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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十二話「本質へと続く道標」

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少しだけ予想外

「よっしゃ、ウィル、しっかりつかまっててくれよ?」


近くに止めておいたバイクのもとに向かうと、康太はバイクにまたがってエンジンをかけ始める。


ウィルは須藤香織の体を操って康太のバイクの後ろに乗るとその体をしっかりとつかんで体を固定した。


「ウィル、今のうちに言っておく、万が一敵が襲ってきたらお前がバイクを運転してこの子を届けろ。いいな?」


ウィルは康太の言葉に反応して親指を立てて見せる。バイクの乗り方を教えたことはないが、あれほど康太や小百合の動きを模倣できるのだ。おそらく重心の移動に関しては問題なく体得しているだろう。


もし敵が襲ってきても問題なく対処はできる。問題なのは彼女を無事に送り届けることができるかということである。


長谷部の指定した時間と場所に送り届けるための時間は十分にある。安全運転で移動しても問題ない。

あとは事故を起こさないように安全運転すればいいだけだ。


ゆっくりと、なるべく音を出さずに前進していき康太たちを乗せたバイクは走り出した。


常に索敵を発動し周囲に警戒しながらバイクを運転する康太は、一瞬近くを通った文を意識した。


文は文で近くの教会まで向かうようだった。ここからだと少々距離があるだろうが、彼女ならそう時間はかからないだろう。


康太とは違う手段で空を自由に飛ぶことができるのだから。


康太がそんなことを考えていると、康太のポケットに入れてある携帯が震えだす。いったい何事かとウィルに手伝ってもらい携帯を見ると、奏からの着信が入っていた。


「もしもし、ビーです」


『あぁすまん、移動中か、かけなおすか?』


「いえ、問題ありません。そちらは今日も徹夜ですか?」


『そういってくれるな、これが終われば寝られるさ・・・声から察するにそちらは終わったのか?』


「これから終わらせるところです。あとは指定の場所まで送り届ければ無事解決ってところですかね」


康太の言葉を聞いて奏はそうかと小さく安堵の息をついていた。どうやら康太たちのことを気にかけていたらしい。


徹夜なこと自体は変わらないのだろうが、こうして身を案じてくれるというのはうれしくもあり、少々気恥しくもあった。


『時に康太、今回の相手は何人だった?』


「二人でした。人一人さらうにしては少々人数が少ないと思います。他の魔術師の可能性も考えて送り届けたらすぐに尋問を開始します」


『・・・そうか・・・二人・・・ん・・・確かに少ないな。あと二人くらいはいると思ったが・・・考えすぎていたか』


「襲撃されると厄介なので一応警戒はしています・・・あと少しで指定のポイントなので問題はないと思いますが・・・」


指定の場所で巡回中の長谷部が須藤香織を回収する手はずになっている。あとは長谷部が巡回してくるまで彼女を守ればいいだけである。


もう少し必死に逃げた痕跡でも残せばよかったかなと、妙に小奇麗な須藤香織の服や靴などを見て少しだけ失敗したなと思いながらも、自分たちがやるべきことは半分は終わったということを理解して康太は小さくため息をつく。


『尋問に関してはお前に任せよう。私の会社に不利益を与えようとしたバカをあぶりだしてくれ』


「了解しました。しっかりとけじめはつけさせましょう。さっさと快眠してほしいですからね」


『・・・はぁ・・・全く情けない話だ。以前は一週間くらい不眠不休でもなんとかなったものだがな・・・さすがに歳には勝てんか・・・』


「まだまだ若いでしょう?らしくありませんよ」


『そういうな・・・ではしっかりと頼むぞ。背後関係がわかったら一度連絡をくれ。待っている』


「わかりました。それでは失礼します」


康太はそういって通話を切る。背後にいる少女の存在を強く感じながら康太はバイクを操っていく。


人通りは少ない、時間が時間だから仕方がないがバイクの音が妙に大きく聞こえていた。


近所迷惑にならなければいいがと少しだけエンジンの出力を落としながら指定の場所にたどり着くと、康太はウィルを纏った状態の少女をバイクから降ろす。


「ウィル、しばらくその子についててくれ。俺は離れた場所で監視してる。適当に形を変えて守っててくれ」


ウィルは須藤香織の体を操って敬礼して見せる。了解のポーズなのだろうが、今の格好でやると少々滑稽でしょうがない。


ウィルは近くにあったゴミ捨て場を見つけるとそこに少女の体を横たわらせてそのすぐそばにゴミ袋に擬態することで彼女を守ろうとしていた。


なかなか考えたなと思いながらも、赤黒いごみ袋では目立つなと康太は自分の着ていた魔術師の外套をウィルに渡す。


黒い布地を自らに巻き付けることでウィルはほぼ完璧にゴミ袋に擬態していた。


康太は即座にバイクに乗って少し離れた場所から索敵し続け状況を見守ることにした。


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