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俺たち異世界大発見伝  作者: カネシロ 
第1章   『冒険者』編
22/33

第22話  『海魔の渦』

 街の雰囲気はまさしく理路整然と言ったところだろうか。


 ネクスタはオリジナより綺麗だな、と思っていたら、マリンはもっと綺麗だった。

 区画は綺麗に整備されていて、冒険者の街のようなわちゃわちゃとしたお祭りのような騒がしさではなく、大人しい賑やかさと表現するのが正しいのだろう。

 そして、時々海から吹く潮風が、街に掲げられた王族の旗をなびかせて、ヒトの波の合間を縫うように走り抜ける。


 この街は王族支配の街なので、やはりヒトしかいない。

 ネクスタやオリジナで亜人種に見慣れていた俺たちには逆に新鮮に感じる景色だ。



 そんなこの街での今回の依頼主は漁業組合の組合主、アルドースさんだ。

 なんでもネクスタの魚市に揚げたての魚を運びに行く道中でモンスターに襲われていたのを、別の依頼でモンスター討伐を行っていた俺たちが偶然出くわして助けたら、とても気に入ってくれたらしい。

 フレイムズ宛ての指定依頼が城に発注された。



 この世界で冒険者という職業で稼いでいて思ったことが、この仕事は割りと人との縁が大切なのだということだ。

 こういう指定依頼は受けて無事に終わらせると、その成功が人づてなりなんなり伝わって、結構依頼が舞い込んだりする。

 特にフレイムズは依頼を断ることがなかったのも、その知名度をあげる一助になっているのか、指定依頼もよく受ける。

 しかも指定依頼は報酬が良かったり、その店のサービスを受けやすくなったり、損をすることがない。



 俺たちは漁業組合に到着するなり大歓迎を受け、依頼達成後はまた別の依頼をしたい、というなんともフライング気味のお願いをされたりと、てんやわんやだ。

 そんな中、漁港へと続く街道を歩きながら、海魔の場所まで案内してくれる舎弟の船員を連れたアルドースさんは今の漁業の悲惨な状況を嘆くように説明をしてくれた。



「あの、なんだっけかクレーカン?コロッケ?あれがなぁー・・・。」

「親方、クラーケンです。あの糞イカ野郎。」

「そうだ、クラーケンだ。あいつを魔王が召喚した時に、ちっこい化け物どもが大量に現れたんだよぅ。あいつら、俺たちの獲物を食うだけじゃなくて、デカいやつなんか船員を襲うんだよぅ。なのに、軍に頼んでも『任務対象外だ。それに、今は魔王軍の侵攻に対抗するのに全力を挙げている。』だってよぅ。こっちだって一大事なんだぞ馬鹿野郎!」

「そうっすよ親方ぁ!あいつら俺たちの税で食ってんのに、俺たちのために働かねぇ!」

「そうだ、軍なんて頼りにならん!親方が作った漁場もあいつらの軍港のせいで荒れちまってよぉ!くそお!」

「は、はぁ・・・。」



 涙をにじませながら怒る海の男たちとは対照的に俺たちは複雑な気分にさせられていた。

 

 というのも、実際に魔王軍の脅威が海にも広がっていて、そこを必死に食い止めている征討軍の話はネクスタでよく聞くからだ。

 正直なところ、ネクスタにいる冒険者よりも死に近い位置で戦っているのは、海上要塞やこの軍港に出入りする征討軍の兵士なので、働いていない、という感じが出ないのだ。

 

 確かに軍港で眠たそうにしている兵士を見ていると親方たちの言うことも分からなくもない気がするが、彼とていつ最前線に放り込まれることか。



 そんな微妙な心境の俺たちは、船着場に到着するまで親方たちの説明のような怒りのようなものを聞き続けた。



 話の中で分かったのが、海魔の見た目はタコと類似していて、紫の外皮に内側の口の部分は蛍光色の緑色と、なかなかにサイケデリックな色彩をしているらしい。

 ただ、その海魔の持つ触手1本1本の根元には目玉が付いていて、その触手も人の肌に吸い付けば皮膚ごと持っていく恐ろしいモンスターのようだ。

 支援協会の認定レベルは1体あたりレベル1であったが、こいつが何十体もいるとなるとかなりきついことは確実だろうし、親方の話だと人を食べるようなサイズに育ったやつもいるというのだから、警戒は怠れない。

 幸い、炎が苦手らしく、漁師たちが松明を振りかざすと船から逃げていくというような状態なので、ここは1つ、フレイムズという名前通りのお得意の火属性攻撃を食らわせてやることにした。



 船着場に着いたら、親方にお願いして船を3隻用意してもらうことにした。

 1隻は海魔がよく食べる魚、マンゴフィッシュと目玉魚の盛り合わせを載せたおびき寄せ用の船、そして残る2隻は俺たちが乗る船と、案内する漁師が乗る船だ。


 というのも漁師は3人付いてきてくれるらしいのだが、同じ1つの船に乗った時、乗った船が沈められては逃げる手段もない。


 そこで、予備の1隻という意味合いを兼ねて3隻用意した。

 ただ、この船を操るのにはもちろん職業「漁業師『フィッシャー』」のスキルが必要なので、ベテランのお爺さん漁師が同乗してくれた。



 そして、用意が整ったところで俺たちは親方のアルドースさんや漁業組合の人たちからの見送りを受けて、港を旅立った。




 海原へと3隻の船が乗り出すが、天気はよく海も太陽の光で綺麗に輝いている。

 

