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俺たち異世界大発見伝  作者: カネシロ 
第1章   『冒険者』編
16/33

第16話  『ヒトと敵、生きて死ぬこと』

俺たちはあの襲撃者を倒した後、息も絶え絶えにその場で座っていると、ターミナルに直結した塔の入り口から無数の冒険者と支援協会職員が飛び出してきた。


どうやら俺たちが助けた竜騎士が、下の城まで降りて連絡を入れたらしい。

冒険者たちは、警備隊が仕留め損ねた悪魔を倒しに来たようだが、もう遅い。



晴花と力雅が嬉しそうに悪魔の取り落とした歪に曲がった杖を掲げる。


それを見た俺たち6人以外の全員が、口を開けて驚いていた。




襲撃してきた悪魔は全て撃滅された。



俺たちが倒した1体を含め、街に侵入した5体の悪魔は「デーモンロード」というレベル5のモンスター、つまり上級者向けの討伐対象で、下級の「コロデーモン」を20匹ほど引き連れて、この街に襲撃を仕掛けてきた。


こいつらは話に聞いた魔王軍のモンスター、つまり魔物というわけだ。

このデーモンロードは征討軍でいう騎士長クラスで、普段はこんな集団で固まることはないようだ。



だが、今回は状況が異常だった。

ミシャさんの話していた魔王軍の行動の活発化は深刻で、今回の悪魔たちの襲撃は、国境要塞周辺の防衛線をかいくぐって侵攻してきたものだったそうだ。



「現在、魔王軍は我々の領土に向けて先行軍を派遣しており、我々支援協会の第1防衛線にて激しい戦闘が行われています。」



俺たちに冒険者支援協会ネクスタ支部、通称「城」の中を案内する職員のお姉さん、マリアさんは説明を続ける。



「国境は3つの防衛拠点、王族の『戦闘要塞 カブラ』『地上要塞 ガント』、そして支援協会の『ブロッド砦』に守られています。ですが、今回の魔王軍侵攻はかなり本格的で、いずれの防衛拠点にも魔王軍が派遣されており、さらに王族と支援協会の拠点の間にある平野からも侵入を試みています。」

「じゃあ、さっきのあいつらはそこから?」

「はい、その通りですノブヒロ様。その侵攻を阻止するために、支援協会が特別編成した『防衛隊』が防御を行っていますが、急速に構築した部隊と陣営ですので、稀に今回のように侵攻を許してしまう場合があるのです。」

「それって、かなりやばいんじゃ・・・?」

「はい。被害は支援協会ならびに王族の都市まで及ぶため、近々王都より支援部隊が派遣され、共同戦線が組まれる予定です。」



デーモンロードとの戦闘で破壊されたターミナルから、俺たちを連れて支援協会の窓口へと向かい、戦況を淡々と説明を続けるマリアさんの表情は冷たい。

俺たちは戦線よりかなり遠いオリジナにいたから実感がなかったが、実際に魔王軍の一部と戦ってみるとよほどまずい事態なんだ、と気づかされる。



そして、マリアさんは依頼の受注と報酬の受け渡しするカウンターまで俺たちを連れて来ると、クルリと俺たちの方を向き、うっすらと笑って言った。



「色々と、お疲れ様でした。予定外の戦闘まで・・・。一応、先ほどのデーモンロード討伐の特別報酬が支給されていますので、豪商マルディエリ様の護衛依頼の報酬金と併せてお受け取り下さい。」



そして受け取り皿に積まれる硬貨の山。

その数、金貨14枚、銀貨8枚、銅貨20枚、日本円で言うおおよそ150万円の大金だ。



「うええええええええ!!!!す、すげええええ!!」

「え、なにこれなにこれやばいじゃん!え、え、え!?」



俺たちはそろって目を回す。

今までの依頼だって最高額は金貨2枚だったのに、これは・・・!?


