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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十二話「本質へと続く道標」
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ブツを回収

翌日、昼頃に康太と文の携帯にそれぞれ長谷部からの連絡が入っていた。


件の物品を入手することができたということで、西荻窪のロッカーの中にそれを入れておいたということだった。


康太と文はその連絡を受けると同時にまずは東京に向かうべく最寄りの教会を経て協会へと足を運んでいた。


すると普段門の警備をしている魔術師が康太の姿を見つけて声をかける。


彼は康太がよく話しかけ、世間話などをする程度の付き合いのある魔術師である。門の管理と警備が主な仕事であるために現場で康太が接触することはないが、康太が一番かかわりの長い魔術師というと文の次くらいにランクインする存在である。


「あ、ブライトビー、お前さんにお届け物だぞ」


「届け物?なんです?」


「ほれ。シグ・ディンゴって魔術師からだ」


そう言って康太に封筒を一つ手渡してくる。聞いたことのない術師名だなと思いながらその封筒を開くと、中には鍵と一枚の手紙が入っていた。


それは今やり取りをしている奏の弟子の長谷部からの手紙だった。


『ブライトビー、ライリーベルへ。


頼まれていたものを西荻窪駅のロッカーに入れておきました。何かほかにお役に立てることがあれば連絡してください。私は仕事で須藤家からあまり離れることができません。解決はお二人の力にかかっています。よろしくお願いいたします。


シグ・ディンゴより』


方陣術の応用で描かれた手紙であるために一般人にそれを読むことはできない。仮に見つかったとしても問題ないように備えていたということだろう。


「あの人シグ・ディンゴって術師名だったのか・・・そういえば聞くの忘れてたな」


「仕事が早くて助かるわ・・・行きましょ」


康太と文はすぐに東京にある教会に向かい、そこから西荻窪駅へと移動していく。


西荻窪駅に到着すると同時に文は索敵を発動して件の物品が入っているものに加え、周囲に見張りがいないかを確認し始めた。


「いるわね・・・やっぱ警察も駅は警戒するか・・・」


「まぁ出入り口だからな。仕方がないだろ。とにかくさっさと回収しちゃおうぜ。なるべくばれないように」


「二人一緒に行くと目立ちそうね・・・私が回収してくるから康太は適当に店でも回ってて。あるいは待ち合わせしてるみたいな感じにしてて」


「オッケー。回収は任せた。そのあとはどうする?」


「一度どこかに腰を下ろしたいわね・・・この辺りに拠点になりそうなところはないのよね・・・集中できるような場所があればいいんだけど・・・」


一晩中魔術の発動をし続けていた文だが、やはり未だ発動率も精度もあまり高いとは言えなかった。


文が集中できるだけの場所を用意しなければ、物品を回収できても満足に術を発動することすら難しいだろう。


索敵とは少し違うが、何かを探すための魔術を発動するのに発動率も精度も低いとあればあとは集中力で何とかカバーするほかない。


文の集中力を高められるだけの環境を用意することができれば、多少は効果の上昇が望めるだろうが、この辺りに康太たちが身を寄せるような拠点はない。


そのあたりから探さなければいけないのである。


「師匠の店に行くのはちょっと遠くなっちゃうからな・・・何回か発動するつもりなんだろ?」


「えぇ・・・三か所から測定するつもりよ。地図とその方角から場所を割り出すわ。常に移動でもしていない限りはそれで捕捉できるはずよ」


「了解。んじゃ俺はそれっぽい場所を探しておくよ。適当に空いてるビルとか・・・いや西荻窪ではそういうことはやらないほうがいいか・・・隣駅にするか?」


「それでもいいわよ?多少別の場所で測定することも必要でしょうからね」


三か所から目標である須藤香織の居場所をそれぞれ方角として記すことができれば、地図を使ってその線が交わるところがわかる。


問題なのはその三か所をどのように決めるかというところである。


文が集中できる場所が好ましいが、あまりこの近辺から離れすぎても精度に不安が出てしまう。


どこかの場所を使って魔術を発動するべきなのだが、そう時間もかけていられない。早く解決してやったほうが被害者のためにもなるだろうし、時間をかければかけるほど警察が犯人の居場所に気付く可能性がある。


魔術の存在を隠して行動したい康太たちからすれば、警察が近くまでやってくるような状況は作りたくないのである。


「中央線だけじゃなくて別の方にもいってみるか・・・確か北側にもう一つ線路あったよな?何線だったか忘れたけど」


「そうね・・・そのあたりは一回目の発動でどの方角になるのか確認してからにしましょ。あとは私が発動するだけだからね」


「頼むぜ文さん。その代わりに突入は任せろ。ボッコボコにしてやんぜ」


康太は真理から得たアドバイスを元に頭の中でシミュレートを重ねていた。どのように行動するか、どのように対処するか、状況に応じて頭の中で組み立て続けている。


多少の問題があっても、今の康太ならば平然と対応することができるだろう。


「んじゃ適当に時間つぶしてるわ。回収したら連絡くれ」


「了解よ。それじゃあとでね」


康太と文は一度分かれてそれぞれ行動を開始した。


文は長谷部からの物品の受け取りへ、康太はこの辺りの調査、および捜査の目をかく乱するための時間つぶしへと向かった。


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