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俺たち異世界大発見伝  作者: カネシロ 
第1章   『冒険者』編
6/33

第6話   『1日の終わり、そして始まり』

 宿に着き盛大すぎるほど盛大な歓迎を受けた俺たちは、荷物を部屋に下ろし、集合時間を決め、それまで自由行動にした。



 今回泊まる宿は「オリバー」、産業ギルドに行く前に訪れた街の中心にある大広場から少し遠く、ミテル湖畔にある。


 ミテル湖は離れにあるおかげか、周りには木々が立ち並び美しい花が咲く、彩がとても豊かで落ち着く雰囲気だ。

 市場の喧騒からも外れ、どこか別荘のような気持ちになる。


 

 宿自体も、やはり現代的ではなく石造りで屋根は木の上に藁が敷かれていたが、非常に大きく、外も中も綺麗に掃除されていて、従業員の人も優しく丁寧な人ばかりだ。

 


 俺たちは、2つの部屋を使えるようで、男女分かれて泊まる事となったわけだが、この部屋が何ともいい広さ。

 部屋には羊毛のカーペットが敷かれ、石畳である事を感じさせない。

 トイレも洗浄の魔法がかけられていて、水洗トイレと変わりはない。

 水道は魔力注入で水を出すようで、魔力注入のやり方を知らないのに力雅が力んで握ったら、物凄い勢いで水が出てきた。

 


 つまり、もう俺たちには魔力が備わっているわけだ。

 野郎3人で交代しながら水を出して、魔法を使えることに興奮して騒いだ。

 

 ちなみに、明かりについても同じらしく、「輝光石」という魔法鉱物の入ったランプに魔力を注入して明かりを出す。

 力雅のバカのせいで明るすぎてまぶしいことになったが、使う魔力はごくわずかなのか、魔力を注入しても疲れることはなかった。



 集合時間まで、俺は外の湖の周りを歩くことに決めた。

 力雅は街まですっ飛んで行って、幹夫はどうやら晴花の発見癖を止めについていったようだ。

 知らないところで妙な発見でもされたら困るし、助かった。



 外は星の明かりや、置いてある照明で暗くはなかった。

 美しい夜空だ。

 空は俺たちの世界と変わらないんだな。

 輝光石のランタンを手に湖を歩いていると、岩に腰かけて湖を見ている光を見つけた。



「よっ、光。お前もここにいたのか。」

「ノブじゃん、気が合うね。」

「まぁな。少し落ち着きたくてな。こう、1日で色んなことがありすぎると、疲れるわ。」

「ね。あたしもそう。いきなり、魔法とかねわけわかんない。人もなんかおかしな人いっぱいいるしさ。」

「ホントそうだよなぁ。」



 うなずきながら俺は光の隣に腰かけ、湖を見た。

 湖を囲むように置かれた明かりが、幻想的な光を放ち、湖に反射させる。



 どこかの映画で見た景色を思い出した。

 あの映画の中の世界も魔法を使える世界だった。

 俺たちは映画の中にいるのかもしれない。


 ふと光の方を向いた。

 光の横顔は、持ってきたランタンと湖に反射された輝きで、綺麗にライトアップされていた。

 湖を見つめるその表情は、何か困った顔をしながら、それでも口元は緩やかに笑っていた。

 こうしてじっと見てみると、小さな口元にスッとした鼻梁、小ぶりな耳に大きな目、サラサラと揺れる茶色がかった髪、丸く小さな顔、光の顔は整っているんだなぁ、としみじみ感じる。

 

 すると俺の視線に気づいたのか、光もこちらを向き照れくさそうに微笑んできた。

 俺も微笑み返したが、なんだか照れくさい。

 そうして視線を湖に戻し、そのあとは2人でじっと湖を眺めていた。

 


 集合時間も近付いた頃、光に声をかけ宿に戻ることにした。



 宿に戻り集合時間になってからみんなでこれからの事を話し合ったが、ひとまず1週間、この世界に滞在することにした。


 親に言った1週間キャンプの話の辻褄を合わせないといけないからだ。

 その後の事は一旦帰ってから考える。

 とりあえず今はこの世界を楽しもう!ということで解散し、その後ぐっすりと寝た。



 翌朝、朝ご飯をしっかり食べた俺たちは支度をし、玄関で待つミシャさんの元に集まった。


 

 宿を出る前にオーナーから四角い金属性の小さなプレートを2枚もらった。

 このプレートがこの宿の使用証であり、プレートを部屋のドアに近づけて魔力をこめればドアの鍵の開閉が出来る。近代的!


