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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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対峙する二人と

翌日の夜、康太と文は晴と明を連れて三鳥高校にやってきていた。魔術師装束に身を包んだ四人が学校の敷地内に入ると、康太はその視線に気づく。


少し遅れて文が、そして晴と明がそれぞれ索敵でその人物の姿を確認していた。


「やる気十分って感じだな・・・トール君、準備はいいか?」


「いつでもいいっすよ・・・そいつが昨日話した奴ですか・・・おい、お前名前は?」


土御門の片割れ、男らしい体格である晴のほうをすぐに見た船越は仮面越しに晴をにらむ。


そういえばまだ名乗ってすらいなかったということを晴は思い出すが、すぐに名乗るようなことはしなかった。


「人に名前を聞くときは自分から名乗るって知らないのか?お前から名乗れ・・・」


「・・・てめぇ・・・」


「はいはいそこまで。始まってもいないのに何でそんなに喧嘩腰なのよ・・・ちょっとビー、紹介くらいしておきなさいよ」


「悪い、でも名前教えるとばれる可能性あったからな・・・特にこいつらの場合」


土御門という名前から京都の四法都連盟の人間であると知ることは不可能ではない。互いに互いの情報をほとんど知らない状態で戦っておく必要があると感じたために康太はあえて名前を教えなかったのだ。


「・・・はぁ・・・仕方ないわね・・・トール君、こっちは土御門の『ハレ』そっちのは『メイ』よ」


「・・・あ?本名っすか?」


「本名じゃないわ、それが術師名なの。二人は関西の出身でね、そっちのほうの風習でこういう形をとってるのよ」


ほとんど本名に近いその術師名に、船越は納得していないようだったが渋々了承していた。


少なくとも他人の術師名についてとやかく言うつもりはない。


名前が本質を表すというわけではないのだ。戦う相手を名前で判断するようなことは船越はしなかった。


「で、二人とも、こっちのがうちの一年生『トール・オール』君よ。日をまたいで二人とも戦ってもらうからそのつもりで」


「よろしくお願いします」


明が当たり前のように頭を下げ挨拶するが、すでに船越の視線には晴しか存在しなかった。


「あの・・・私は今日はどうすれば・・・」


「・・・好きにしていいわ。相手の情報が知りたいっていうのなら見て行ってもいいし、ハレと条件を合わせたいっていうなら見なくてもいい。そこは自由にしなさい」


晴と船越はあくまで互いに何の情報もない状態で戦う。明も同じような状態で戦うのであれば今日の戦いは見ないほうがいい。


だがあくまでそれは康太たちの考えだ。明が情報を知ったうえで戦いたいというのであればそれを止めることはしないつもりだった。


「私も情報はなしでいいです。ハレに後れを取るわけにはいきませんから」


「その意気やよし。んじゃちょっと待ってろ、今気絶させるから」


「え!?い、いえ、帰るだけでいいんじゃ・・・!?」


「いやいや、一人だけ帰すとか仲間外れみたいでかわいそうだろ?だからとりあえず訓練と称して気絶させようかと」


「やめなさいっての。メイ、自分で決めたのなら私からは何も言うことはないわ。自分の好きなようにしてみなさい。こいつはここで押さえておくから」


「あ、ありがとうございます・・・」


康太の首を絞めている文を見ながら明は徐々に距離を取っていく。ただの顔見せになってしまったが、康太に気絶させられるよりは何倍もましなようで足早にその場から去っていった。


「それじゃ・・・って二人ともいつまでにらみ合ってるわけ?そんなに早く戦いたいの?」


「あ・・・すいません・・・ちょっと気がはやりまして・・・」


「・・・いつでも始めていいっすよ・・・こっちの準備はできてます」


「・・・こっちだってできてますよ。いつでも行けます」


そういって晴は持ってきていた竹刀袋から刀を一本取りだす。晴のメイン装備の刀であることは康太も知っていた。


だが船越は晴が武器を使うということに驚いているようだった。


「なんだお前、魔術師のくせに武器なんて使うのかよ。案外大したことないのか?」


その挑発に晴はわずかに目を細めてからため息をつく。


「武器を使う奴が弱いと思ってるとか、随分と残念な脳みそしてるな。よくそんなんで今まで魔術師やってきたもんだよ」


「・・・んだと・・・?」


晴はその経験からして武器を使う魔術師の強さを知っている。だが船越はあくまで知識でしか魔術師が武器を使う意味を知らない。


二人の経験の差は訓練からも表れている。普段小百合にしごかれている晴からすれば、武器を使う=かなりえげつない強さを持っている可能性がある敵という認識になっているのである。


小百合を始め、高い戦闘能力を持つ魔術師はみな武器を使っているのだ。そう考えてしまうのも無理のない話である。


「ならお前も強いのか?そんなもんだして、ちゃんと使えるのか?」


「お生憎様、こちとら毎日同じようなものを振ってるんだ・・・たいていやられっぱなしだけど、それでもお前には十分すぎるだろ」


晴は鞘から刀を引き抜き、その刃を露出させる。わずかに光を帯びたその刀、刃を潰していない完全な真剣だ。


美しくもあり、恐ろしくもある。その刀を構えた瞬間、晴の目つきが変わる。


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