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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
一章 金の国編 マリーゴールド 「別れた哀しみ」は、膨れ、蕾となり、「絶望」の花を咲かしーーやがて枯れた
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名前も明かされない奴はつまりそういう事

◇◇◇◇◇


「その毒々しい黒の服装。落ち着いた振る舞い。もしかしなくとも君は……君が黒の戦士だね。いや、どうしてここが、なんて言わないよ。分かってる。僕は知っている。

 彼女だね? ああやはり素晴らしい。聡明な淑女というのは何て魅力的なんだろう。なあ、君もそう思わないかい? いや実を言うとね、この僕が恋した人間というのは、彼女だけなんだよ。そりゃあ僕は王家さ。とても実のあるある縁談が舞い込む。おっと、誤解しないでくれ。何も自慢をしようとしているわけじゃないんだ。自慢じゃなくてこれは……事実。一つの事実として、僕はどんな女性にも記憶に残る事はなかった。

 その理由としては、妹という身近にいた女性が他を圧倒させるほどの美を兼ね備えていたからという、嬉しいのか嬉しくないのか分からない事もあるにはあるのだろうが、けれどそんな時に僕は彼女を知った。

 今でも思い出せるよ……世界会議……誰よりも幼く、誰よりも美しい彼女。神を憎いと思ったのはその時さ。

 おお神よ、どうして貴方は多くの女性を塵芥にしてしまうのでしょうか! ってね。僕は国の代表である戦士でも王でも無かったから、世界会議が終わってすぐに彼女のもとへ……ああ視力は良い方なんだよ。というか、他の誰であっても、彼女の美を見つけられないなんて事はないだろうけど。まあーー」


 ロリコンがうるさい。


 その時のサクヤは……今が14くらい(※女性の歳だ。明確に答えるのは敢えて避けておく)だから……8?


 こいつ頭おかしい。


 うるさいのに結構気になる内容だから余計に腹が立つ。



「もういいだろう金の戦士。俺たちはここへ何しに来た?」

「ん……そうか。そうだね。君はここへ、僕を止めに来た」

「……」


 何も答えずにいると。


 それを肯定ととったのか、金の戦士は金のマントをはためかせながら言った。


 一々行動に動きのある奴だ。


「残念だったね黒の戦士! 君では僕を止められない。今の僕は誰にも止められない!

 さあ“蘇れ” 戦士達よ!」



 辺りに骨をばら撒いた金の戦士に応えるように、奴の周りに魔法陣が浮かび上がる。


 儀式魔法に近いその力は、対象の半分以上の骨があるのならば、際限なく蘇らせる事が出来る。動く死体は元の骨に還すも、何をするも命令出来る。


 ーー俺に立ちはだかるのは金ピカが6体に真っ黒が1体。


 保存状態が良好だったんだろうなぁ。



「悪いが全力で叩きつぶさせてもらうよ。僕にはやるべき事があるからね。

 さあ君達、目の前の黒の戦士を殺してくれ。終わったらさっさと、僕のところへ帰ってくるんだぞ」



 金の戦士はそう言うと、俺を素通りして黒の国へ向かおうとした。


 止めようとしたが、他の金の戦士に阻まれる。そいつをどかしても、また他の金の戦士に阻まれる。


 動きたいけど動けない。そんな状況を見て、マンカイーノは手を振りながら嘲笑った。


「さよなら黒の戦士! でも安心してくれていいよ。彼女は君如きがこの僕を止められない事など百も承知で、きっと他の誰かを寄越してくれているだろうからさ。

 ま! その全てを僕は超えて行くけどね! そう、恋する男の前に、愛した女性以外は無意味なのさ!」



 ここまで来るともう面白い。

 

 高笑いをしながら去っていく金の戦士。俺は結局無視をした。


 ……ま、あれだ。


 一方通行の恋など、所詮そこまでらしい。何が言いたいのかというと……ここまで全て、サクヤの言う通り、という事だ。



◇◇◇◇◇


『ーー了解した。絶対的な自信を持って迎えてやるよ』


『いえ待ってください』


『……おい。今の俺が格好つけた部分。どしてくれる』

『後で相手しますから、アリスもちょっとだけ待っていてください』

『……』


 黙らされたアリスは、子供扱いをされた事に怒ればいいのか悲しめばいいのか分からなかった為、遠い目をしながら一歩下がる。一歩さがて、クスクスと堪えきれない笑みをこぼしているアースンの横腹を突くに留めた。アースンが突き返した。アリスが突き返し返した。不毛な戦いが始まった。


