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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十二話「本質へと続く道標」

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突破侵入作戦

その体にかかる強烈なGに、康太は若干眉をひそめながらも目標の建物を必死に注視していた。


肉体強化をかけた状態とはいえ、かなりの負担がその体にかかっている。何より自分のタイミングで加速や減速ができないというのがつらかった。


索敵範囲に入った段階ですでに文は離脱している。空中を飛んでいるのは康太だけだ。文は一直線に目標の建物めがけて康太を加速させているが、若干誤差が出てしまっているために再現の魔術で疑似的に足場を作り出したり、噴出の魔術で体の向きを調整したりなどしてその誤差を修正していた。


目標の建物、そして侵入経路となる窓が目視で来た瞬間に物理解析の魔術を発動しその窓の状態を解析する。


窓の配置、鍵の位置や状態などを把握した康太は即座に遠隔動作の魔術を発動して窓の鍵を解除し窓を開く。そして空いた窓から転がり込むように建物の内部へと侵入していた。


ウィルがクッション代わりになってくれたおかげで音もほとんど出ず、康太自身へのダメージもほとんどない。


窓を突き破ると音が出るため、こうする以外に康太はほかに手段が考えられなかったのである。


そして建物内に侵入すると同時に康太は索敵の魔術を発動し、他の魔術師たちの動向を確認した。


人質のいる部屋には魔術師が一人。そして休憩スペースとなっている広い部屋に一人。休憩スペースの一人は今眠っているようだった。横になっている状態で動かない。


人質のいる部屋にいる魔術師は椅子に座った状態でスマホをいじっているようでまったくこちらに関心を持っていないようだった。完全に油断している。索敵の魔術も発動していないというのはどうなのだろうかと考えながら、康太はとりあえず休憩スペースで眠っている魔術師のもとへと向かった。


そこには適当な布類をベッド代わりにしている人物が熟睡していた。無理もない、今はすでに深夜なのだ。二人体制であれば片方が休憩をとるのは自然なことである。


康太は持ってきていたワイヤーを取り出すとそれで魔術師の手と足を縛っていく。かなりきつく縛っても魔術師は起きる素振りを見せなかった。完全に油断しているようで康太からはありがたい限りである。


眠っている魔術師を縛り上げ、その上から毛布を掛けることで縛られていることを隠してから人質のいる部屋へと向かおうとすると、先ほどまでスマホをいじっていた魔術師が部屋から出ようとしていることに気付く。


こちらに気付かれたのだろうかと、物陰に隠れてやり過ごそうとすると、どうやらトイレに向かったらしく、康太の隠れている場所からは見当違いの方向へと歩いていく。


これはチャンスだと思い、康太は音を出さないように一気に近づいて魔術師の背後へと向かう。


康太が攻撃しようとする瞬間、相手が不意に康太のほうに振り返り、その表情を一気に変えた。


康太の存在に気付いた瞬間に、魔術師は前に転がるように康太の攻撃を回避して魔術を発動しようと康太に手を掲げる。


完全に不意打ちだったにもかかわらず即座に態勢を立て直し反撃しようとしてくる。いい魔術師だと康太は歯噛みしながらウィルの盾を前面に押し出して前進する。


シールドチャージ。噴出の魔術で加速した盾は魔術師からの攻撃をすべて受け止め、なおかつその体めがけて突進する。


盾の攻撃を受けた魔術師は衝撃で弾き飛ばされ休憩部屋の方向へと転がっていく。被害者がいる部屋から離れたのは幸いだった。被害者は横にされた状態で眠っているようでゆっくりと体を動かしている程度だ。


一般人が見ていないのであれば魔術は存分に使える。康太はウィルの盾を前面に押し出した状態で再びシールドチャージを繰り出した。


だがさすがに同じ攻撃を二回も食らうほど相手も馬鹿ではないのだろう。横に跳んで回避するが、康太もその回避を見逃すほど馬鹿ではない。


ウィルの盾は噴出の魔術によって直進し続けるが、康太はその盾を切り離し、一直線に魔術師のもとへと向かっていた。


盾が目くらましになり康太の姿を一瞬見失っていた魔術師は、康太が自分の方向へとまっすぐに向かってきていることに気付くと、攻撃して距離を強引にでも作ろうと攻撃魔術を放つ。


単純な火の射撃魔術だ。だが康太はその魔術をエンチャントの魔術を発動し強化した腕ですべて払い落とす。


分が悪い。相手がそう判断した瞬間にはもう遅い。康太は自分の射程距離まで肉薄していた。


魔術師はとっさに攻撃魔術を近くで寝ていた魔術師めがけて放つ。


先ほどの炎の魔術ではなく、小規模な念力の魔術のようだった。本格的な攻撃にはならないが多少の衝撃を含んでいる。


攻撃によって寝ている魔術師を起こそうとしたのだろう。判断は悪くない。だがその行動は数分遅い。


攻撃の衝撃によって寝ていた魔術師は目を覚ますがその体を起こすことはできなかった。


何せその両手両足はすでに康太が縛り上げているのだから。


康太は相手が味方を攻撃したその隙に、自らの拳も届くほどの位置へと踏み込むとその胸ぐらをつかみ、魔術を発動する。


再現の魔術によって作り出された康太の拳、肉体強化がかかった状態でストックされた正拳突きは魔術師の体に何発もめり込んでいく。


吹き飛びそうになるその体をウィルが完全に固定し、魔術師は反撃することもできずに半ばサンドバッグのようになってしまっていた。


眠っていた魔術師もようやく異常に気付いたのか、転がされたままで何とか魔術を発動しようとする。相方を助けようと魔術を放とうとするも、康太と魔術師の距離が近すぎるために攻撃することができなかった。


味方を巻き込むかもしれない、そう考えると手が縮こまってしまうのである。


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