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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
一章 金の国編 マリーゴールド 「別れた哀しみ」は、膨れ、蕾となり、「絶望」の花を咲かしーーやがて枯れた
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金の墓標

◇◇◇◇◇


 “四の蟲”と“七の人”の継承者は、金の国の要として、城に待機(という予測)だから、ピスケスをグレイに任せるとして、マンカイーノをカレハナに任せるとして。


 俺は目の前の金の戦士三体と、後ろに控えた黒の戦士一体を片付ければいいのだが。


 難易度でいうと、インフェルノ? ヘル? まあ、それだけ難しいのだ。


 大体戦士級が何人もいるところでおかしい。普通なら名乗る暇もなく殺されてしまうだろう。……そう、普通なら。


 まあ! 俺は天才だからな!


「くっ……そ、気をつけろ! こいつ、俺たちの力を使いやがーー」

「フハハハッ! まずは、一体」

 

 足元の金の戦士の心臓を一突き。天身剣が今、一人を仕留めた。


 いやーしぶとい男だった。


 〝時は金なり!ゴールドエクスクラメーション〟なんていって、時間を金と等価交換していた。つまり、殺しても金貨二枚で蘇ったり、金貨一枚で体感時間を早めたり、30秒まで時間を戻したり……


 第二の人格があるのか、戦闘中には「金!金!金ェ!!」と叫んでいた。鬱陶しかったので一番最初に倒せて良かったと思う。



「さて、次の相手は誰だ? お前か? お前か? それとも後ろの奴か?

 誰でもいい。かかってこい。天才の前には誰もが等しく無力だという事を、その身を以て教えてやろう!」


 全身黒という怪しい格好の男のセリフ。向こうにはそれが、真性の悪にでも見えたのか、まるで人を魔王か何かのように怯えていた。


「ちょ、ちょっーとヤバくないです? ん、もしかしてこのセリフ、2度目?」

「何と邪気溢れる化物。こんなにも恐怖を感じるのはサタン以来か……これは我々二人でもちと難しいかもしれんのう」

「そんなぁ」



 小柄な金の戦士はすぐに弱音を吐く。だが、見てくれと言動に惑わされてはいけない。


 あの年季の入ってる金の戦士よりも、誰よりも、恐ろしい力を持っているのだ。



「本当にたまったもんじゃないですよぉ。でも、やんなきゃだめなんですよね。命令ですしー……それに、ちょーっとイラッとしてますし」


 あぁ分かる。久しぶりだその目。


 こいつ気にくわないという、不敵な目。敵はどうやら、俺の事が嫌いらしい。


 今その敵意は、純粋な力に変わる。



「地獄裁定金阿弥陀」



 金の光が地面に映し出される。それはやがて、一つの魔法陣に変わった。


 そして……


 時間と空間を超えて召喚される超生命体。智慧は正確無比に、それを遮る者はおらず、奴の前では皆、自ずと頭を垂れてしまうほど。


 ……その貌。


 仏というより、鬼に近い。



「成る程、俺に説教垂れるきか」

「油断は銅貨一枚にもならないって教わりましたからね。問答無用に、公正無私に終わらせます。

 さあ、裁きの時です金阿弥陀! あの男の罪に、贖罪を!」



 金の戦士の言葉で、金阿弥陀の両目がこちらを向いた。


 その目は穏やかなれど、ギロリと睨まれているような錯覚を覚える。


 それだけで奴は、俺の裁定とやらを終えたのだろう。静かに首を横に振った。



「金阿弥陀……?」

「申し訳ない主よ。私に、かの者を断罪する事は出来ませぬ」

「なっ……どうしてですか!?」



 おや、おかしいな。


 いつでも対処する準備は出来ていたのだが、内輪揉めか?


 ……まあいい。天才は天才らしく、堂々と構えていよう。



「貴方が、個人に肩入れするなんて」

「それは半分正しく、同時に間違いでもある。人は人を裁けるが、人でないものを真に推し量る事は出来ないのだ。故に私は、かの者の前では目が曇ってしまうだろう。そして何より……この結果は主の責任でもあるのだ」

「わ、私が?」

「……主の存在は、歪である」

「っ……」


 思い当たる節があるのだろう。というか、簡単だ。


 目の前の奴らは皆、死んでいるのだから。生き返るなどと、本来許されない。



「何事も例外はあるもの。だが、主のそれは……許せるものではない」


 いや、許したくない。


 と、その力は本音を語った。


 小柄な金の戦士は理解し、納得して、憑き物が落ちたように晴れやかな顔となった。


「そっか、私こそ、裁かれるべきなんですね。もしかして、怒ってくれてるんです?」

「……その問いに答える必要性を感じえず。では、主よ。極楽浄土でまた逢おう」


 判決が下された。


 小柄な金の戦士は、その身を光に変えて消えて逝く。


 残った金阿弥陀も、最後に俺を複雑そうな目で見て、結局何も言わずに消えてしまった。


 最後の一人となった金の戦士が、納得のいかぬ様子で腕を組んでいた。



「……つまり、何もしておらぬではないか」


 無粋な。


「ハーハッハッハ! ……計画通りだ」

「くぅ、やはり天才なのかっ!?」


 アホめが。簡単に信じよった。


「さて、最後通告だ金の戦士。いや、蘇りの亡霊よ。貴様に欠片たりとも誇りがあるのならーー自害しろ」

「なんだと?」

「他人に死を弄ばれるというのなら、せめて自分自身で死に様を選べ。このまま操り人形の如く俺に跪きたいのなら構わん。好きにすればいいが」

「……それが出来るのなら、我はとっくにしている。しかしこの体は、あの小僧めにーー」

「それら既に、俺が解放した」

「なっ……やはり天才か!?」



 もうその反応でいいから。あまり持ち上げすぎると逆にイラっとするから。俺という人間は全く面倒くさい性格をしていると理解してほしい。



 さっさと終わって欲しい。


 ……そう思ったのは、きっと嘘だ。


 何故なら俺は、終わらせたいのならさっさとそうする事が出来ていたのだから。マンカイーの能力を模倣した時に、こいつらを元の骨に還す事は簡単だったのだから。



「むう、確かに。忌々しい呪縛が消えておる。恩ができたな黒の戦士」

「アリスだ。……それで、金の戦士。それならそうと、何故お前はまだ、この俺に剣向けている」

「選んだのだよ」

「ほう、そんなに跪きたいか」

「いやーー」


 まだ俺とやる気だった。


 勝率など無いに等しいとしても、目の前の男は、逃げる事だけはしなかった。



「我が選んだのは、生き様だ!」



 その男は真っ直ぐこちらに向かってきた。身体能力を上げるという、たったそれだけの力と同じように。直向きに。


 天身剣をぶつける。


 大地が割れた。


 ーー勝負は、始まったばかりだ。

◆後書き◆

少し展開が遅いですが、もうしばらく我慢ください

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