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ダンジョンを作ろう6

 国民が増えてから5日が過ぎ、ダンジョンを造り始めてからもうすぐ1ヶ月。

 5人の男たちから入ってくる分も合せて、それなりポイントが貯まった。


 ただの地下ハウスでしないこの場所をダンジョンらしくしようと思う。


 遅すぎる気もするが、まぁ、仕方がない。

 これからが本番ってことで良いだろう。


「魔力堰を洞窟の出入り口とそれぞれの居住区の入口に設置してくれるか?」


「はーい。お願いね、コアちゃん」


 ダンジョン最奥にある大きな玉に、クロエが話しかける。


 これで、自然発生した魔物が俺たちの部屋に襲撃して来なくなったはずだ。


「うっし。魔力を流出してくれ」


「はぁーい」


 右手を挙げて元気に応えたクロエが、コテンと首をかしげた。


 早くも不具合だろうか?


「んぅ? んっとね。魔力の放出は、1回出しちゃうと止められないって。

 流出量よりも残存ポイントが少ないと、足りない量に応じてダンジョンの一部が崩壊しちゃうから気をつけてね、って言ってるよ?」


「……ってことはなにか? もしかして、流出ポイントって毎日消費される感じか?」


「うん、そうなんだって」


「了解。100ポイントだけ流出させてくれ」


「あーい。……流したよー」


 これで一応はダンジョンらしくなったらしい。


「よし、それじゃぁ、ダンジョンの入口に飛ぶぞ」


「はーい」


 いつものメンバー向かってそう言葉をかけた俺は、ポケットから魔玉を取り出して胸に当てる。


「入り口へ」

 

 小さくつぶやけば、一瞬にしてダンジョンの入り口に転移していた。


 周りを見渡せば光りの玉がいくつか浮かんでおり、それらが次第に人の形に近づいて行く。

 その光の中から、クロエやアリスが姿を見せた。


「魔法ってすげーな」


 思わず漏らした俺の言葉に、ノアとミリアが首を縦に振った。


 今使用した魔玉は、クロエの魔法をサラが魔玉に閉じ込めた物だ。


 1日に4回しか使えなかったり、入口と自分の部屋にしか飛べないといった制限はあるものの、万が一、ダンジョン内に倒せないようなモンスターが出現しても、自室へ帰れるようになった。


 勿論、新人5人にも1個ずつ渡してある。


「よし。全員到着したな。

 それではこれより、ダンジョン攻略を始めるぞ」


 俺の掛け声にみんなが、おーーー、と言って答えてくれる中で、ノアが不思議そうに近付いてくる。


「あのー、兄様。ちょっといいですか?」


「ん? どうした?」


「なんでわざわざ洞窟に移動したの? 魔力を流した場所だったら、私たちの部屋の方が近いよね?」


 洞窟から下りて右に行けば男たちの部屋があり、左に行けば魔力を流した中部屋とその奥に俺たちの部屋がある。

 

 ゆえにノアの言葉ももっともだった。


 だが、俺はあえてノーと言いたい。


「無論、様式美だ。ダンジョンへの突入といえば、1階の階段からに決まっているだろ!?」


「……あ、そうですか。わかりました。ありがとうございます」


 予想外に呆れられてしまった。


 だが、俺は間違っていないと思う。

 最深部からダンジョンに入るとか、どう考えてもおかしいだろう。


 そんなことを思いながら歩みを進めていると、不意に全身を寒気が走った。


「なっ!?」


 初めて狼に襲われた時よりも嫌な気配。


「お兄ちゃん。なんか、嫌な気配がする」


 クロエたちも感じたのか、その足を止めて表情をこわばらせる。


 そんな張り詰めた雰囲気の中で、サラが周囲を見渡した。


「そんなに身構えなくても大丈夫じゃないかな。研究のために1度、ダンジョン討伐に参加したことがあるんだが、そのときも同じ感覚だったからね」


 そんな言葉と共に、普段と変わらない笑みを見せてくれた。


 殺意を全身に向けられている感覚なのだが、ダンジョンとはそんな場所らしい。


(ってか、研究のためにダンジョンに同行って、王女様が何やってんだよ。良く許可が出たな)


 そう思ったが、サラだから仕方がない。


 とりあえずの安全確認のために、カラスを奥へと飛ばす。


「なんだ、これ?」


 その先にいたのは、空飛ぶ緑色の大きな塊。


 大きさはクロエの顔と同じくらい。


 大きなマリモにしか見えない塊が宙に漂っていた。


「入るぞ?」


 敵意は感じないし、強そうにも見えない。


 一応の断りを入れて、魔力を流した部屋の中へと入った。


 恐る恐るマリモに近付いて見ても、それらはただ宙に漂っているだけ。意思らしき物はまるで感じなかった。


「どうする? 倒しちゃう??」


「そうだな」


 試しにナイフで突っついてみれば、マリモが地面に落ちた。


 程なくして表面を覆っていた藻のような物だけがその場に残る。


「弱っ!!」


 戦闘力は皆無のようだ。


「……まぁ、あれだ。流し始めてすぐだからな。そのうち強いモンスターも出てくるだろ」


 慰めるように自分に言い聞かせてみる。 


 結局、その日生み出された魔物は、大きなまりもが4匹だけ。


 守りとしては心もとないどころか皆無にも等しいのだが、まぁ、初日だし、こんなもんだろ。

 そういうことにしておこう。


 ……ってか、クロエが目をランランとさせているんだが、この藻みたいなの、食え

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