表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
二章 銀の国編 合わせ鏡。それは無限に続く世界。ひねりもしない平行世界。されど、手を伸ばす事は出来た。
62/70

銀の国の果たし状

◇◇◇◇◇


 ほぼ、黒の国の重鎮達が集結した夜ノ学園、時は昼。


 今の状況を判断した巫女リオンから、徐々に怒りが消えていく。


「今頃登場って、遅すぎー」


 元に戻って早速、小馬鹿にした発言。それはこの場を自分の物にする為の一石だったが、全てを見通すと言われる輝夜姫ーーサクヤによって遮られる。


「いやすまなかった銀の者よ。其方が来ておったことは最初から分かっておったが、何しろ此奴がーー」


 サクヤはアリスを見た。


「修行に丁度いいと思ったからな」

「ーーと。言ったのだ。黒の戦士の言葉、無下にする訳にもいくまいて」


 ラッセルが「師匠!?」 と叫んだ。 師匠は当然、聞こえないふりを使った。


 ……つまり。


 獅子巫女が来ていたことは最初から把握していたが、敢えてそこを、訳のわからない修行などというものに利用されたという事。


 冷めた怒りが再び覚めそうだった。


 一応それは、大人のよゆーとやらで乗り切る事にした。


「なんか、ムッとくるけど」


 全然乗り切れてなかった。


「そう言わず、諦めるのだ巫女よ。大体、そちらもやり過ぎなのだ。遊びならまだしもーー貴様……殺し合いがしたいのならいつでも言え。いつでも相手になってやろう。

 アリスが」

「俺か」

「私は戦闘能力皆無だからな」

「だな」

「アリスなら安心だ」

「やはりか!」


 目の前で行われているのは夫婦漫才か何かか。別に構わないが、邪魔をしたくなるくらいにはイラッとくる光景だった。


 すると……


 リオンとサクヤ達の間に飛び込む、ネイユンの姿。


「お下がり下さい姫様、戦士様! こいつらは危険です」


 見事な忠誠心だった。その行動が、適切かどうかは兎も角として。


「失礼なのー。私はただ、手紙を届けに来てやっただけなんだから。勝手に勘違いして、不審者呼ばわりしたのはそっちの方じゃん。私悪くないもん」

「それは無理があるよな」

「うむ、実際、不法に入国したのは事実だ。捕らえられても文句いえん」

「だってそんなの面倒だもん」


 巫女リオンは子供だ。レオという強大な力を持ったワガママな子供だ。


 扱いは難しい。


 自分の理想とは違った結果となり、今にも駄々をこねたいくらいである。


「あーもう意味わかんない! 私良い事してるのに何でこんなに怒られなきゃなんないの! ねえレオ、私悪くないよね!?」

「……ガウッ」


 目を逸らした。


「レオの馬鹿ー!!」


 因みにレオの傷は、カレハナが治しておいた。因みにレオとウサギは、案外仲良く戯れていた。因みにグレイは、別に、何もしていない。


 何だかこの雰囲気がよく分からず、ネイユンは戸惑っていた。その肩に、サクヤが手を置いた。


「ネイユン、其方は下がっておれ。私達の都合に付き合わせて悪かったの」

「い、いえ、そんな」

「後ろの者達を連れて、医療室に行くと良い。女の顔に傷が残ったままでは大変だ」

「……分かりました」


 言われた通りにこの場を離れるが、最後に一目だけ彼彼女らを見た。そこには、常に自らを疑わず、誇りを抱いた大人の姿があった。


 幾ら背伸びをしようと、自分にはまだまだ届かない距離だと悟り、心の中で悔しがるネイユン。


 隣にラッセルが続き、その隣でナイトも一緒に歩く。


「大丈夫?」

「……あ、私の事ですか。はい、私なら大丈夫です」


 全然そうとは見えずに、ラッセルはナイトを無言で見た。ナイトは肩をすぼめた。その様子を見て、ネイユンはくすりと笑った。


「本当に、私は大丈夫なんですよ。だって……もう、1人じゃありませんから」

「っ……だ、だね! これから君も僕たちも頑張ればいいんだもんね!」

「ええ。今日はありがとございました。あの時、一緒に戦おうと言われて、私凄く嬉しかったです」

「そ、そんなの、当たり前だけど、僕結局あのままだと負けてたし」

「いや、俺も嬉しいぞ。ラッセルの成長をこの目で見た。ネイユンも課題が見つかったようだし、これから微力ながら俺たちが付き合わせてもらおう」

「……ありがとうございます」


 共通の何かを成し遂げて、絆が深まる事もある。今日の三人は、正にそれだった。


「あ、そうでしたラッセルさん。私は貴方に言いたい事がありました」


 突然ネイユン、少し咎める口調だった。思わずラッセル、畏まった。


「な、なんでしょうか?」

「はい。私の事はネイユンと呼ぶようにお伝えしたはずですが、それを避けるあまり私の事を“(きみ)”と呼んでくるのは何か言いようのない苛立ちを感じます。何故そこまで頑なにネイユンと呼んでくれないのです?」

「でもっ、いや、だって」

「ナイトさんは私の事をしっかりネイユンと呼んでくれていますよ」

「まあ、同級生だからな。当たり前だ。ネイユンも俺の事はナイトと呼び捨てにしてくれて構わないぞ」

「分かりましたナイト。それで……ラッセルさん。いえ、ラッセル。私もこう呼んでいるんです。おあいこでしょう?」

「ぁ……う」


 困った時のナイトを見た。


 ーー頑張れ!


