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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十二話「本質へと続く道標」

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ゴールデンウィークはお仕事を

「へぇ・・・あんた今そんなこと習ってるんだ」


康太と文はいつも通り学校の屋上で昼食をとりながらゴールデンウィークの予定などを話していた。


その合間に康太が今やっている技術について話していたら、文としては気になったのか食いついてきたのである。


「おう、ぶっちゃけまだまだ練度が足りな過ぎてちょっと強化しないと貫けないけどな。師匠とか姉さんなんかは強化なしで突き破る」


「・・・ふぅん・・・じゃあ、はい」


文はそういって小さな障壁を作り出す。康太は手に持っていた箸にエンチャントの魔術を施してからその障壁に触れ、少ししてから障壁に箸を突き立てる。


障壁にわずかに亀裂が入り、箸は見事に障壁を貫通していた。


「へぇ・・・簡単に貫通できちゃうんだ」


「ほとんど魔力込めてなかっただろ。相手が防御しようとしてたらもうちょっとしっかり集中しないとわからないな」


何度も何度も障壁を壊す訓練をやっていたからか、康太の察知能力も多少ではあるが上がっていた。


とはいえそれでも集中しないとしっかりと感知することはできないし、集中して障壁を観察しないといけないために実戦で使うにはむらがありすぎる。


地下での戦いは高い集中を維持し、なおかつあの鎧を観察し続けることができたからこその状態だったのだろう。


しかもナイフで切り付けてちょっと傷をつける程度しかできなかった。


同じような状況でもない限り実戦でこの技術を使えるようになるのはまだまだ先の話になりそうである。


「あんたも着々と小百合さんの弟子らしくなってきてるじゃない。喜んでいいのか悪いのか・・・」


「まぁいいんじゃないか?手段が増えるに越したことはないし、相手の防御を突破できるのも悪くない。何より俺が欲しかった技術でもあるしな」


今まで康太は相手が障壁などの防御を展開した場合、強引に破壊するか回避するかという手段しか取れなかった。


前者の場合であれば破壊するには強力な威力か時間が必要となり、後者であれば軌道が読まれやすい、あるいは威力が下がるなどの欠点があった。


それをほとんど無視して攻撃できるとなればこれほど心強い技術はない。


「それで、ゴールデンウィークはずっと修業するの?」


「いや、ちょっと奏さんのところに来いって言われてるんだわ。なんか俺らに頼みがあるんだとさ」


「奏さんが?珍しいわね」


奏が康太たちに何か頼みをするというのは地味に珍しい。康太たちが何かの借りを返すために依頼を出すというのならば今までにもあったことなのだが、修業以外で奏のもとに行くのは地味に久しぶりだった。


「どんな頼み事か聞いてる?具体的に」


「いいやなにも。ちょっと頼みがあるから来てくれって」


「ちょっとコンビニ行ってきてレベルの頼み事ならいいんだけどね・・・あの人の話って基本的に規模が大きいじゃない」


「まぁそのあたりはしょうがないだろ。あの人のことだからそこまで面倒なことにはならない・・・と思いたいけど・・・」


康太はそう考えながらも不安が消しきれなかった。


奏が直接頼んでくるということは何かしらの事情があるのは間違いない。基本的に彼女は魔術師として活動していない。


私生活、というか表の生活である社長職が忙しすぎて魔術師として活動できるだけの時間的猶予がないのだ。


だからこそほとんど魔術的ないさかいなどないはずで、康太たちに何かを頼むことなどめったなことではないはずなのである。


それが依頼してきたということは、何かしらの事情があると考えていいだろう。


「言っておくけど私もついていくからね。あんたが行くなら私も行くから」


「わかってるよ・・・奏さんが何を頼むつもりなのかは実際に行ってみないとわからないからな・・・こればっかりは・・・」


「・・・そういえばさ・・・奏さんは小百合さんの兄弟子なわけでしょ?小百合さんが覚えてる破壊系の技術って奏さんも覚えてるのかな?」


「・・・どうだろ・・・わからない。師匠は破壊関係の技術を全部教えてもらったって言ってたけど・・・奏さんはどうだったかな・・・?魔術関係だって言ってたような・・・」