 ーーカレハナは、サクヤの目を真正面から見つめ返す。


 アリスは気にしていないが、サクヤが力を行使している時の目は、通常よりもずっと冷たい。何の感情も宿していないというより、全てごった混ぜにしたような目。


 黒い目。


 その目は今、カレハナに向けられている。


『聞こうカレハナ』

『ありがとうございます。僭越ながらーーマンカイーノ・マリーゴールドは、私が相手をさせて頂きたいのです』

『それは』


 マンカイーノ・マリーゴールド。カレハナ・マリーゴールド。兄と妹。復讐相手。過去。


 サクヤは一瞬で思考した。


『覚悟は出来ておるのか? と、聞くのは無粋だな。分かった。好きにしろ』


 そんな事を言ってるものの。


 彼女の頭の中では既に、結末を迎えている。損得勘定を済ませたが故の言葉なのだ。


 だから……



『ありがとうございます』



 カレハナの言葉に思わず顔を顰める。


 お礼など、逆に辛いだけであった。


◇◇◇◇◇


 だから結局、魚の継承者にグレイ。金の戦士にカレハナと、戦争と呼ぶのを躊躇われる個人戦になった。


 まあ、今更だ。


 大体黒の国の人間に、チーム戦が出来るかと聞かれればそれは否だ。出来たように見えてそれは個と個の強さ。元来の性格により、黒の国の人間は元々個人戦が得意なのだ。


 しかし……


 もしも黒と手を組んで戦うとなれば、そんな事があるとすれば片方はきっと……黒ではない、別の色。


 混ざって汚れるか、はたまた鮮やかな色彩を見せてくれるのか、少し楽しみではあるものの。


 今は目の前の事に集中しよう。



「操られるとは不快だが、致し方ない。敗北は更なる不服。

 貴様ら、俺に合わせろ」


 金の戦士の中でも特に歳をとった男性が、偉そうに大剣を構える。


 だが、そんな事が罷り通るほど、奴らは互いを信用していなかった。


 男性の言葉に素直に従わない若い女が、レイピアの鋒を向けながら言い放つ。


「これだから男というものは気にくわんのだ。何でもかんでも自分勝手に気ままに偉そうに。全く、よくもそんな態度で金の戦士になれたものだな」

「何? 貴様、俺をーー」

「ちょっと二人共、口喧嘩は後で……」



 二人の間を取ろうとする者は、とても顔が整っており中性的で、男か女かわからない程であったが。


 そいつも含めて計、三人。


 俺から目を逸らした数。そして、最初の犠牲者となる数だった。



金滅斬(きんめっき)



 薄く、重い、一撃。


 俺の手から放たれたそれを避ける事が出来たのは、他の四人だけだった。


 あの三人は、目を見開きながら自分とお別れした下半身を見つめるしかなかった。ただ1人、偉そうな男性は「これ、は、俺の」とまで吐き出したが間も無く息絶えた。


 それと同時に、俺が模倣した力も使えなくなる。最後に目障りだった三人の死体を金の欠片に変える事に成功したので上々だ。本音を言えば、この便利な力は最後までとっておきたかったが、敵に使われるのこそ厄介なので、そこまで贅沢は言わない。


 それよりも生き残った者は、はっきりこちらを敵と認識したらしい。


 黒の戦士は1人後ろに下がっているが、金の戦士三人が前に出た。もう油断も隙もない。ちゃんとした戦士だ。



「ちょっと、あいつヤバくないです?」

「いや、戦というのはこういうものだ。一瞬の隙が命取りとなる。そこは我々も例外ではない」

「なるほど勉強になるな。つまり死んだ奴らは死んでる間に怠けてしまったと……おや、俺は何を言っているんだ?」

「はは、面白いです」



 金の戦士達は今、時を越えて共闘を果たす。それが死者の戯れでなければ俺も素直に面白いと思えたのだろうが。


 死んだならば死んだで大人しく、このまま還ってもらおう。


 ここから先、誰一人通すわけにはいかないのだ。妹と兄の再会……羨ましく、嫉妬してしまうが、だからこそ邪魔をさせないと己に誓った。



「いくぞ天身剣」


 剣に魔力を通す。そうすればそうするだけ硬くなる剣だが、今は魔力に染まり、黒に染まった。


 

「聞け! 死者の貴様らに殺すなどとは言わん。束縛された貴様らに止めろとも言わん。

 だが宣言しよう! 俺は全力を以って貴様らの相手をすると!」


 生意気な態度だと思ったのだろう。金の戦士は、冷や汗を出しながら言った。


「四対一で勝てると思ってるです?」



 その問いには、自信満々に答えてやった。



「おいおい、俺を誰だと思っている?」



 負けるはずがないだろう。



「俺は黒の戦士、アリス。天才だ」


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