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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」
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挑発と研鑽を

「マッチメイクは終了したぞ。あとはお前たち次第ってわけだ」


『話が早すぎませんか?昨日の今日ですよ?』


「早いほうがいいだろ。思い立ったが吉日ってな。それとも忙しかったか?」


『そうはいっても・・・いやまぁ・・・明日でも全然平気ですけど』


まだ隣に船越がいるような状況にもかかわらず、康太は平然と携帯で土御門晴と話をしていた。


ちょうど京都の学校でも昼食時だったのだろうか、携帯の向こう側からは人の声がいくつか聞こえてくる。


若干イントネーションがこちらとは違うところに康太は少しだけ満足そうな笑みを浮かべていた。


「ちなみにさ、今となりにその一年がいるけど、話しておくか?」


『え?』


「え?」


電話の向こう側にいる晴と康太の隣にいる船越の反応がシンクロしたところで康太は一瞬笑ってしまい、その携帯を船越に渡す。


話してみろという康太の申し出に、電話の向こう側に晴は困惑の声を上げているが、すでに康太には聞こえていなかった。


「あの・・・もしもし」


『もしもし・・・?えっと・・・初めまして』


「あ、初めまして・・・えっと・・・」


いきなり話せと言われても何を話せというのか、二人は完全に困惑してしまっており、二の句が継げなくなっていた。


もっともこれから戦うということがわかっているのにフレンドリーに接することができるはずもない。


そのあたりは康太も承知しているためにあえて二人の会話に首を突っ込むことはしなかった。


「その・・・明日戦うことになるわけだけど・・・手加減とかしたほうがいいか?」


いきなり挑発に近い言葉をぶつける船越に康太は薄く笑みを浮かべる。ここまで強気に出ることができるのはある意味才能だ。何が彼をここまで強気にさせるのか。少なくとも康太だったらこんな風に出ることはできない。


『その必要はない。全力でかかってこいや。怪我だけはさせないように注意してやるから』


康太には聞こえていないが、晴の珍しい挑発に船越は眉をひそめていた。


同学年だから負けたくないという気持ちがあるのだろう。


こういう関係を築いていられるというのは良いことだ。小百合と春奈のように互いに研鑽しあう仲になればと思って康太は彼らを引き合わせた。


もっとも小百合と春奈のように目が合っただけで殺し合いを始めかねないような危険な関係にはなってほしくないが。


「上等だ、泣きべそかいても知らないぞ」


『こっちのセリフや、先輩に手も足も出なかったやつが随分でかい口叩くやないか。俺なら一撃入れるくらいはしてみせるぞ』


「・・・明日が楽しみだよ、絶対詫び入れさせてやる」


『こっちも楽しみだ。せいぜい楽しませてくれよ?』


船越はその言葉を聞くと同時に康太に携帯を返してくる。もういいのかと康太は小さくつぶやきながら携帯を受け取って晴と話を始める。


「どうだ?なかなかいきのいいやつだろ?」


『いきなり何話せばいいのかすごい困ったんですけど。びっくりするからやめてくださいよ』


「悪い悪い。まぁ明日よろしくな。明のやつにも伝えておいてくれ。明日はお前がやるんだろ?」


『はい。思い切り挑発もされたんで、明日は俺が行きます。明日は先輩も立ち会いするんですか?』


「一応な。まぁお前たちの実力を知るいい機会だし、指導するうえでも何か見えてくるかもしれないし・・・」


康太からすれば晴の戦闘と船越の戦闘を同時に見ることができる良い機会なのだ。誰かが戦っているところを見ることができるというだけでもなかなか珍しいのに、土御門の天才に自分たちに喧嘩を売った一年の両方を同時に見ることができるのだ。


この機会を逃すつもりはなかった。


それに万が一危ないことをしていたら止めることもできる。無論止めるつもりは毛頭ないが、普通の魔術師の戦いというものも見ていて損はない。


「それじゃあ明日よろしくな。うちの店に集合で」


『了解です。失礼します』


晴と通話を切ると、船越は複雑そうな表情をしていた。何やら悩んでいるような、迷っているような表情である。


「・・・相手は関西の人間ですか?」


「あぁ、京都出身の高校一年生だ。いきなり挑発するとはさすがだな船越君」


「・・・逆に挑発し返されましたけど・・・でもやる気はでたっす」


「そっか。じゃあ明日が楽しみだ」


「えぇ・・・めっちゃ楽しみです」


その目が何を楽しみにしているのか、康太は理解していた。相手を倒すことよりも競うことを目的としている目だ。


全くもって好戦的な奴だなと康太は小さくため息をついていた。


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