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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
一章 金の国編 マリーゴールド 「別れた哀しみ」は、膨れ、蕾となり、「絶望」の花を咲かしーーやがて枯れた
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黒闇真髄 ココアコア

◇◇◇◇◇


 剣裁の度に大気が揺れて。


 尚激しさを増す戦闘は、たったの一撃で終わりとなった。


 トスっ……と。


 まだ食事の準備に使う包丁さばきの方が重い音を出していただろう。


 それでも俺は知っている。


 今までの戦闘は、たった一つのミスで致命傷になりえたと。微塵の油断も許されず、コンマの狂いが勝負の分かれ目。


 結果だけ見れば俺が無傷で金の戦士の心臓に一突きなのだが、死にゆくその男の顔は敗者のそれではない。

 勝ったこちらが納得のいかぬほど、満ち満ちた表情であった。




 ーーそしてここで、空気の読めない奴がいる。



 俺は死に還っていく男を見届ける事も出来ずに、最後の戦いへ剣を構えるのだった。



 ……もちろん、空気の読めない奴とは、黒の国の人間である。


 それも真性。根っからの黒気質、黒の戦士張本人だ。



 名をシュヴァルツ。

 グレイのお気に入りである。



「一応、言っておくが、貴様も自由の身のはずだ。何故こちらに殺気を向ける?」


 明らかに俺を敵として見ていた。


 同じ黒の戦士だというのに、いや、だからこそとでも言うべきか。


 とにかくそいつは、面倒くさい性格をしているらしかった。


「……ここであんたから目を背けてしまったら、それこそ僕という人間が真の意味で死んでしまうと思ったからだ」


 やっぱり。


「ずっと傍観の立場にいたのは、つまり、俺と一対一の勝負をしたかったというわけか……まあいいが、天才であるこの俺に勝てると思っているのか?」

「天才、か」



 苦々しく言う。


 こいつも天才が気にくわないタチらしい。


 ……大半の人間がそうか。


 俺だって……



「あんたは確かに天才なんだろう。強い。とてつもなく。そして…….僕は才能がない。だが。 だからこそ努力を重ねてきたんだ。誰よりも最強を目指してきた。

 ーー物心ついた時から、僕が死に物狂いで自分のものにした力。戦士となって身につけた力。十七年の努力。今、その全てをあんたにぶつける! 」


 八つ当たりとか、執念とか矜持とか。


 シュヴァルツは宣言した通り、この勝負ですべてを俺にぶつけるのだろう。


 十七年……大した数だ。


壱闇(ダークユニーク)!」



 影を形とする力。


 シュヴァルツは自分の影から一つの剣を生み出し、それを上段に構える。


 まだ、俺と奴の間は、10メートル以上も離れている。


 それでも本能が訴えかけてきた。


 そんな数字に意味はない、と。


「シッーー」


 そんな掛け声が聞こえる前に、俺は全力で体を横に傾けた。


 先ほど金の戦士との戦いでここらの地形はぐちゃぐちゃになってしまったが、シュヴァルツの全力の一撃は、それらを綺麗に分割するよう大地を斬る。


 俺の後ろで、世界が悲鳴をあげた。


 ……流石に冷や汗ものだな。



「避けたのか、僕の……一撃を」

「言っただろう。俺は天才だ」

 

 避けられたのは、ひとえに迷宮での経験の成果。


「俺は天才だ……だからこそ、自分は弱いと知っていた。貴様は死に物狂いで努力をしたらしいが、何というか、所詮そこまで。といった感じだな」

「なっ……僕の努力は、僕のものだ。誰にだって否定はさせないぞ」

「肯定した上で言っている。

 俺はな、死んで死んで、死に続けながら努力をした。はっきり言って、(レベル)が違う。あの三ヶ月間はどんなものだって比べ物にならない……

 なあシュヴァルツ、自分より圧倒的強者から殺され続ける運命を前にして、天才は何を思ったと思う? 死んで、また死んで、次も死んで……俺の中では一つの決意が大きくなっていった。それはーー」


 死にたくない。


「あの暗くて冷たい不思議な空間。いや、本当は暗いのかも冷たいのかも分からない無の世界。

 二度と嫌だ。死にたくない。死にたくない。生きてやる。生きてやる。今度こそ、生きて、そして、勝ってやる。

 俺はその一心で強くなった。死にたくないという気持ちは、この世界中の誰にだって負けない。そしてそれは、生きようとする力に変わる。だから……悪いな。お前がそうであるように、俺だってここで負けるわけにはいかない。手加減は出来ないから、覚悟しろよ」

「……全く上等だ!」


 壱闇が消えた。


 代わりに、俺の周りに闇が蠢く。


 これは、召喚の類だ。


夜屍鬼(よしき)!」


 前方に現れたのは、鬼。頼りない体に見えるが、そんなものは見せかけにすぎない。半不死身の体を持つ知能を持った獣がこいつの正体だ。


餓鬼(がき)!」


 右手側に現れたのは、また鬼。屍鬼が知能を持った獣だとするなら、こちらは本能を極大まで高めた存在。光さえ吞み込む化物。


魅姫(みき)!」


 対する左手側は、他の二人とは全く違った異質さ。美を象徴する姫の具現は、闇夜すら手玉にとるだろう怪しげな物の怪。


 これら三体はどれもシュヴァルツの力で生み出されたものだ。本来なら、その技だけで一生を誇れる技術だと思うが。


 努力を豪語するだけある。


 こんなもので終わるはずがなかった。


「茶番はもういらないだろう? 僕は出し惜しみをしない。最初から、いかせてもらう」


 そんな前置きをするあたり、人が良すぎる黒の戦士。しかし言葉に嘘はない。奴は本気だった。本気で、俺を殺すつもりだった。


「|六華葬宴夜屍鬼餓鬼魅姫りっかそうえんよしきがきみき


 辺りに蠢いていた闇が、今はもうちょっとした台風の如く地上を駆け回り、遂には空まで侵食していく。


 あっという間にここらは夜となった。天候とは違うが、自然そのものを変えてしまう巨大な力だ。


 それでも、目の前の変化には霞んで見える。昼が夜になったところで、今のシュヴァルツを前にすると関係ない。


 夜屍鬼を、餓鬼を、魅姫を。


 全てを一つにして、その身に取り込んだ最終形態。


 怖ろしく、美しくもあった。


「十七年の努力、素晴らしいな」


 だったら俺は、三ヶ月の努力と、十八年の天才で出来ている。



「こんなんだったか?

 六華葬宴夜屍鬼餓鬼魅姫」

「なっ……」

 

 俺の身体を闇が包んだ。背中には六枚の花弁のような物が。右手には餓鬼の腕。左手には夜屍鬼の細胞。体を守るように魅姫。


「……まあ、安心しろ」


 フッと俺から全てが消えた。


 本能と知性と心。


 満遍なく背負うには少々重い。


「どういうつもりなんだ。手を抜くのか」

「逆だ。俺は今から、俺が思う全力をぶつける。貴様は最強が好きなんだろう? 誰だって助けられるから、求めていたんだろう?

 だったら見せてやる。俺の最強で貴様のそれを斬り伏せてやろう」

「……面白い」


 シュヴァルツは吠えた。


「僕は二度と、負けられないんだ!」


 

 奴の全力が向かってくる。


 俺はそれをーー

◆後書き◆


戦闘つまらなくてすいません。

もう辛抱。

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