するとマリアさんは金髪の長い髪を耳元からどかしながら、可愛らしい小さな眼鏡をクイっとあげ、俺たちを落ち着かせるために説明を始めた。



「先ほど申し上げたように、デーモンロードはレベル5認定を受けているため、1体1体にかけられた報奨金は高くなっています。そして、今回は緊急性も考慮されて特別報酬が高くなっているのです。・・・実を言うとデーモンロード討伐の報酬よりもマルディエリ様の護衛任務の報酬の方が高額なんですけどね。」

「え、そうなんですか?」

「はい、マルディエリ様の依頼の報酬は成果に応じて決定とのことで、あなた方の働きに感激したのか多めの依頼報酬を設定したようです。」

「そんなに働き良かったかなぁ・・・?」



謙虚な幹夫が思わず疑問を漏らす。


するとマリアさんはぶんぶんと顔を振ってそれを否定する。

そして幹夫の両手をガシっと握って目をキラキラさせながら真摯に言う。



「いいえ!いいえ!違いますともミキオ様!確かに、私は護衛のお姿を見ることは叶いませんでしたが、オリジナからいらしたばかりの冒険者の方が、デーモンロードを倒すなんて、普通じゃ考えられません!」

「は、はぁ・・・そ、そうなんです、か・・・?」



急な接近に面喰う幹夫をよそに、そうです、そうですと頷きながら握った手をドンドン自分の体に近づけるマリアさん。

そして、感じた殺気に気付いた時には、林が高速で幹夫に近づき、腕をギュッと握り体を密着させていた。



「幹夫君、知らない、おばさんにくっついてると、申し訳ないよ?」

「あら、リン様、私はどこぞの小娘ではないので、お姉さんとして大いに受け入れられますが?」



そう言い合って林とマリアさんはにらみ合う。

間に挟まれた幹夫はどうしていいのか分からずあたふたしている。

これ、修羅場ってやつじゃないですか!


しかし、マリアさんは幹夫と会ってまだ数十分なのによくもこんなにアピールできるものだ。

幹夫は童顔で、身長も160センチメートルしかないのがツボに入ったなら、もしかしてショタコンってやつだろうか。


悪くなった雰囲気を掻き消すように晴花が質問をする。



「私たちってそんなに強いのー?」

「え、えぇ、はい、その通りです。」



マリアさんは幹夫の腕をさっと離し、服を整えて答える。



「普通、デーモンロードと戦う機会があるのは、まずサーディアに行くか、それとも今回のように警備隊に就くしかありません。つまり、結構歴戦の冒険者になってから戦いに臨むものです。ですが、今回皆様は何の準備もなく、装備もその装備で戦って、倒したことが奇跡のようなものなのです。お話は伺っていましたが、それ以上でした。」

「?誰かから俺たちの話を聞いてたってことですか?」

「はい。実はマルディエリ様の護衛依頼報酬についての連絡をオリジナの方から受けた時に、ペシャ様よりお話を伺っていたのです。『期待の新人だから、絶対に逃がさないようにー!』と。」

「あぁ、ペシャさんが・・・。」



あの人、なかなか根回しが上手い。

俺たちが冒険者を続けられるようにここまでサポートしてくるとは。



「たぶん、しばらくは皆様の話題で持ち切りになると思いますよ。オリジナの駆け出しが、レベル5の悪魔を討伐した!という感じで。」

「なんかちょっと恥ずかしいわね。ノブなんか死にかけてたのに。」

「うっせ。生き返ったしいいだろ。」



光も光で図太いやつだな。

ほんの少し前まで死なないでー、なんて泣いてたのに。



「まぁ、普通ならあなた方くらいの経験値の冒険者チームは全滅していますので、1人も死者が出ないということもまた、すごいのです。」

「へへー晴花のおかげだ!」

「ふふっ、ですね。ペシャ様より皆様はこちらに移住しようとされているとも伺いました。ですので、ネクスタに長期滞在されるのであれば、おすすめのお宿をご紹介致します。まさしく期待の新人の将来へのご投資、ということです。」