小百合たちの師匠である智代は、三人の弟子を取った。


一人が奏、一人が幸彦、一人が小百合。それぞれに得意な技術を授けていたが三人とも同じ師匠に教えてもらっていながら魔術師としての完成形は全く異なる。


それだけ個人の得意な魔術や性質が異なるということでもあるのだが、奏がどのような魔術を得意とし、どのような戦い方をするのか、どのような魔術師であるのかは詳しくは知らない。


幸彦はまだ割と一緒に行動することが多いために、肉体強化をはじめ、接近戦を得意とする魔術師であることなどを知っているが、奏が戦っているところも活動しているところも一回程度しか見たことがない。


高い魔術の素質と高い技量を有しているということはわかる。本気で戦った場合この三人の中で誰が一番強いのか、興味は尽きない。


小百合とは異なりながら小百合と似ているところもある彼女の技術、いったいどのようなものであるのか、少しだけ気になってしまっていた。













ゴールデンウィーク、今年もやってきた五月の連休の一日目、康太と文は奏のもとを訪れていた。


奏からの依頼ということは泊りがけで行われる可能性が高い。とはいえあらかじめ予定を教えてくれないというのもなんとも不親切な話である。


だが逆に言えばそれだけ忙しいという話でもある。康太に送られてきたメールも実に端的なものだった。


おそらく今奏の会社は繁忙期を迎えているのだろう。もっともゴールデンウィークで働ける人手がいないからという理由かもしれないがそのあたりは判断しにくかった。


「お疲れ様です。奏さん、康太です」


いつも通り会社の受付を通り、奏のいる社長室までやってくると、奏は目の下に隈を作った状態でパソコンに向かっていた。


きっと何日も寝ていないのだろう。その様子を見て康太と文は同時に顔を見合わせてから動き出した。


康太はコーヒーを淹れながら部屋の簡単な掃除を、文は奏がやっている仕事を確認して書類の整理をそれぞれやっていく。


「だいぶきつそうですね・・・何日徹夜してるんですか・・・?」


「なに、五日くらいだ。このくらいのことはよくあることでな・・・気にするほどのことではない・・・あぁ、ありがとう」


康太からコーヒーを差し出され、奏は薄く笑みを浮かべながらそれを受けとる。今までのそれと違いだいぶ儚い笑みだった。今まで忙しそうなところは何度か見たことがあるが、その中でも飛び切り弱弱しい状態だった。


こんな状態では訓練をするわけにもいかないだろう。というかできる気がしない。


「とりあえず、ひと段落するところまで進めましょうか、そうじゃないと話が進められません」


「すまん、あぁ文、すまんがこの書類をそっちのファイルにまとめておいてくれ。それとその棚にある今期の予算編成の書類を持ってきてくれるか?」


「わかりました。少し待っていてください」


文はてきぱきと仕事をこなしていく。もはや奏の秘書といっても過言ではない。さすがだなと康太は感動しながら同じく部屋の中を掃除しながら少しでもいい環境で奏に働いてもらうべく気を回し続けていた。


「何もここまでやらなくてもいいんじゃないですか?最後に休んだのいつです?」


「さぁな・・・基本的に昼間はデスクワークはできんからな・・・方々に足を運んで挨拶やら打ち合わせやらで・・・移動中にノートパソコンで多少はやっているが・・・さすがに限界がある」


「でしょうね・・・こんなに忙しいって何か会社内でトラブルでもあったんですか?」


「逆だ、順調に進みすぎているから新しい分野に手を出そうとしている段階で手が回らなくなってきている。部下は足りているんだが・・・さすがに取締役を増やすわけにもいかんからな・・・」


「もう少し決済能力を分配すればいいんじゃないですか?重要案件を全部奏さんに投げていたら体がいくらあっても足りませんよ?」


予算関係の書類を持ってきた文はそういいながら奏の机の上を軽く片付けていく。邪魔にならないように、そして仕事を効率よくこなせるように机を片づけていくその姿はまさに秘書そのものだ。


