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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
二章 銀の国編 合わせ鏡。それは無限に続く世界。ひねりもしない平行世界。されど、手を伸ばす事は出来た。
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無駄のない無駄な意味深

◇◇◇◇◇


 カレハナは、滅多にダンジョンに入ることがない。何しろメイドだからな。ウサギは金の国の者だから、言わずもがな。俺も最上階しか知らない。


 つまり、何が言いたかというと……


 俺たちは皆、新人冒険者なのだ。


「本当にここなんですか?」

「そのはずなんだけどなぁ」

「聞き間違いとか」

「俺に限ってそれはない」


 だが、カレハナの疑問もごもっともだ。


 ダンジョンの24階は、とおりあめと呼ばれるフロアらしいが、実際に来てみたところ、雨など降っていない。


 とおりあめ……通り雨……飴? 透り?


 透り雨?


 いや、透けているという事もない。もし雨が見えないとしても、感覚で分かるはずだ。それを踏まえてもう一度言うが、ここの階に、雨など降っていない。


「でも、良い所だなー!」


 ウサギの言う事も確かだった。


 うるさすぎない緑と、優しい陽の光。室内とは思えない自然環境は、ピクニックに最適である。


 時折、牙を尖らせた魔物も……


「ん、あっちいけ」

「ピェェエエエエエッ!!」


 ウサギが一瞥するだけで恐れ逃げていく。本能で、継承者の恐ろしさを察知したのだろう。それすらも分からない鈍ちんのアホも現れるが……


「天寿を全うして下さい」


 カレハナの力 “成長” が、襲いかかる魔物を一瞬にして老い(・・)らせた。生を操るカレハナに、この程度造作もないこと。


 ただ、目の前で1秒も経たず寿命が来て死に逝く姿を見ていると、長生きとはなんだったのかと自問自答。しかし、本人は満足しているらしかったので、それは気にしないことにした。



「そういえば、お昼どうしようかなー」

「ピエェェエエエエッッ」

「いや食べないぞ!?」


 完全にウサギはピラミッドの天辺、捕食者として認められたみたいで。これまで近くで様子を見ていた他の魔物達も、お昼発言で全て逃げ出した。


 少し、ウサギが可哀想だった。


 しっかし、何だったんだろうなぁプッツェンバーガーのあの自信は。


 ま、いいか。


 この木で少し休むとしよう。


 木漏れ日が素敵だ。


「雰囲気に生きる男。それが俺だ」

「何言ってるんですか。バカっぽく見えますよ、兄さん」


 カレハナが隣に腰掛ける。未だ慣れない兄呼ばわりに、思わず黙ってしまう。ウサギは彼方に逃げた魔物を名残惜しそうに見つめながら、カレハナの言葉に興味を持った。


「……」

「にいさん? アリスはカレハナのお兄さんなのか?」

「貴方と魚の継承者と同じ関係です」

「ああなるほど! ……でもおかしいな。アリスはあんまり、嬉しくなさそうだぞ」

「それは今後の課題ですね」

「何でアリスは嬉しくないんだ?」

「それが分かれば苦労しないんですが……そういえばアリスは、血の繋がった妹がいるんでした。参考程度に、どんな風だったか教えてもらってもいいです?」

「どんな風と、言われてもなぁ」


 妹……家族……素晴らしい響きだ。とても大切なものだ。欠けがのない。だからこそ、パズルのピースのように、欠けてしまったら最後、元の姿には戻られないのかもしれない。

 

「仲は、良くなかった」

「おや意外です。どうしてでしょう」

「フッ……俺が天才だったからかな?」

「成る程その性格故でしょうか」

「おい」

「はなもち? ならなかったんだろうな!」

「お前まで」


 難しい言葉を使って、ウサギまでもが責めてくる。


 辛い。


「……お前達の言う通りなのかもしれない。仲は良くなかった。どころか、向こうは俺を嫌ってた様にも思える」

「アリスは嫌いでしたか?」

「まさか。あいつは俺なんかと違って頑張り屋さんだった。それに、妹を嫌う兄などこの世にいるものか」

「多分、私の兄は私を憎んでましたが」

「……」

「……」


 遠くで鳥の鳴き声がする。


 風そよぐ。


 蝶々が目の前を通り過ぎる。


「あ、蛇」


 ウサギがそれを指さして言った。確かに蛇がどこかへ行く所だった。因みに蛇は、ここ最近この世界で不吉な象徴だった。


「……」

「……」

「……」


 遠くで鳥の鳴き声がして、風そよぎ、蝶々がフラフラ飛んでいく。


 ……


「少し、眠ろうか」

「それもいいですね。賛成です」

「土の感触が懐かしいなぁ」


 ……


 ……


◆オマケ◆


アリス「全くヘビーな話だぜ」

カレハナ「」

ウサギ「……? 蛇足?」

アリス「」


◇◇◇◇◇


 『ーーー』

『ーー兎を追いかけて』

『私は彼は君は、アリスは』

『真っ逆さまーー』

 『ーーー』

〜〜〜〜〜


 ……む。


 人がぐっすり眠っていたというのに。


 今、頭に直接声が届いた。


 女性の様な声だった。この声はあの時と同じ、ダンジョン最上階で聞いた声だ。


「んぅ……どうかしましたか?」

「……いや、何でもない」

「もう朝かー?」


 ウサギも起こしてしまった。朝というか今は昼だが。


 と、その時。


 寝ぼけたウサギの、耳が動く。


 ピンッと張り詰めてーー俺たちには聞こえない声を感じ取ったみたいだった。


「何が聞こえた?」

「なんか……危ない気がする」


 そう言うや否やウサギは駆け出した。呆気にとられた俺とカレハナも、顔を見合わせてウサギに続いた。


 そして、ウサギの背中を見ながら、先ほどの声を思い出す。


『ーー兎を追いかけて』


 ……どうも、試されているらしい。


 その推測が確信に変わったのは、ウサギが野生的な視力でそれを捉えた時だった。


「男の子がやられてる!」


 俺も、ウサギの視力を模倣させてもらうと、確かに1人の冒険者がやられていた。このままではいずれ屍行きだ。


 ただ、気になったのは敵の魔物。ここ24階とは不釣り合いの暴力的な魔物が何故ここにーー声の正体はなかなかどうして、おふざけが過ぎる。


「助けよう!」


 ウサギの言葉に、わざわざ異論もない。俺たちは一瞬だけ視線を交わし、剣をとったのだった。



◆オマケ◆


一方その頃


サクヤ「う、浮気なんて……いやいやまさか、ハハッ、そんなはず……そんなはず……うぅ!」


屋根裏フライン(浮気? ……外っ……マ、マニアックエロ過ぎる!!)

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