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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十二話「本質へと続く道標」

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血を求める

「具体的にはどういう効果なんだ?さっきはなんかうにょうにょ動いてたけど」


「えーっと・・・とりあえず・・・髪の毛をベースにして血を纏って、あとはこの靴下から延びた糸でその人がいる方向を指さしてくれるのよ。髪の毛、血、所有物の順で精度が高くなるわ・・・全部あれば最高。なんだけど・・・!これめっちゃ難しいのよ・・・!」


「うん、それは今の様子を見てればわかる。なんかすごそうだよな」


パッと見ていただけだが、その難しさは康太も何となく理解していた。文は体中から汗を垂れ流し、荒く息をついている。


高い集中力を発揮していたというのは誰の目にも明らかだ。少なくとも康太はここまで集中している文を見たことがない。


文は普通の魔術やちょっと難しい程度の魔術であれば片手間でも発動できる。そんな文がここまで集中しても発動できないという時点でこの魔術の難易度が果てしなく高いということは容易に想像できる。


まだ文がこの魔術を習得したばかりといえど、その難易度は計り知れない。


「さっき属性を混ぜ合わせるって言ってたけどさ・・・普通に風と水の魔術を使ってるのとは違うのか?」


「んー・・・どう説明したらいいかしら・・・普通に属性魔術を使う時って属性用の魔力を生成するじゃない?そのやり方は人それぞれだけど・・・溜めた魔力を使いたい分だけ変換する人もいれば、あらかじめ属性別に保管してる人もいるし」


「あー・・・俺の場合は前者だな。使いたい分だけ変換してる」


康太は使う魔術の属性分けをしていると、ここぞという時に魔力が食い違ってうまく発動しないなどということがありかねない。


ならばと使う時、その都度魔力を変換してそれぞれの属性魔術を使っているのである。とはいえ康太が使える属性魔術は風と火の二つしかないためにあまり使い分ける意味はないのだが。


「私の場合はある程度ストックしておくのよ。同時に発動することが多いからね・・・まぁそれは置いておくわ。その魔力をさらに混ぜ合わせるんだけどね、ただ混ぜちゃダメなのよ・・・全く別物に変えなきゃいけないんだけど・・・」


「・・・ごめん、どういうこと?」


「んーと・・・どういえばいいかしら・・・牛乳と緑茶混ぜてカルピスを作れって言われてる感じっていえばわかる?」


「全然わからないけどとりあえず不可能だってことはわかった。牛乳はまだわかるけど緑茶を混ぜたら緑茶ラテとかになっちゃうじゃんか」


「ごめん、自分で言っておきながらかなりひどいたとえだったわね・・・でもそういうことなのよ。ただ混ぜ合わせたら妙な魔力が生まれるだけなんだけど、それの配合やらちょっとひと手間加えて別物にしたうえで発動しなきゃいけないんだけど・・・それがなかなか難儀で・・・」


康太も最初属性の魔力を作り出すのに苦労したものだが、おそらく文は今それ以上に苦労しているのだろう。


レベルが三段階ほど上がっている魔力の生成方法である。康太には絶対にまねできそうにない技術だった。


「春奈さんにコツとかは聞かなかったのか?」


「こういうのはね、人それぞれ微妙に感覚が違ったりするのよ。大まかなことは伝えられてもそれ以上は自分で掴むしかないわけ・・・あんたもそうだったでしょ?」


魔力を作り出すところから魔術を発動するところまで、確かに康太は自分の感覚だけを頼りに覚えてきた。


師匠である小百合には徹底的にそれらを体感させられ、自分の中でどのような感覚があるのかを一つ一つ確認しながらの作業を行っていた。


そう考えると小百合の指導はあながち間違ったものではなかったのかもしれないなと思いながらも、今の文の現状を見ると何かしてやりたいと思ってしまう。


「他に何か手伝えることあるか?何でもいいぞ?」


「・・・何でも?」


「・・・俺にできることであれば」


「・・・じゃあもうちょっと髪の毛と血を頂戴。なるべくたくさんあったほうが精度が高まるわ」


「・・・まぁ・・・構わないんだけどさ・・・髪の毛は切った奴でもいいのか?」


「なんでもいいわ。体の一部だったってところが重要だから」


そう言われて康太はとりあえず自分の髪の毛の一部を再現の魔術でナイフの斬撃を再現して切り落とす。


不自然に髪型が変わるのは反対側も同じようにカットすることで調整して見せた。


「なんとも豪快な散髪だこと・・・普段もそうやって切ってるわけじゃないでしょうね?」


「だれがこんなことするか。ほれ髪の毛。あとは血だったな・・・ちょい待ってろ・・・ふんぬ!」


「・・・また突っ込んでるの?ありがたいんだけど・・・なんか間抜けよ?」


「手っ取り早く止血もできるいい方法じゃないか。ちょっと息しにくくなるけど」


康太は再び出した鼻血を文に提供するため、しばらく鼻血を垂れ流し続けていた。


文の目の前の空間が若干血だらけになってしまうが、これは文が望んだことなのだから仕方がないと康太はあきらめていた。


鼻血を出すのは実は結構久しぶりだなと、かつての修業を思い出しながらしみじみと自分の鼻の穴から垂れてくる血を眺め康太は目を細める。


奇妙な光景だ。この場に倉敷がいたらこの二人の様子を怪訝な様子で眺めたことだろう。この場にいるのが二人だけでよかったと康太と文はしみじみと思っていた。


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