 使用証の期限はないので自由に使ってくれ、とも言われた。

 多分、冒険者になればオリジナより遠い街に行くこともあるだろうし、ずっと使うことはないだろうが、感謝してもらうことにした。


 これが移住推奨用のサービスだというのだから、ぶっとんでいる。

 もらったプレートの内1枚は俺が持ち、もう1枚は光に預けておいた。



「おはようございます。皆様、戦闘職をご選択されるということで、本日は、冒険者支援協会にお連れ致します。」

「あれ、冒険者支援協会に行くんですか?」



 幹夫が訪ねるとミシャさんは笑って答えた。



「はい、その通りでございますっ!冒険者支援協会には、その周りに戦闘職習得用の場所があります。また、特に意図した訳ではないのですが、周りに屋台やお店などが密集し、装備の調整用のお店も発展しているため、一般の方からは何かと便利な区画『冒険者区』と呼ばれています。」

「へぇ~、そんなに発展してるってことは、冒険者って結構いる感じなんですか?」

「この街、オリジナは昨日お話致しましたように、冒険者の始まりの街です。ですので、この街の冒険者は『サーディア』と同じくらいいますよ。もちろん、ヒカリさんと同じ女性冒険者も多くいます。流石にレベルや経験値で言うと『サーディア』には敵わないですが・・・。」



 とミシャさんは苦々しく笑い、歩き出した。

 俺たちもミシャさんの後を追いながら、話を続けた。



「サーディアって、それも街、ですか?」

「はい、『サーディア』は冒険者の第三の街、と呼ばれている街です。どちらかと言えば見た目は要塞ですね。この街は魔王領との境にあるため、周辺の難易度はかなり上がっています。度々魔王軍の襲撃も受けますし、もし行かれるのでしたら、ある程度鍛え上げてからご検討された方がいいでしょう。」

「魔王軍・・・?なんかスゲー強そうッすね。」

「力くんっ、王さまだからきっとすんごく強いんだよっ!ねっ、ミシャさん!?」

「は、はい、王様は別にいますが、魔王軍はとても強力です。年々脅威を増しているため、すぐにでも対策が必要なのです。実を言うと、皆様には冒険者になって頂きたいと、私は個人的に思ってしまっているのです。それが、この魔王軍の脅威にあります。」

「?冒険者以外にもやれる仕事はあるんですか?」



 突然話題に出てきた「魔王」の存在を不審がりながらも俺はそう尋ねた。

 


 なんでも、戦闘職を選んでも、冒険者以外にも他に仕事はあるらしい。

 例えば、魔王軍討伐の軍隊、「王都」の「征討軍」に所属したり、「警備隊」として治安維持を行ったりと色々やれることはあるという。

 この「王都」に、人間側の「王族」が住んでいるらしい。



 冒険者支援協会に着くまでに、仕事の他にも、この世界の勢力関係を教えて貰った。



 大きく分けて、勢力は4つあるらしい。


 

 まず世界を二分しているのが、「魔王族」と「王族」。

 このうち、「魔王族」には多くの非ヒト種が所属し、「王族」(構成はヒト種だが「魔王族」と区別するため、こう呼ばれている)にはヒト種のほとんどと、亜人種が多く所属している。


 また、「王族」つまりヒト側は分かれており、「王族」「冒険者支援協会」の2つである。


 「王族」は基本的に亜人種を深く受け入れることを好まないため、ほとんどがヒト種で構成されている。

 逆に「協会」は亜人種だろうとヒト種だろうと、種族は関係なく受け入れている。

 そのため、支配体制は異なるらしく、「協会」管轄の街と、「王族」管轄の街がある。


 オリジナやサーディアはもちろん「協会」管轄の街だ。


 しかし、共通の敵、「魔王族」を持つので、経済などは共有され、共存状態にある。


 そして、一般人からすればそんなことは忘れるほど普通に行き来し、仕事もあ

る。

 つまりヒト側は対立してるのではなく、ただ地域分けしてるくらいのイメージでいいのだろう。



 最後の勢力が「巨人族」というものだそうだ。


 何でも太古から生きながらえる種族で、魔王領から南部の地に住み、「魔王族」「王族」のどちらにも危害を加えず静かに座している。

 伝説では、神種との戦いに負け、その地に幽閉されたらしい。


 そのため、関わりが少なく実態も分からないが、精鋭である征討軍や冒険者達が派遣されて以来2度と帰ってこないことから、手出し無用としている。



 おおまかな対立構図は

 「巨人族」   「魔王族」VS「王族」&「協会」

 ということだ。


 そして、俺たちは種族としてはヒト種になるため、「王族」領域で働くことも出来る。


 だが、「王族」の「征討軍」は魔王討伐を掲げながらも国境維持に精一杯で、「魔王軍」と戦い、危険な野生モンスターを減らしているのは主に冒険者だそうだ。

 そのため、年々冒険者の数は減っていて、異世界から移住した冒険者たちが増えても数が足りない現状に陥っている。

 なので、是非冒険者になって欲しい、とミシャさんは言う。



 話を聞く限り、やはり危険なのだろう。

 なんなら、あの宿使い放題サービスも当然くらいなのかもしれない。

 俺たちは元から何も考えずに冒険者をやろうとしていたが、もう少し・・・


(・・・絶対にやってやるしかないか・・・!)



 ・・・そう絶対にやるしかない。


 隣に響くささやきを他所に俺はそう決意した。



「て、おい」

「イテっ、な、なにすんのよ!」



 俺の思考に割り込んで、洗脳してきた光の頭にチョップを食らわす。

 ったくコイツ・・・。



「だってノブはいつまでもウジウジ考えちゃうでしょ!こういう時は私みたいに、サポートしてあげられる人が必要でしょ!いてて・・・。」



 ・・・確かにそうだな。

 ウジウジ悩んでても結局やることになるだろう。

 俺にはこいつらを止められる気がしないし。


 その後、チョップに対する抗議をしてくる光を尻目に、俺たちは巨大な建物の前に着いた。



 ここが、冒険者支援協会だ。

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