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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
一章 金の国編 マリーゴールド 「別れた哀しみ」は、膨れ、蕾となり、「絶望」の花を咲かしーーやがて枯れた
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金キラ金にさりげなく

◇◇◇◇◇


 一応、ウサギは捕虜という扱いだ。捕虜といっても、特別な拘束はない。ただ、俺が傍にいる事が条件だ。


 白いモチは意外な事に、メイドが解決してくれた。メイドといってもメイドの中のメイドの大ベテラン、メイド長のメイクンである。


 ーーこれで一応、今後関わりのありそうなメイドは全員紹介出来たな。握手のアースンに、小動物のマホン。それからメイド長のメイクンと、後は城の中で常にサクヤの傍にいるフライン。フラインは秘密通路で護衛をしているので姿を見せない。メイドというより忍者だ。俺も直接的な関わりはないが、ちょっと意識を向ければ、サクヤに触れようとしただけで飛んでくる殺気が分かる。


 ん? 何の話だったか……そうそう、メイクンさんだ。メイクンさんは当たり前のように、白いモチをグレイや馬から取ってくれた。


 サクヤが方法を聞くと……


「これは、汚れです」

「ふむふむ」

「汚れはお掃除しなければなりません」

「そうであろうな」

「僭越ながら申し上げますと、私、お掃除は得意です」

「もちろん、知っておる」


「以上です」


「……ふむん」


 要領を得ないので、今度は俺が質問をした。帰ってきた有力な答えを紹介しよう。



「その白い物を、掃除しただけです」

「……? お掃除をしたまでです」

「実を言うと、スッキリしました。私、お掃除は好きですから」



 この頃分かってきた事だが、どうも黒の国の人間は、コミニュケーション能力が欠如しているように思われる。皆、自分だけの世界で生きているようだ。なるほど俺もか。



 ーーさて、この俺が理解した結果、メイド長のメイクンはそれを「汚れ」だと認識したならば、「掃除」をして「排除」する事が出来るらしいと判明した。実際に出来ているのだから、そこに疑問は不要である。


 これまたメイドのカレハナに、同じ事はできるのか聞いてみると。



「出来るわけないじゃないですか」



 流石はメイド長。


 ショコラの怪我もすっかり回復させて、これから金の国に行っても良いのだが、外は暗い。


 サクヤは今日これから出発して、他にあるかもしれないトラップに引っかかるのも業腹だと却下した。モチモチトラップに引っかかったせいで、こちらの行動を蟲にも知られているだろうから、もうスタートダッシュは切れないと。それに……



「兎がこちらにいる。待っていてれば、いずれ向こうから来るであろう」



 他ならぬ輝夜姫(サクヤ)の言葉だ。反対はしない。



「アリスも、休める時に休んでくれ」


 他ならぬ、サクヤの言葉だ。反対はしない。


「何なら今から、迷宮に篭ってもいいがな」


 他ならぬグレイの言葉だ……断固反対してやった!


◇◇◇◇◇


 自分の部屋に入ると、まず最初に懐かしさを感じる。そこまでここにいた期間が長いわけでもないのにな。


 おぉ、そうそう、こんな場所だった。歴史を感じる家具達。3ヶ月もの間空けていたのに、埃一つ見当たらないとは、奇跡。



「まるで俺の帰りを歓迎しているようではないか!」


「はいはい、分かりました。

 ウサギ、この人は放っておいていいから。貴女は好きな所で休みなさい」

「ああ、うん……」



 カレハナとウサギは、金の国の生まれ同士。だが、カレハナは見捨てられた。もしかしたら……と。


 俺が最も懸念していた事態は起こらなかった。むしろ、カレハナは今のように、ウサギの世話を甲斐甲斐しくしている。


 大人だな。


 

「よし、俺はここ」



 部屋に人間が複数人いる時は、それはもう陣取り合戦である。


 俺はベッドで寝転んだ。


「ならば私はここで」


 カレハナは近くの椅子に座った。ロッキングチェアだ。ロッキングチェアが分からない奴は、「揺れる」「優雅」「椅子」で想像してくれればいい。



「え、っと、私は……私は?」


 まだこの部屋のルールをよく知らないウサギは、1人戸惑う。


 いや、ルールなんてないんだが。初めての部屋というのは、気を使うものだろう。


 ウサギの戸惑いは、当然の事でーー



「私はここでいいな!」


 訂正しよう。ウサギに常識なんてなかった。こいつは遠慮していたのではなく、探していただけであった。つまり、自分が最も落ち着ける場所を。陣を。


 そして見つけたーーベッドの下!


 床とベッドの隙間など、本当にギリギリ人が1人入られるくらいだ。そこをウサギは器用に入り込み、俺たちの定位置は完成する。



 明らかに1人おかしいが、この際どうだっていい。むしろ俺の側にいるというのだから、案外これが最適なのかもしれない。


「ふぅー、落ち着くぅ」


 下からそんな言葉が聞こえてきた。そりゃよかったな。逆に、俺はベッドの下が気になって仕方がない。


 しかし、今更どけというのも何である。俺は一旦そこから意識を逸らし、カレハナへと目を向けた。


 そいつはいつの間にか、紅茶を飲んでいた。……おかしい。こいつも一応、俺の付き人で、メイドという設定だぞ?



