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おくすり

「ちょっとダーリンを借りるわ。クロちゃん、準備は頼んでいいかしら?」


「ん? うん。任せてー」


「お願いね。ダーリン、行くわよ!!」


「え? ちょっ!!」


「いいからついてきなさいよね」


 なぜか不機嫌なアリスに連れられて、彼女の寝室へと連れ込まれた。

 ベッドに腰掛けたアリスが妖艶に微笑んでみせる。


「ダーリン、アリスの膝に寝なさいよね」


「…………は?」


 ペロリと唇をなめたアリスが、真っ白な太ももを指さした。

 どうやらそこに頭を乗せろと言っているようだ。


「は? じゃないわよ。ここで寝なさいって言ってるの。

 頭をなでるって約束だったじゃない」


(……? ……えっと?? おれ、そんなこと言ってたか??)


 最近いろいろと立て込みすぎて、記憶が定かではない。


 だが、アリスがそう言うのなら、言ったのだろう。たぶん。


(けど、なぜこのタイミングで??)


「早くしなさいよね。じゃないと石をぶつけるんだから」


「……あー、はいはい、了解」


 意味を考えてる暇なんてないらしい。

 壊れそうなほど細い彼女の太ももに、恐る恐る頭を乗せた。


 スカート越しに柔らかい感触を右の頬に感じる。

 なんだか、とても幸せな香りがした。


「なによ、まったく……。っつ!! っちょ、こっち向かないでよね」


 小声でつぶやくアリスの方に顔を向ければ、アリスの顔が至近距離にあった。

 膝枕をしてもらっているのだから当然の結果ではあるが、どうやらアリスはお気に召さなかったらしい。


 顔をプイっと背け、耳まで真っ赤にして、抗議の言葉を口にする。


「こ、こっち見ないでよね。膝枕のマナーも知らないの!?」


 膝枕にマナーなんてあるのか?

 いや、絶対ないだろ? 今勝手に作っただろ?


「……は、はやく、退きなさいよね。膝枕は終了よ」


「……は?」


「は? じゃないの、おしまい、って言ってるじゃない」


 おぉう。どうやら、幸せの時間は打ち切りのようだ。


 そっち向いたらダメなんて聞いてないぞ。


 ……もう少し、サービスしてくれてもいいじゃないですか。

 追加料金払えば、延長できませんかねぇ?


「……ちょっとこっちに来なさいよね」


 そういって、アリスが自分の隣を指さした。


「隣に座りなさいよ」


「……あー、了解」


 アリスの不可解な行動は続くらしい。

 指示された通りにアリスの隣へと腰をおろせば、突然アリスが抱きついてきた。


 いくら軽いとは言っても、突然のタックルを受け止めれるはずもなく、2人でベッドに倒れ込む。

 そして気がつけば、先ほどよりも近い場所に、真っ赤に染まったアリスの顔があった。


(これ、どう考えても押し倒されたってやつじゃないか??)


 アリスの髪が顔にかかり、くすぐったさと甘い香りを感じる。

 彼女の軽さが、なんとも不安に感じられた。


 体に触れる部分はすべて軟らかい。


(胸はないけど、やっぱ、女の子なんだな)


「……ちょっとダーリン。すっごい、失礼なこと考えてるでしょ!?」


「い、いえ。滅相もございません」


「……ふん」 


 おぉう。なんと鋭いことだろう。

 たがしかし、ちがうのだ。これは失礼な事などでは決してない。


 密着しているのに触れることがない胸とか、最高の御褒美だとは思わないか!?


「ご馳走様です」


「なにがよ!!

 ……は、恥かしいから、目を閉じなさい」


「は?」


「いいから、目を閉じるのよ!」


 この体勢で目を閉じろとか、次は何をしてくれるのだろうか?


 キスか? キスなのか?


 そんな邪な思いも込めて俺が目を閉じると、アリスは気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりとしたスピードで言葉を紡ぎだした。


「大丈夫。ここにはアリスとダーリンしかいないから、無理に強がる必要はないわ」


「え?」


 あまりにも唐突なアリスの言葉の意味が理解出来ずに、思わず目を開き、アリスの方を見る。

 すると、さっきよりも顔を赤くしたアリスに頬をつねられてしまった。


「目を閉じてなさいよ、まったく……」


 そう言うアリスの声も、どこか張りがない。

 普段とは違う、愁いを帯びた声色に聞こえた。


「初めて敵を倒した人は、心がおかしくなるの。そして、その特効薬は異性と、あ、愛し合うことって聞いたわ。

 今回は特別に、アリスが相手になってあげるから、感謝しなさいよね」


 いつもより強い口調で言い放ったアリスの言葉に、思わず息が止まる。


「愛し合う……、相手って……」


 まさか、そこまでの話しが出てくるとは思わず戸惑う俺を尻目に、アリスの細い指が俺の上着の中に入ってきた。

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