こうして、この街でもペシャさんの力のおかげで支援協会提携の宿に泊まることになった。

あの人、ホントどんな人なのだろう。謎が深まるばかりだ。



ネクスタで泊まる宿は「プリウス」。


この宿はコテージ式の部屋の貸し出しを行っており、4人用、6人用、10人用と幅広いコテージを所有する。

このネクスタにおける宿業界にてトップを争う有名どころであるらしく、冒険者だけでなく旅の行商が泊まる事も多い。


だから普段は予約がパンパンらしいのだが、さっきの悪魔の襲撃で肝を冷やした商人が急いで街を出て王都に向かったので、部屋に空きが出たそうだ。

支援協会提携の宿なだけあって、冒険者は支援協会の認定さえあれば長期滞在も可能であるとか。


勿論、マリアさんのはからいでさっと認定証を貰ったので、俺たちはこの街に2週間は最低でも滞在することに決めた。

状況次第ではもう少し滞在期間を延ばす。


プリウスに着き、受付で予約をしようとすると、オーナーがすっ飛んできて俺たちに挨拶をしてきた。

どうも、マリアさんが余計な情報も伝えたようで、まるで勇者のようにもてはやされた。

勘弁してほしいものだ。


取りあえず認定証を見せ、2週間分の料金、銀貨40枚を支払って案内を受けることになった。



俺たちはオーナー直々に泊まるコテージまで連れて行ってもらった。

コテージは1つ1つが適度に離れていて、宿のある地区は緑が豊かなため、別荘のようだ。


泊まるコテージは周りを木に囲まれて傍に小川が流れる、のどかな303号、キーはオリバーの宿と同じような金属製のプレートで、また、俺が預かることにした。



コテージの中は広く、二階建てと豪華な造りになっている。

一階はリビングや木風呂、トイレに台所など、二階は部屋が6つも完備され、1つ1つの部屋はそんなにデカくないが、それでもこれはすごい。

二階にはくつろげるベランダもあり、なんとも豪華な住宅だ。



適当に部屋を割り振って、荷物を置きしばらく休むことにした。

デーモンロードと戦ったり、報酬を受け取ったり、幹夫が修羅場になったり、といろんなことがあって気付けばもう4時近い。


時間に関しては、幹夫のデジタル腕時計を使って確認していて、光で動くので、この世界でとても高価な魔法時計を買わずにすんでいる。

夕飯の時間は・・・と思ったがプリウスでは夕飯のサービスは無いので、自分たちで店を探さなきゃいけない。

だが、夕飯で迷ったときは支援協会に来てくれ、とマリアさんが言っていたので甘えることにするか。

また、幹夫の取り合いにならなければいいが。



部屋から出て、下に降りようと廊下を歩いていると、力雅がいびきをかいて寝ているのを見た。

そりゃあんだけ激闘を繰り広げたら疲れるはずだ。



一階のリビングでは晴花がデーモンロードから奪った杖を、林と一緒にいじっていた。



「わわっ、林ちゃん!なんか赤く光ったよ!パーって!パーって!」

「晴花ちゃん、お願い、魔力抑えて。」



杖に付いた宝玉が光り始めたが、爆発しないだろうな・・・?



