とんだチェリーボーイだぜこいつぁ
◇◇◇◇◇
「待ってろよ」
襲いかかるサクヤを抑えて、その身体状態をそのまま模倣した。
「くっ……」
体が熱い。
芯から熱されているようだ。
ボーッとする。
いかんいかん、これではただの獣だ。
理性を働かせろ。
……そうだ。魔法には魔素が必要だ。そして俺の体の中には魔素がある。加えてデスオとの戦いで身につけた生きようとする力が、媚薬という毒素の抗体を作り出す。
医療魔法、といったところか。
魔力で身体を活性化させる、回復魔法で表面の傷を治すここの世界の人間では、到底扱いきれない技術だろう。
……ふぅ。
完璧だ。
パーフェクトアリスだ。
媚薬の効果は抜けて、抗体を作り出す事にも成功した。
天才だ。
「アリスぅ……」
おっと、そうだった。
俺はサクヤの口に指を近づけた。サクヤは一瞬の逡巡の内、パクリと咥える。舌が指を這う。唾液が絡みつく。
俺の指は飴にでもなってしまったのか?
「ぁん……んむ……」
ちゅぷ……っと。
艶かしい音。
だらしの無い笑みをサクヤが見せる。不覚にもドキリ。
あれ、おかしいな。媚薬の効果は完全に取り除いたはずなんだが。
このままではいけない。
すぐに抗体を魔力と同化させて、指から放出する。サクヤは知ってから知らずか、無我夢中に取り込む。
ちゅう、ちゅぅ……ちゅぱっ、ぁんむ………ちゅぽん。ぅぅん……? ちゅぱ…………………ちゅ…………………………………………………………………………………………………………………………………
ーー効果が表れたようだ。
「あ、ああ、アリス……」
「俺はあまりそういう勢いやノリでやるのが好きじゃない」
「うん」
「もちろん時と場合にもよるが、なあなあで済ませるのは気にくわない。だから……また、いつかな」
「うん」
媚薬の名残か、とても素直だった。
さて、これ以上は逆上せてしまう。
俺たちは浴衣に似ているあっさりとした服を着て風呂場を出た。そして、信じられないものを目にする。
廊下に……
腰にタオル一枚の姿で、グレイが正座をしていたのだ。
笑えばいいのか?
笑ってやればいいのか?
隣に濡らした髪をタオルで拭う、カレハナとウサギが来た。カレハナのツンとした顔から、こいつが原因だと察した。
「何故こんな面白い事に?」
「そいつがお風呂に入ろうとしてきやがりましたので」
「そりゃあ、来るだろう。そっちは男湯なんだぞ? もしかしたら知らないだろうが、グレイも男なんだぞ?」
「……まあ、勢いで」
「ついカッとなったのか」
「後悔はしてません」
この様子だと反省もしていないようだ。
目を閉じ身体を動かさず、ただ正座をしているグレイを見て少しは同情したが……グレイだからな。勝手にすればいい。
ーー結局、グレイはそのまま夜を明かしたようだ。全く変に律儀な奴だった。
◇オマケ◇
灰色の男「解せん」




