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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
一章 金の国編 マリーゴールド 「別れた哀しみ」は、膨れ、蕾となり、「絶望」の花を咲かしーーやがて枯れた
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水汚す灰溶かす水

◇◇◇◇◇


 魚の継承者ピスケスは、川の上流に潜んでいた。全ては沈黙姫の指示に従い、そこから城を直接狙う為に。


 距離はおよそ10キロ以上離れている。普通ならば当たるどころか掠るどころか届かない程でもーーもう一つそこに加えなければいけない要素があるとすればーー継承者は普通ではない。



「〈ホロスコープ〉:【ピスケス】」



 南中、ピスケスが唱えた。


 それは継承者とは関係のない、十二の枠。モチツキ家の力。


 ーー理が魚を解すと……


 川の水が蠢いた。


 揺らぎ絡まり形を成して、それは円錐形の型を取る。



世界視配(アクアリウム)



 モチツキ家しか知らない特殊な技術。水に映る情報体を繋げて合わせて、あたかも世界を一つの箱庭のように捉える儀式魔法。


 今、ピスケスの前にははっきりと黒の国の城が映ってある。彼女はここから、その城へと狙撃をするつもりだった。


 もしもこれが成功したならば、黒の国は見えない敵からの攻めを一方的に守らなければならない事になっていただろう。



 ーーだが、アクアリウムの映像に、灰色が映り込んだ。


 数珠つなぎのように繋げられた情報体は、そのどこかに別の何かが挟まるだけで崩れてしまう。故に彼女は、邪魔が入らないよう念入りに気をつけていたのだが。


 すっかり濁ってしまったアクアリウムから顔を上げて、ピスケスは前を見た。


 そこには……


「一匹狼が、こんな所までお散歩ですか」

「へっくしゅ」

「……」

「……」


 

 灰色の男が、気怠げに剣を握っていた。



「あぁ……面倒だ。面倒だが、仕方ない。なあ、そうだろ? 任されてしまったからにはな。仕方ない」

「……何を言ってるのかも、どうしてここが分かったのかも知りませんが、今日は容赦が出来ません。お仲間もいないみたいですし、昨日が泡沫の幻想であった事を教えてあげましょう!」


 ピスケスは唱える。



「私は此処に アクアハート!」



 それは水の塊。球の形をして、幾つも空中にばら撒かれた。そして時が止まったかのように、その場で留まる。


 自分の周りの水を操る力だが、ただそこに水を置くだけならば容易いものだ。



 額から角を生やした灰色の男グレイは、ため息をつきながら、辺りに浮かぶ水と自分の体調を確認する。



「なるほど、地の利はそちらにあり、俺は風邪気味だと。ふむ……つまりーー丁度良いハンデか」


 本音かどうか分からないが。


 例えグレイが全てにおいて不利だとしても、彼は決して、弱音を吐いたりしないだろう事は確かだった。


◇◇◇◇◇


 ーー時は遡り、黒の国。


 日を跨いですぐに……つまり、アリス達にとってはお風呂上りに、皆がサクヤの仕事部屋へと集めさせられた。


 何を隠そう、作戦会議である。


『明日、ですか?』


 カレハナが思わず聞き返した。それも当たり前だ。


 明日から金の国が戦争を仕掛けるとなれば、今度こそ隠すことのできない盟約違反。真っ向から他四ヶ国にも喧嘩を売ってる事になる。幾ら自信過剰の兄でもそんな……そんな……………よく考えればあまり不思議ではなかったかもしれない。



『詳しい事は全てが終わってから話そう。時間がないからな。

 だが、これだけは言わせてほしい。私はさっきまでずっと思考を繰り返していたが、その八割以上が “明日” だと結論付けた。もちろん完全に信じろとはーー』


『信じる』



 遮るように宣言したのは、黒の戦士アリス。事実上サクヤの婚約者。


『アリス……』

『信じる。だから指示を頼む』

『……分かった。ならまずーーグレイ』



 サクヤはグレイの方を向こうとして……この部屋にいない事に気づく。



『おや、グレイはどうした? アースン、私は確かにあいつも頼んだはずだが』

『なんかー、まだ反省してますよ。あの様子だと、実際に裸見てたら両目潰してたかもしれませんね』

『……なら伝えてくれ。朝、もしくは昼。魚の継承者が川から……恐らく上流の、ここから約10キロは離れたところから攻め込んでくる。任せた。と』

『ほぇ……10キロ』

『これは私だけの推測ではない。実際にアリスが奴の力を確認し、そこから導き出されているほぼ確定された未来だ。これだけは私も、自信を持って断言出来る』



 サクヤはアリスを横目に見ながらそう言った。アリスも見つめ返した。


 2人だけの世界に、アースンは冗談のようにベーっと舌を出して答える。


『わっかりましたよ。黒の戦士様もとなれば

疑う余地はないですもんねー』

『ん、頼む。では次に……アリス。やはり黒の戦士には、金の戦士の相手をしてもらいたい』


 金の戦士、という言葉にカレハナが反応したが、敢えてアリスは無視をした。


『分かった。どこに行けばいい』

『それは……真正面、であろうな。あの男の考えそうな事だ。堂々と向かってくるに違いない。金の国と黒の国を結んだ道が、奴にとっては栄光の道だと信じて疑ってないだろう。

 だから頼んだぞアリス。私が間違ってないのなら奴は一人。絶対的な自信を持って向かってくるだろうからーー』


『ーー了解した。絶対的な自信を持って迎えてやるよ』


◇◇◇◇◇

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