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契約魔法

 事前の打ち合わせになかった話も飛び出したが、おおむね順調なので聞かなかったことにした。


 なぜ2人を妻にすることになったのか。

 なぜ俺が勇者と呼ばれているのか。


 サラに聞いてみたくはあるが、アリスがいる手前聞くのは無理だろう。


 そんなことを考えていると、不意にアリスが近寄ってきた。 


「契約魔法をしてあげるわ。目を閉じない」


「契約魔法?」


 チラリとサラの方へ視線を向ければ、サラがしっかりとうなずいてくれた。


 アリスの指示に従えということなのだろう。


 ゆっくりと目を閉じれば、アリスの息づかいが間近に聞こえた。


(え? なんか近くないか!?)


 体が触れそうなほど近くにアリスの気配を感じる。


(何するつもりだ??)


 見えないことに対する不安、未知に対する不安。

 その2つが心臓を速める。


 そして不意に、足に激痛が走った。


「ぃって!」


 思わず目を開けば、アリスに足を踏まれていた。


「おま、なにすんだよ。痛いだろうが!!」


 思わず抗議の声を上げれば、朱色に染まったアリスの頬が見えた。


 その頬を膨らませて、アリスが声高に叫ぶ。


「ふん、あなたが無駄に身長を伸ばしたのが悪いのよ。怒ってないでさっさとしゃがみなさいよね!」


「無駄に伸ばしたってなんだよ。身長なんて、伸ばす伸ばさないじゃないだろ。ったく。

 ほら、しゃがんだぞ、これでまんそ――」


 しゃがんだ途端に、柔らかな唇に言葉を遮られた。


 唇に触れるだけの優しいキス。


 顔を真っ赤に染めたアリスが、俺の側から離れていく。


「ちゃんと愛してくれなきゃ、ダーリンのこと土の中に閉じ込めちゃうんだからね。

 荷物とってくるから、少しだけ待ってなさいよ」


 そんな言葉を残して、アリスは逃げる様に部屋を飛び出していった。


 呆然と立ち尽くす俺の手を誰かが引く。


「余韻を楽しんでいるところで申し訳ないが、私も契約させてもらうよ。目を閉じてくれると嬉しく思うよ」


「おにいちゃん。私もお兄ちゃんと契約するね。

 えっと、えっと、うん。妹の契約をするからね」


 この日俺は、3人の美女と口づけを交わすことになった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 異世界のキスから2時間ほど、アリスが自室から荷物を抱えて戻ってきたので俺特製の服を手渡す。


「わっ、きれい……」


 アリスのために妄想した服を抱えたアリスが、そう小さくこぼした。


 どうやらお気に召したらしい。


 ホッと胸をなで下ろしていると、不意にアリスの表情が曇った。


「ちょっと待ちなさいよ。なんでアリスの分が用意されてるの!? おかしいわよね!?」


 当然の疑問である。そして、もちろん、事前に返答は考えてあった。


「それは、あれだ。勇者の能力だ」


「……ふーん、…………そうなの」


「着るのが嫌なら、着なくてもいいぞ」


「誰も着ないとは言ってないじゃない。特別に貰ってあげるわよ」


 名付けて、勢いで通してしまおう作戦である。


「あ、それと、俺達は夜逃げするんだから、そんな大量の荷物はもっていけないぞ。

 せいぜいがポケットに入るくらいまでだ」


「なによそれ。もー、早く言いなさいよ。もっかい部屋いってくる。そのついでに着替えてあげるわ」


 嫌な顔をしながらも、決して服を手放そうとはしなかった。 



 程なくして戻ってきたアリスは、ピンク色のセーラー服に身を包んでいた。


 むろん、俺の妄想通りである。


「着てあげたわよ。似合うでしょ」


 堂々と胸を張るアリスを素直に可愛いと思った。


 こちらもタイトルを付けるならば、海外からの転校生、といった感じだろうか。

 

 可愛らしいアリスによく似合っている。


「あぁ、可愛いよ。さすがアリスだって感じだな」


「……ふん、当たり前じゃない。着ているのがアリスなんだもの、可愛いのは知ってるわよ」


 言葉とは裏腹に、首筋まで真っ赤に染まっている。

 ゆっくりと近付いて、髪をなでておいた。


 楽しかったお城での生活もあと少し。

 兄たちが寝静まるのを待って、脱出しようとおもう。



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