幹夫は一階を回って外に出たり中に入ったりして何かを確認している。

話を聞くとどうも、暗殺者として、侵入できる経路がないか確認しているようだ。

たぶん、さっきのデーモンロードの侵入で過敏になっているのかもしれないが、ありがたいのでそのまま確認を続けて貰う。

この地道な活動が、ロードデーモン戦でも幹夫に大きな傷をつけなかったのだ。

邪魔はできない。



幹夫と一緒に外を出た時、二階を見上げるとベランダから光が手を振って「こっちにこい」と呼んできたので、俺は光のいるベランダへ向かった。



ベランダでは、光が柵に両肘を立て、もたれかかっていた。

なんか最近の光はいっつもこんな感じで黄昏てるな・・・、なんて思っていると



「ノブ、こっちきて。」



と言って光は自分の横を見た。


俺は大人しく従って光と同じようにもたれかかる。


しばらく沈黙が続いたあと、光が口を開く。



「今日、お疲れ様。あの、悪魔、強かったね。」

「ん、あぁ確かにな。光も、お疲れ様。」



光は言葉をつづけず黙りこくる。



「どうしたんだ?光。俺になんか用があったんだろ?」

「・・・。」



なんだ、疲れているのだろうか。

すると、少しずつ光は話し出す。



「・・・今日、ノブ、危なかったよね。ホントに。」

「あーまぁそうだな。でも、光と林が助けてくれたろ?助かったよ。」

「うん、そうだね。・・・うん、でも私、今日すごく怖かった。」

「・・・そりゃ、仕方ないな。あんな強敵と急にぶつかっちゃ・・・、」

「ううん、違うの。それもあるけど、そうじゃない。」



光は俺の言葉をさえぎって、俺を真っ直ぐと見つめてきた。

長いまつ毛、キラキラと光る、涙をうっすらと溜めた瞳に、俺は何も言えない。



「・・・私ね、あのとき、ノブが死んじゃうと思ったの。」

「・・・あぁ。」

「でも、そんなの嫌。すごく苦しくて、嫌。ノブが血を、血を吐いて苦しんでるとき、私も、すごく苦しかった。」

「・・・。」

「今日は林の魔法で助かったよ。でも、次は分からない。死んじゃったら、林にも治せない。」

「そう、だな。」

「ノブは戦士で、私たちのリーダーだから、敵に一番に攻撃をしなきゃいけないのは、分かってる。・・・でも、もう、嫌なの。」

「・・・。」

「・・・ねぇ、ノブ。もう、無理しないで?・・・やめても、いいと思う。この世界はすごく楽しいけど、今日みたいなのは嫌。誰かが傷ついて、死んじゃうかもしれないのは、駄目。林が、晴花が、幹夫が、リキが、なによりノブが、死んじゃうのは、会えなくなるのは嫌なの・・・。」



光の真っ直ぐな思いがぶつかってくる。

そうだ、前にも同じようなことを考えていた。

オリジナで、光に心配かけていることに気付いてたのに、俺は何もすることがなかった。


俺は、幹夫に説教をした。

自分の気持ちを見つめ直して、考え直せ、と。


そして、俺自身も、よく考えろ、と。


今、俺が出来るなりに答えることが、俺のやることだ。

はっきりと言葉にするのはまだ、難しい。

俺は口下手だし。

けど、俺は、思ったことをそのまま伝える。



「・・・そうだな。確かに、俺も、みんなが死ぬのは嫌だ。それは光と同じだ。でも、俺がいる。俺がみんなを守るから、心配しなくていい。」

「でも!ノブが・・・!」

「あぁ、俺は危険に自分からぶつかっていくことになるんだ。けど、それは、俺がやりたいことなんだ。今日、マリアさんからこの世界の人たちの状況を聞いて、魔王軍の悪魔と戦って、思ったんだ。このまま無視していきたくない。俺たちが、力になれるなら、なりたいんだ。」

「・・・。」

「それでも、やっぱ俺が危険なことには変わんないけどな。でも、俺は絶対に死なないよ。」

「どうして・・・!」



俺は息を吸い、しっかりと光の目を見つめ返す。



「俺は、光を残して、死にたくない。まだまだ、光とこの世界を、時間を一緒に楽しみたいんだ。だから、光のことは絶対に守る。そして、俺は、絶対に死なない。約束する。」



そう言うと、光は驚いたあと、顔を真っ赤にしてうつむく。


あぁ、はっきり言わなくてもこんなの告白みたいなもんだろ・・・。

恥ずかしい。



すると光が俺にゆっくりと近づき腕を体に回してきて、ギュッと抱きしめてきた。


俺がデカいので、光の顔は俺の胸にうずまる。


そして、光は呟く。



「・・・ばか。」

「・・・俺も恥ずかしいんだぞ。」

「うっさい。こっちはもっと恥ずかしいっつーの・・・!」

「ん、すまん。」

「謝らないでよ。・・・言ったなら、絶対に約束、守ってね。あたしも、ノブを死なせないから。」

「当たり前だ。・・・絶対に、守ってやる。」



そうしてしばらく無言で抱きしめ合う。

光と触れ合っていて、こんなに温かい気持ちになる。

心地よい、温かさだ。



すると、ガゴン!と音がして、晴花たち4人が倒れ込んできた。

晴花がえへへと笑い、林はパチパチと拍手、力雅は幹夫の頭をワシャワシャして、幹夫も申し訳なさそうにしながら、されるがままだ。


どうやら一部始終を見られていたらしい。

確かにベランダに鍵はないし、中からも見れることを忘れていた。


俺と光は咄嗟に跳んで離れたが、4人ははやし立てることを止めない。

しかも晴花と力雅なんか



「信くんカッコいいーーーー!!!守ってくれるんだって!!やったね光ちゃん!!」

「信浩、お前やるなぁ!絶対に光を守れよぉ~!」



と煽りに煽ってくる。



俺と光は顔を真っ赤にしながら、いつかこいつらがくっつきでもしたら、絶対仕返しをしてやる、と心に誓った。


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