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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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二人の経験のために

「というわけで、うちの一年生とちょっと戦ってみてくれるか?」


「・・・あの・・・どういうわけですか」


「ていうかなんで戦えと・・・?」


小百合との訓練の合間に休憩していた土御門の双子を捕まえて康太は文と提案したことを話していた。


といっても始まりからして冒頭のセリフから入ったために土御門の双子はまったく事情を理解できていなかった。


仕方なく康太は今回の顛末を一から説明することにする。体のいい同期の魔術師の紹介に加え、互いに実戦経験を積めるいい機会であるということを全面に押し出しての説明だった。


そんな偏った説明をされれば、土御門の二人が『悪くないかも』などと思ってしまうのも無理のない話である。


「でも・・・その一年って弱いんですよね?」


「俺基準でな。たぶん今のお前たちとどっこいどっこいってところじゃないのか?よくわからんけど」


康太自身土御門の双子の実力を正確に把握しているわけではない。そのためどちらがより弱いか、あるいは強いかという評価ができないのだ。


とりあえず戦ってみればわかるだろうという短絡的かつ行き当たりばったりな思考のもと今回の提案をしているのである。


「先輩を基準に弱いってあんまりあてにならないかな・・・俺らと同格程度に考えておくか・・・」


「どのくらいかはわからないけど・・・たぶん一年前の俺じゃ勝てないくらいだと思うぞ?あくまでたぶんだけど」


一年前の康太はまだまだ魔術師として新米もいいところだ。文のような才能あふれる魔術師に勝てたのは偶然に近い。


まともにやってあの頃の自分が船越に勝てるかと聞かれると正直微妙なところだった。


「一年前の先輩でも普通に強かったんじゃないんですか?俺らが初めてあった時も結構強かったですよね?」


「あの時も結構いっぱいいっぱいだったぞ?それにあの時は師匠や姉さんも一緒だったからな。良くも悪くもフォローされてたってことだよ」


康太と同レベルの相手しかまともにしていなく、格上の相手は真理と一緒に戦う形だったために、自分だけの力で倒したとはいいがたい。


今の康太からすればかつての自分は弱点だらけといっていいだろう。今も弱点がないわけではないのだが、そのあたりは置いておくことにする。


「とりあえずやるだけやってみろって。それでいろいろ見えてくるものもあるだろうからさ」


「はぁ・・・それはいいんですけど・・・その一年生には話は通してあるんですか?」


「まだ。とりあえず二人を呼びこんで戦えっていうつもり」


「・・・せめて約束取り付けてからのほうがよくないですか?相手が拒否したらどうするつもりですか」


「ん・・・拒否したら拒否した時だな。その時は戦う相手がそいつから俺に変わるだけの話だ」


一年生魔術師から康太へ。なんとも劇的なレベルの変化だなと土御門の双子は軽くめまいを起こしてしまっていた。


とにかく康太からすれば土御門の双子に実戦経験を積んでもらいたいのである。特に康太たちのように実力が圧倒的に離れた相手ではなく、ほどほどに実力の近い相手との実戦が好ましい。


そんな康太の都合を完全に無視して、土御門の二人は康太とは戦いたくないと本気で思っていた。


軽く手合わせしただけでその実力差がありありとわかってしまうのだ。はっきり言ってしまえば戦っても負ける未来しか見えない。そんなものは実戦とは言えない。ただのいじめに近いのである。


「ちなみにその一年生の魔術師としてのタイプは?先輩みたいな近接型ですか?それとも射撃型ですか?」


「・・・わからん」


「え?でも戦ったんですよね?」


「うん・・・その時は一瞬で決着がついちゃって相手の本気を確認する前に終わっちゃったんだよ・・・我ながら反省している」


相手の情報を少しでも得たいと思っていたのだろうが、康太にそのあたりのことを期待するのははっきり言って無駄というものである。


相手の情報などわからないのが当たり前、出会った瞬間に相手の能力を把握できるような特殊能力でもない限り、実際の魔術師戦では相手の情報を仕入れているような時間などないのだ。


状況によってはあらかじめどんな魔術師がやってくるのかわかることもあるのだろうが、そんなのは本当にまれな話である。


「まぁ相手の情報が全くない状態で戦うっていうのは珍しくないから、今回も似たようなもんだと思ってやってみてくれ」


今回はあくまで戦闘の実戦。なるべく実力差のない相手との戦いで相手の情報を知っていたのでは少々双子に有利すぎる。


素質自体でも土御門の双子のほうが有利なのだから、多少は不利になる要素を含めてもいいだろうと康太は考えていた。


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