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色惑う 黒の戦士  作者: watausagi
一章 金の国編 マリーゴールド 「別れた哀しみ」は、膨れ、蕾となり、「絶望」の花を咲かしーーやがて枯れた
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揺れる気持ちは虹色景色

◇◇◇◇◇


 ゲロゲ〜ロ キュルキュルキュル

 ギュー、ギュー クギュー

 


 カエルが鳴く。それはあたかも、空からの恵みに感謝をしているようだった。


 ……ま、ああいう生物の事実は大抵、メスへの呼びかけなんだがな。



 ーーあれから少し経って、灰色の空から雨が降り出し、俺たちは急遽雨宿りの為、近くにあった洞窟へと移動した。



「ひとまず、ここで雨風を凌ぐか」



 せっかく火で乾かした服を濡らしてはたまらない。腹は膨れているし、ゆっくり休もう。

 早く城に帰りたい気持ちもあるが、ウサギを連れて戻るにそれは難しい。モチはどうして、一向に剥がれる気配がない。


 兎にも角にも、雨が終わるまで、俺たちは何も出来ない。



「いつ止むのやら……」


 空は未だ、濁った色に染まっている。例えるならこれはーーウサギの心境。



「……」


 面倒な事に、ウサギはあれからずっと塞ぎ込んでしまっている。


 どうしたものか。


 いや、問題は、ウサギがどうしたいかだ。


 俺をここで捕らえるか? いいだろう。返り討ちにしてやる。

 優柔不断のまま何もしないでいるか? いいだろう。それもまた、選択だ。


 それで、お前はどちらを選ぶ?



「……帰る」



 しばしの逡巡。ウサギは、洞窟の外を見て、そんな事を言った。しかしそれは、俺が最も叶えさせる事のできない選択であった。



「無理だな」

「……どして?」

「今のお前では、1人で帰る事は難しい。だからと言って俺が付いていくには、金の国は危険すぎる」

「だから、金の国は」

「なあウサギ」


 物分りの悪い奴は嫌いだ。現実を直視しない奴は、もっと。



「俺はなあ、天才だ」



 いきなりの宣言に、兎は目を丸くして、1人納得した。「ああ、そうか、変人だった」みたいな、そんな反応だった。


 おい。



「いいか、俺は、天才だ。それも至高の天才だ。だがな……ただの天才になっていた可能性もあった。何の変哲もない一般人になっていたかもしれない。平凡な高校生のまま人生を迎えたかもしれない。

 お前はどうだ? お前は兎の継承者で、金の国に仕える者だ。でーーそれだけか? お前の人生、その程度か?」



 そんなはずはない。生きる上で道とは、幾つもの分岐点がある。どこを進むか、曲がるか、はたまた戻るか……それは自分次第なのだ。


 俺ならその場で飛行機でも作って、悠々不敵に空から地上を眺めて、迂曲左折に余裕にゴールを目指すがな。



「1人の人間として生まれた。1人の女として生まれた。だったら、楽しみようは色々あるはずだ。もっと、自由に生きても、損はしないと思うがな」



 俺の言葉は、ウサギに通じたのか……


 気づけば雨は激しくなっている。これなら一眠りしてもいいかもしれない。


 ん? 大体、何故ここまで他人の面倒を見てやらなければならないんだ? 一度命を救ったからには勝手に投げ出したりはしないが、だからといって、メンタルケアまでサービスしてやるほど、俺は安くないんだぞ。



「俺は寝る。お前も、すこし寝ろ」



 返事はなかった。


 知った事か。


 ……金と栄光の国、ゴールドグローリー。落ちぶれた誇りには、纏わりつく錆のように過去が縛り付けられている。ウサギの態度はまたどこか違った所によるものと思うが……根底は変わらない。




 ーー目が覚める。



 やはりというか、何というか、目の前からウサギが消えていた。ただ地面には、「帰る」とだけ書き置きをして。

 


◇◇◇◇◇


 居場所はすぐに判明した。簡単だった。地面に擦り付けられたあとを辿ると、すぐに見つけられる。


 道中、魔物の死体があったのは、その格好だというのに、身を守りきったからだろう。だが、不運な事に、それなりの敵と遭遇してしまったらしい。普段ならワンパンならぬ、ワンキックで終わる所を、今の彼女は逆にサッカーボールの如し蹴られ蹴られて、受け身を取るのが精一杯のようだ。


 狩りではなく、ただの遊びという行為にイラっとして、ムカついて、その魔物はどこか遠くに俺が蹴り飛ばした。


 ヒュー、場外ホームラン。……あれ、今はサッカーだっけ?


 と、今はこいつだな。


 泥んこまみれで、体を汚して。挙げ句の果てに、涙で顔もぐしゃぐしゃだ。



「全く、情けない」


 

 それでいて世話のかかるとは、本当にどうしようもない。


 俺はモチにぶつからないよう、慎重にウサギを持ち上げ肩を貸した。ウサギはまだ、泣いていた。



「うぐっ……なんで、なんで」


 女の嗚咽など、聞いてて気持ちの良いものでもない。



「私にっ……優しくしないでくれ」



 結構優しくしていないが。

 ウサギの訴えは、聞いてやろう。



「非道く、乱暴にしてくれたら……私は楽なのにっ。なんで優しくするんだ……! 黒の国は、敵なんだろっ!?」


 敵か否かと聞かれたならば、敵だろう。これから戦争をする国が、味方のはずがない。けれどーー



「私は……私はぁ!」


 ーー俺は、1度たりとも、お前を敵と見たことはないんだぞ。少なくとも今は。今だけは。


 


 しばらく、ウサギは空に叫び続けた。雨が止むまで、そうした。


 空はすっかり晴れてしまったが……ウサギのどうなのだろう。


 お前の心に、虹は見えるか?



◇オマケ◇


兎「ちょっと何言ってるか分かんない」

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