「そうしたいのはやまやまなんだがな・・・どうにもそのあたりの分配が難しい。特に一人の部下に大きな仕事を任せればほかの部下の顔を潰すことになる。逆もまた然りだ、適材適所という言葉はあるが、周りの目というものもあるからな・・・」


会社の長というのは会社の財政だけを回していればいいだけだと康太は思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。


会社の外だけではなく内側のことも考えて仕事を回さなければいけない。なかなかに難しい話だなと康太は難しい顔をしてしまう。


「お前たちがうちの会社に来てくれれば、私ももう少し楽ができるんだが・・・ゴールデンウィーク中、あるいはその後からうちにバイトに来てほしいくらいだ」


「もしかしてそれが今回の頼みですか?バイトくらいならいくらでもやりますけど・・・」


「残念ながらそういうわけでもないんだ。会社関係のことでもあり、魔術関係のことでもある。なんとも厄介な問題だよ」


バイト程度であれば康太たちはいくらでも手伝うつもりだった。今まで奏のところに訓練に来た時、何度も仕事の手伝いをしたことがある。


奏の知り合い、というか親戚のように見られているのか、会社の人間もとてもよくしてくれるし仕事も教えてくれる。


てきぱきと仕事をこなしてそれぞれ仕事の最低限の手伝いくらいはできるようになっている。


特に奏から直接仕事の指示やこうしてほしいという要望を聞けるのが大きかった。普通の社員では社長に直接意見を聞くというのは難しい。そういう意味でのつなぎ役というのが康太たちの存在を大きくしている面もある。


「会社も魔術もって・・・ひょっとして前みたくアイドルの護衛ですか?どっかの連中がちょっかい出してきたとか?」


「ちょっかいで済めばいいがな・・・今回は少々面倒だぞ?少なくとも私は仕事があるから全く動けん」


「その前に私としては奏さんに休んでほしいんですけど・・・そういうわけにもいきませんか」


「いかんな。今回の件にも多少かかわってくる話だ。私はここから動けん・・・まったく・・・社長なんぞになるものではないな」


自分で会社を作っておいて何て言い草だと康太と文は笑ってしまったが、奏からすれば笑えないのだろう。目の下の隈がその凄惨さを物語っていた。


奏が仕事をひと段落させてから、康太たちは応接用のソファに腰かけ奏が話すのを待っていた。


ちょうどいいからとシャワーを浴び、多少ラフな格好になった奏は、康太の淹れたコーヒーを飲みながら大きくため息をつく。


「さて・・・どこから話したものか・・・本来なら直接会わせるのが一番なんだがそういうわけにもいかん」


「どういうことです?とりあえず概要でいいんで教えてもらえませんか?」


「・・・んー・・・簡単に言えば誘拐事件が発生してな。お前たちで誘拐された人をちょっと助けに行ってほしいんだ」


ちょっとコンビニに行ってきてほしいくらいの気軽な感じで誘拐された人物を助けに行ってほしいと言われた康太と文はため息をついてしまっていた。


「それって俺たちの仕事ですか?警察の仕事では?」


「警察も動いてしまっているから厄介なんだ。誘拐犯は魔術師である可能性が高くて・・・というかほぼ確実というべきか」


魔術師が誘拐。なんとも目立ちたがり屋な魔術師だなと思うと同時に、誘拐されたという事実を残してしまっている時点で大した魔術師ではないのだろうかという考えが浮かぶ。


魔術師であれば多少の証拠隠滅くらいは容易だ。そもそも誘拐されたという考えそのものを抱かせないようにすることだってできる。


何かの要求をするにしても、魔術師ならば暗示や洗脳、誘導といった魔術によって何とかできる。


それができないからこそ誘拐という手段に出たのだろうが、どちらにせよそういったことができない魔術師である可能性が高い。


「奏さんとしては、警察に気付かれることなく、その誘拐された人を助け出して、なおかつ誘拐犯も倒してほしいんですね?」


「話が早くて助かる。つまりはそういうことだ。うちにちょっかい出してきたということにも他ならないからな」


奏の言葉に康太と文は首をかしげる。奏の身内がさらわれたのだろうかと少し心配していたが、その心配を感じ取ったのか、奏は手を軽く振って見せる。


「安心しろ、私の身内ではない・・・誘拐されたのは私がお世話になっている会社の社長令嬢だ。今度新しく開拓する部門でも共同開発やら出資やらといろいろと協力している会社でな・・・」