「しかし解せませんね」


 カレハナはどこからともなくフィナンシェを取り出し、紅茶と一緒に胃へと送り込みながら、そんなことを言った。


 解せぬは俺のセリフだ。


「何が解せんのだ……俺にもくれ」

「蟲の、または金の国の意図ですよ……すみませんこれが最後の一つです」

「黒の国に喧嘩を売った事か? それはあれだろ。お前の兄が、サクヤを愛してるとかそんな理由だっただろう……だからくれと言っている」

「知ってたんですねーーつまり兄は、黒の国に勝てると思った。以前に比べ、確実に戦力を減らしたはずの金の国が? まさか姉さんを解放するなんて考えてたり……だからあげられないと察してください」

「新しい金の戦士、まあそれもマンカイーノらしいが、そいつが強いんじゃないか? というか、ウサギに聞けばいい……もういい」



 フィナンシェは諦めた。と思ったら、空からマフィンが降ってきた。


 安心してくれ。俺は正常だ。


 空というか、天井からだが。だから天井からマフィンが降ってきたのだが。


 え、俺は正常、だよな?



「わ、私に聞くのか!? ダメだぞ! そんな事、言えない!」

「どうして?」

「どうしてって……だって……というか、姫様もそんな、金の国の事とか言ったらダメだろう。裏切りは、良くない」


「先に裏切ったのは、あなた達だけど」


「っ……」




 不穏な空気が流れている気がする。しかし今の俺は、天井から次々に送られるスイーツの対処に迫られている。


 えっと、このケーキはこっちにおいて、クッキーはこっちで……おい! ベッドが汚れる!


 もはや嫌がらせに近いほどの量だが、多分これ、善意のつもりなんだろう。だって時々、ハートマーク付きでデコレーションされている。


 黒の戦士様と、黒の着色料で。


 ーー俺と面識がなく、だというのに黒の戦士というだけで好意的な態度といけば、思い当たるはメイドしかいない。


 ……フライン貴様か!



「そ、それは……ごめんなさい」

「貴女が謝る必要なんてないですよ。私も、あれが必要な処置だった事くらいは分かってますから。

 だからこそ私はもう、マリーゴールドじゃない。2度と姫様なんて呼ばないでくださいね」

「……うん」

「わかってくれて嬉しいです。ところでウサギ、さっさと現時点における金の国の戦力を教えて。まさか元姫様の願いを断るつもりじゃありませんよね」

「卑怯だ!? 今の話って多分、もう姫とか関係ないって事じゃないのか!」

「ちっ……以前の貴女なら何の疑いもなく答えてくれたはずなのに……アリス! 何を遊んでいるんですか。貴方も手伝ってください」



 俺の周りには、たくさんのスイーツ共が積まれている。


 器用にも先ほど、ティーポットとコップが危なげなく落ちてきたので、俺もカレハナに習って午後のおやつ時を楽しむ事にした。何たって3時だしな。3時といえばおやつの時間だ。ベッドの上というのが行儀悪いが、偶にはいいだろう。


 ……で、何の話をしていたんだろうこの2人。とりあえず、ウサギを説得すればいいんだよな?


 簡単すぎる。


 甘々すぎる。


 例え俺が、天才でなくとも。



「なあウサギ、よーく考えてみろ。俺たちはいずれ戦う。戦う時には戦力なんてすぐに知られる。

 そこに、ここで知るのとどう大差ある? どうせ時間が経てば分かるんだ。むしろ、今ウサギが教えてくれれば、先の用を済ませる分得じゃないか!」



「……ほんとだ!? そっかー、アリスって本当に賢いんだな!」


「まあな」


 こいつの将来が心配だ。いずれ、本格的に教育を施してやろう。



「んーとな、マンカイーノさんは強いぞ。強い。私なんて絶対に敵わない」

「そこまでか」

「ああ! マンカイーノさんが戦えば、どんな国だってへっちゃらだ!」

「黒の国もか」

「黒の黒だってボッコボコの、ギッタン……バッタンで…………ぅん 」



 ベッドの下は見えないが、酷くブルーな状態な事くらい分かった。



「どんな力を持ってるんです?」

「……私も、よく分かんないけど、とっても恐ろし力だった。冷たくて、悲しくて、1人じゃないのに、独りなんだ」

「あの、ウサギ? そんな難しい事は言わないでいいですよ。貴女なんですから。もっと単純に、いつも通りお願いします」



 何気にひどいカレハナであった。



「ーー死者を、操るんだ」


「ふむ……ネクロマンサーか」

「お披露目の時は、歴代金の戦士達を呼んでたぞ」



 歴代金の戦士、達。


 それは、一国につき戦士1人という概念を大きく崩すような、とんでもない力だ。



「確か……先代黒の戦士もいたような」



 ウサギが新たな情報を言ったその直後、ガタッと扉から音がして、同時に天井にいたフラインの気配も遠ざかる。


 聞き耳立てていたサクヤが、どこかへ行ったのだろう。



「な、何だ。誰かいたのか?」

「気にするな。それより、これでやけに金の国が自信満々な理由は判明した。金の戦士の力を信きっているのだろう」



 加えて継承者。身体能力が素晴らしい二の兎。水を操るらしい六の魚。人間最強と謳われる七の人。


 それと……四の蟲か。


 あ、蟲の事も、ウサギに聞けばいい。

◆後書き◆


ギニャー! スットク無くなった!

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