバグが発生しました:深刻なバグが発生しました:深刻なバグが発生しました:深刻なバグが発生しました]
召喚者ああああ!?このまま召喚されるのはヤヴァイ。とっさに、その場でありったけの精神力を使って、足場をイメージした。途端に流れていた視界が止まったが次の瞬間、望はまた眼を閉じた。まさにカオスをそのまま描いたような光景が広がっていた。
せめて、自分がどうなっているかぐらいは何とかわからないのか!?
瞬きをしようとして閉じた瞼は、固まったように動かなくなってしまった。