「なるほど・・・そこに手を出されたと・・・でもなんで魔術師であるとわかったんですか?もしかしてその会社の社長も魔術師とか」


奏が世話になっている会社ということもあって魔術師であるのだろうかと考えた康太だったが、奏は首を横に振る。


「魔術師であるというのは私の弟子の情報だ。弟子が一人警察に勤めているものでな・・・そこから情報が入ったんだ」


「あぁ・・・警察が動いちゃってるから逆に情報が入ってきたと・・・」


「そうだ。もう誘拐されて三日になるそうだ。相手の社長も随分と頭を痛めていてな」


なのにずいぶんと悠長にしているなと考えていたが、誘拐だと断定でき、なおかつ警察が動いているということは犯人とある程度のコンタクトがとれているということになる。


もう少し康太たちに早く教えてくれていたら別のアクションもとれていたかもしれないのにと考えながら、その話を聞くことにした。


「犯人とコンタクトがとれてるなら、その要求は?犯人の居場所は?」


「要求はいくつか出ている。というか狙いがわかりやすいな・・・まず金、あと相手会社のいくつかの部門からの撤退、そして逃走用のジェット機のチャーターなどなど・・・」


「明らかにどっかの企業から依頼されてる魔術師の仕事ですよね?奏さんの会社の足を引っ張りたいと・・・」


「まぁそういうことだろうな・・・まったく・・・私はそんなものに関わっていられるほど暇ではない。だからこうしてお前たちを呼んだということだ」


奏がその気になれば魔術協会そのものに依頼を出すことも難しくなかっただろうに、ここで康太たちを招集するということは絶対にこの依頼を完遂してほしいという思いがあったからだろうと康太と文は考えていた。


信頼できる相手に依頼する、それだけ事態を重く考えているのだ。


「なるほど・・・了解しました。確認しておきたいんですけど、その社長とそのお嬢さんは魔術師ではないんですね?」


「両方ともに一般人だ。そのためその両方に魔術の存在を気づかれてはいけない。今その社長宅には警察が張り込んでいる。そのうちの一人が私の弟子だ。話をつけておくからお前たちが動きやすいように取り計らってもらおう」


「ありがとうございます・・・手がかりが何かあればいいですけど・・・」


「あいつも警察という立場を使っていろいろとやってくれているが、状況が状況だからうまく動けん。お前たちが頼りだ」


警察という立場を利用して情報収集や情報操作はできても、勝手に単独で動くというのは難しい。


警察というのは組織だ。良くも悪くもその組織の力は強い。利用できる力もあれば利用されてしまうこともある。


勝手に動くことができるのはそれだけ権力を持ったものか、あるいは権力を全く持たないものくらいだろう。


「ほしい情報があれば私の方から教えられるが、何かあるか?」


「えっと・・・相手社長の家、そしてお嬢さんの情報をお願いします。誘拐されたと思われる状況も知りたいですね」


「あとはその警察にいらっしゃるお弟子さんのこともお願いします。いろいろとお話を伺いたいですから」


康太たちの質問に対して奏は一つ一つ話し始める。それらの情報を康太たちはひとしきりメモしていく。これは気合を入れていく必要がありそうだなと考えながら奏への質問を続けていた。



今回の被害者は須藤香織、中学生。奏と協力関係にある会社の社長、須藤歩の一人娘である。


誘拐の切っ掛け、というか誘拐が明るみに出たきっかけは彼女の下校時に友人と一緒に歩いているときに唐突に現れた車に連れ去られたというものである。


通報したのはその一緒に下校していた友人で、そこから捜査が始まり今に至るらしい。


魔術師にしてはずいぶんと一般的な誘拐の仕方をするのだなと思ったが、おそらくこの事件の背景として奏の会社との関係が無きにしも非ずというところだろう。


要求をのませるのが目的であるために、ある程度しっかりと誘拐されたという事実が認知されないと意味がないのだ。


誘拐されたのは奏も言っていた通り三日前。父親である須藤歩に対して要求を記した文書が送られてきた以外変わったことはない。


その文書は古風にも手紙だった。だが直筆ではなく、指紋なども検出されなかった。郵便などで使われる消印などがなかったことから直接須藤家に足を運んで投函したものと思われる。