 時折船の下をクジラのような恐竜のような良く分からない巨大生物も通り過ぎたりして、まるで水族館にいるようだ。

 しかし、空を飛ぶ怪鳥が海に弾丸のように突っ込んで行って、出てきた時には口に何匹もの謎の4足生物を咥えていたりと、異世界感はこういうところでも満載というか。



 この木造りの船は魔法運輸でおなじみの魔動石を利用して推進力を得ていて、魔動石の持つ浮遊系統の魔力を水中に行使して操作している。

 そのため、速さを急激に上げ下げすることも可能で、海に突然浮き出す巨大海洋生物の背中もスイスイと避けることが出来ている。

 

 しかし、その速度の急変は俺たち冒険者には慣れないもので、最初の2、3回の急旋回でフレイムズは全員酔ってアウトになった。



 船に乗って1時間ほど経ち、時間は16時あたり。

 日も少し落ち始めてきたところで、案内をしてくれている漁師がここからが海魔の出没地域だと教えてくれる。


 時間的にも夕方が一番活発になりやすいということなので、おあつらえだ。

 

 確かに、光が鷹の目で確認する限りだと数百メートル先に黒い塊が海中を渦巻いて動いている。

 そして、海魔を狙ったのか、先ほどの怪鳥と同じ種類の鳥が数匹、高速で海中に突っ込もうとした瞬間に海から飛び上がる無数の海魔に飛びつかれ、なすすべもなく血まみれになり沈んで入った。


 

 確かにあれはやばい。

 少なくともこのままあそこに突っ込んで行けば全員死ぬ。



「あれ?なんか前に見た時より大きくなってるんじゃないか・・・?」

「なんか数も・・・。」



 と漁師が言う通りにさらに危なさマシマシのようだ。

 恐らく捕食を繰り返して巨大になってきているのだろう。



 しかし、今ならまだ間に合う。

 これ以上デカくなるまえにここで仕留める。



 俺たちは囮用の魚山盛り船をゆっくりと押し出し、海魔の渦に進ませていくことにした。

 俺が押し出した船は波を立てながら、ゆっくりと進んで行く。

 


 サーサー、と波と船の揺れる音だけが静かに響く。



 すると臭いにおびき寄せられたか。

 海魔の渦が船に近付いて行く。


 

 そして驚くべきことに、囮用船から200メートルほど離れた所で見ていた俺たちの船の後ろから、黒い蛇の蛇行がドドドドドっ、と通り過ぎて行った。

 その蛇の蛇行の中から紫の化け物タコ、海魔が数匹俺たちの船に飛びついてくる。

 急いで斬り捨てるが、さらに何匹か飛びついてくる。



 どうやら山盛りの魚でおびき寄せる作戦は予想以上の効果を生んだらしい。

 遠方に散っていた海魔が集合している。

 俺たちの元を通り過ぎた黒い蛇は海魔の弾丸移動の群れだったようだ。



「うわっ、これ怖っ!!」

「うわあぁ!?林ちゃん後ろに!後ろに!」

「きゃあ!」



 しかし、囮の魚だけでなく俺たちの船にも数匹飛びついてきている。

 隣を見ると、非常用の船にも飛びついてきていて、船員は部屋に退避したのか姿は見えない。

 

 そして、囮用の船に大量の海魔が一斉に飛びつき始めた。

 船の下にも海が濃い紫で染められるほどの海魔が渦巻いている。



 今がチャンスだ。

 というか、今のうちにやらなきゃこの船も埋もれそうだ。



「晴花!サンダーミックスファイアー!」

「りょ、りょーかい!」



 俺は船のふちまでも砕かれつつある囮用の船を指さし、火炎と雷撃を混ぜた晴花の得意魔法を撃つように指示を出した。

 晴花はそれに従って、杖を真上に掲げ発動の準備をする。



 杖についた宝玉が輝き、膨大な魔力の渦が周りに風を引き起こし始めた。

 林はその暴力的な魔法をさらに高めんとするように、補助魔法でその輝きを増大させてゆく。



 そして、船をも食らう海魔の群れに狂暴な火炎が襲い掛かり、水中に逃れた海魔にも容赦ない雷撃の嵐が海を表面から抉るように降り注ぐ。



 ・・・なんか、威力があり得ないほど強くなってないか?


 

 あまりの威力と爆熱に囮用の船があった場所、爆心地を中心に海水が丸ごと蒸発し大波が生まれた。

 海魔の渦はチリも残さず死滅し、奇妙な異臭があたりに漂う。



 しかし、そんな中でも数匹逃れた海魔がいて、残る海魔は爆発の閃光から逃れるように俺たちの船やもう1つの方の船にも飛びついていく。

 

 だが、レベル1のモンスターである以上、数匹などなんの苦労もない。

 そこそこ動きが速いので俺たちの船に飛び交う海魔は力雅と幹夫が斬り捨て、もう一方に飛ぶ海魔は光が弓を唸らせ次々と撃ち落し絶命させていく。


 そして、晴花の魔法が造り出した海の大穴が海水で埋まり、波が静まるころには、1匹も動く海魔はいなかった。



 波以外音を立てなくなったところで、ようやく俺たちは一息ついた。



「案外あっけないもんだな。」

「確かにね。海魔なんて言うからちょっと期待してたのに。」



 力雅と光が軽口を叩きあえるくらいには余裕があったということだろう。

 実際に、苦労という苦労もしなかった。



 少し離れた所にいた非常事態用の船も落ち着きを取り戻し、中から隠れていた漁師が出てきて手を振ってくる。



「おーーい!!すっごかったなぁ!!アンタらホントにつえーんだ!」



 そう言ってニコニコと手を振る漁師たちの後ろに、1本の巨大な触手が天を衝くようにそびえたっていた。


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