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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十二話「本質へと続く道標」

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見えない相手

康太と文はさっそく支部長から言われた通り、人事関係の書類を読み漁っていた。


ベフ・ノイという魔術師の名前には心当たりがなかったために、とにかく調べまくるという以外の方法がとれなかったのである。


幸彦が協会の魔術師を中心に聞き込みをしている間、康太たちは資料に目を通すことくらいしかできなかった。


支部長も心当たりがないとなればあとは探すしかない。少々非効率かもしれないが、それでもできることがこれしかないというのは少しだけ歯がゆかった。


「こういう時にトゥトゥがいてくれれば手伝わせることできるんだけどね・・・」


「そういうな、あいつはもう自分で自由に動いていいんだ。俺らのこれに巻き込むのはちょっと違うだろ」


以前のように倉敷に声をかけて気軽に手伝ってもらうということはもうできない。康太を攻撃したというペナルティ期間は終わってしまったのだ。


いつものように屋上に呼び出して『さぁ手伝え!』とはいかなくなってしまったのである。


「それなら土御門の双子に声かける?今回は急だったから声かけなかったけど・・・それに内容もちょっとあれだし」


「んー・・・調べ物だけに呼ぶっていうのはな・・・ちょっと違う気がする」


今年度から土御門の二人が小百合のもとで修業をしている。なるべく実戦に連れて行きたいという気持ちも強い反面、危険な内容にはあまり連れて行きたくないというのが本心である。


危険な内容というのは単純に戦闘のあるなしではなく、魔術師として行動に責任が付きまとう内容という意味も含まれている。


今回のように警察が動いている状況では経験不足というのはかなり顕著に響いてくるだろう。

そういう意味もあって康太と文は土御門の二人を今回呼ばなかったのだ。


「今回の相手・・・勝てると思う?」


「魔術師としての経験はあっちのほうが上だろうと思ってるよ。依頼した立場もそうだけど、動かした相手の指示がしっかりしてたから警察にも見つからなかったと思うし」


魔術師が依頼をするとき、たいていの魔術師が知り合いやそれらのつながりから発生することが多い。


つまり今回の依頼主であるベフ・ノイは何かしらのつながりを持ってして、あの二人に依頼をしたということになる。


単純に考えれば、犯罪を行うような依頼を出す時点で依頼される側はかなり渋るはずだ。それなり以上のメリットがない限りは依頼を受けないという選択肢だって十分にあり得る。康太だって知り合い以外の魔術師から犯罪を行ってくれと頼まれたって普通に断る。仮に受けざるを得ない状況にされたとしてもどうにかして断るか、あるいは逆に依頼を破棄させるように仕向けるだろう。


それでも彼らが依頼を受けたということは、依頼を受けた彼らがそのような荒事を専門にしているか、あるいはそれだけのメリットが用意されていたかの二択になる。


あの二人の個人的な事情でそれだけのメリットが生まれるとは考えにくい。となれば依頼した側がそれだけのメリットを提示したことになる。


魔術師として経験の浅いものにそれほどのメリットは用意できないと康太は判断していた。


警察に見つからない程度には腕の良い魔術師とのつながりを持ち、なおかつ彼らに依頼を受けさせるだけのメリットを提示できるだけの魔術師。少なくともそのあたりにいる雑魚ではないのは間違いと康太は判断していた。


「それに加えてサリーさんの会社に害を与えて利をなす人物・・・か・・・どっかの会社に勤めてるか・・・あるいは株式とかを取り扱ってるか・・・あんたのところの師匠もそういうのやってたわよね?」


「まぁな。あの人の収入源だし・・・いやうちの師匠はやってないぞ?」


「わかってるわよ、あの人そういう回りくどいことしないでしょ。それにそんなことしないでも普通に稼げるでしょうし」


何の確証がなくとも小百合が犯人ではないと断定する程度には二人とも小百合のことを信頼している。


というか奏の会社に不利益を出すような行動をそもそも小百合がするとも思えなかったのである。


邪険にしていても小百合は奏のことを尊敬しているようだし、大事にしているというのは傍から見ても理解できる。


矛盾しているかもしれないが兄弟弟子というのはそういうものなのかもわからない。


「戦闘能力はどれくらいあると思う?あんたの私見でいいけど」


「んー・・・ぶっちゃけ依頼をする人間って立場だとどうしてもサリーさんとかが頭に浮かぶんだよな・・・あの人を基準にするしか・・・」


「あの人を基準にする時点でちょっと違うと思うわよ?っていうかあの人より強い魔術師のほうが少ないんじゃないの?」


「確かに。でも少なくともサリーさんよりは弱いと考えてる。でも決して弱くはないだろうな」


「その心は?」


「犯罪関係の依頼をするってことは、万が一の時に自分だけは助かることができるようにある程度戦闘能力を有しておくべきだと思う。貧弱だったらそういう依頼をした相手にメリットだけ奪われるってことも考えられるし」


康太の中にあるのはいわゆる世紀末の理論だった。犯罪を行う人間を統括するにはやはり強い人間でなければならない。


モヒカンでムキムキな人間を統括するものがよぼよぼのおじいさんなんてことはありえない。ならば統括する人間もある程度強いだろうというのが康太の考えだった。


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