 応援された。


 ……覚悟を決めた。



「……ネイ……ユン」

「ラッセル」

「……ネイユン」

「あともう少しですね。ラッセル」

「ね、ネイユン!」

「はい。これでみんな一緒です」

「そうか! 一緒か!」

 

 ナイトは右肩にラッセル、左肩にネイユンを抱えた。


「ナ、ナイト!?」

「力持ちですね」

「俺はただ走っただけだが、2人はもっと疲れているだろうからな。医務室までこうして運んでやる」

「恥ずかしいんだけど!」

「いえ、いつもと違う目線というのは、存外楽しいものですよ」


 何はともあれ学生三人、今日の事をきっかけに、各自課題を見つける。努力していつかそれを成し遂げる。


 学園生活は、まだまだ始まったばかりだった。


 ーーもしかして私、お友達が出来たのかも

 ーーは、恥ずかしいぃ……

 ーーなんだか弟と妹が出来たみたいで、いいな。こういうの。


〜〜〜〜〜


 せ、青春してる……!


 弟子は戦いの場で成長しただけでなく、真の友人まで作り上げた!


 くう、師匠として、これを喜ばずにはいられない。今度の土曜日には精一杯もてなしてやろう。


「ーーい、おいアリス」

「ん、ああすまない」

「全く……そんなに制服姿がいいのか?」

「え?」

「アリスが望むのなら、私も、恥を忍んでああいう姿になる努力は惜しまんが」


 何か、勘違いさせてしまったらしいな。やれやれ。


「是非お願いしたい」


 この口がぁ……!


「まあ、冗談は置いといて」


 銀髪娘の巫女リオンを見る。何か癇癪起こしているらしい。これだから精神年齢の幼い子供というのは……


 少し可愛いから困る。


 いやいかん。厳しくしないと。


 甘やかすからああなるのだ。リオンは少しワガママが過ぎる。あんなの可愛さでも何でもない。絶対に友達無くすぞあれは。


 ここはガツンと言ってやる為に、巫女の元まで近づく。


「リオン!」

「む……何よ真っ黒」

「……飴いるか」

「わー! いる!」


 これは立派な交渉術。これは立派な交渉術。ジト目で睨んでくるサクヤもきっと分かってくれているはずだ。


「あむ……真っ黒優しいんだね」

「確かに、この世界広しといえど、俺以上に優しい人間などそういまい。

 ところでリオンよ、さっき手紙がどうとか言ってなかったか」

「んっ、んむ……そうなの! 私貴方にお届けものがあるんだよ」


 銀の国からの手紙。内容は、十中八九あれだろう。


「そうかそうか、偉いなリオンは」

「そうなんだよー。私偉いのにみんな分かってくれない。真っ黒は飴くれるんだからちゃんと分かってくれてるよね?」

「もちろんだとも。銀の国からここまでやって来るのは相当の苦労だったに違いない。いやーほんと、リオンはよく頑張った。俺はそこまで真っ黒ではないし、アリスという名前だが」

「えへへ〜、そういえばそうだったね。じゃあお利口アリアリにご褒美。はいこれ」


 リオンは満面な笑みで手紙をくれた。

 もしかしてこいつ、扱い方さえ上手くやれば超チョロいのかもしれない。


「それは、ギンギンからの手紙だからね」

「……だろうな」

「私はもちろんギンギンの事を応援してるけど、優しいアリアリにも、心の中で頑張れって言うから落ち込まないでね」

「そうか……もう一つ飴をあげよう」

「わーい!」


 レオには肉をあげた。獅子が生肉を食べている姿を見ると、無性に生肉が美味しそうに見えるのは俺だけの秘密だった。


「それじゃあ、私は帰るねー」

「もう帰るのか」

「うん。なごりおしーけど、早く帰ってこいってギンギンに言われてるから。あ、手紙の返事もいらないって」

「……分かった。じゃあなリオリオ」

「わっ、リオリオって呼ばれたの初めて! じゃーねアリアリ〜」


 もっとスマートなあだ名にしてほしかったが、とりあえず、上手く収まった。


 手紙には、銀よりと書かれてある。中身を見るのが少し怖い。


 なんて、馬鹿みたいだ。実の妹からの手紙を怖がる兄なんているものか。


「アリス」


 いつの間にか近くにきていたサクヤが、心配そうに声をかけてきた。


「大丈夫か?」


 ……ほんと、馬鹿みたいだ。ここまで気を使われるほど、俺は情けないらしい。


「大丈夫、じゃないな」

「……」

「もし、もしもこの中身がラブレターだった場合、この俺もどうすればいいのか分からん。実の妹の禁断の愛をどうやって諦めさせてやるべきか」

「絶対にそのような内容ではないと確信しているが少し中身が気になってきた。私も見せてくれ」


 それはダメだ。


 結局俺は夜、1人でこの手紙を見る事にした。カレハナにも退いてもらう事にする。


 サクヤの言う通りラブレターなはずがない。どちらかと言えばこれはーー


 果たし状。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