娘である須藤香織は携帯電話を持っていたが、途中で捨てられたのか道端に落ちていたのが確認されている。


「警察にも話がいっているとはいえ、一応私の会社にも関係のある話だ。私からの返答としては協力関係を一時的にでもなくしたように見せかけても構わないという旨を送っている。娘が戻ってきたらまた協力関係に戻せばいいだけの話だからな」


「でも念には念をってことですね」


「また同じことが起きないように私たちにお願いということですか」


「早い話がそういうことだ。面倒をかけさせるが、一つ頼む」


相手が魔術師を使っている以上、かなり重点的に痛めつけないと同じ事になりかねない。やはりこういう場合は元を叩くのが一番なのだが、企業間でのやり取りの場合、どこで誰を攻撃すればいいのかも不明である。


とはいえ、相手の魔術師を捕まえればそのあたりもわかるだろうと康太は考えていた。たいてい企業から依頼を受けたのであれば企業内にも魔術師がいる可能性が高い。


外部の魔術師を使っているのか、企業側の人間が実際に誘拐をしているのかどちらかはわからないが、どちらにせよ捕まえて吐かせてしまえばそれで話は済む。


問題はその魔術師の場所、および捕まっている被害者の場所を特定するところである。


「ちなみにその須藤さんの家はどちらに?」


「東京の西荻窪から少し北に行ったところの住宅街だそうだ。都会・・・とは言えないがなかなか閑静な住宅街だぞ?」


住宅街で被害に遭った可能性が高い以上、どこに逃げたのかは正直に言えばわからない。


手紙を投函したということを言っていたが、実際はかなり遠くにいて魔術師だけ門を使用して動いたという可能性も否定できないのだ。


そう考えるとすでに康太たちは手詰まりに近い状態になってしまっているのではないかとさえ思える。


「・・・今回もあの二人の力を借りるか?」


「土御門の?確かに探すのには役に立つかもしれないけど・・・んー・・・どうかしら・・・悪くはないかもしれないけど・・・誘拐犯よ?しかも娘さんは一般人ときてるわ」


「そこなんだよなぁ・・・救出時に気絶させれば話は早いんだけど・・・それだとちょっといろいろと面倒な感じが・・・うまいこと隠匿できればいいんだけど・・・」


今回の話の肝として、被害者がどちらも一般人であるというのがあげられる。つまり救出にしろ襲撃にしろ、魔術の存在を露呈させてはいけないのだ。


被害者である須藤香織にも見られてはいけないのである。救出するという場面である以上見られてしまうのはある意味仕方がないかもわからない。


しかも問題なのはすでに警察が動いているという点だ。警察の中に奏の弟子が一人いるとはいえ不自然なことをすれば康太たちが疑われるようなことになりかねない。


必要ない限り接触は避けるべきであるが、接触しないと情報が手に入りにくいという矛盾を孕んだ状態になりつつあるだけに康太たちは頭が痛かった。


「捜索に関しては土御門の二人の手を借りるのは賛成。でもそこから先は同行させられないわね。戦闘能力としてよりも機密性の意味で」


「機密性って言ったら俺も結構大概だけどな。最近派手な攻撃が多いし」


「そのあたりは否定しないけど、右も左もわからないような新米よりはマシでしょ?そのあたりはうまく立ち回りなさい」


文にこういわれては康太としては逆らう術を持たない。うまく立ち回れと文が言うからにはそれなりの立ち回りをしなければならないだろう。


文ができるというからにはたぶんできるのだ。そのあたりの確証はないとはいえやれるという気持ちだけは作られていた。


「奏さん、現状で犯人の現在位置に心当たりは?」


「ないな・・・だが康太なら直接ポストに入れられていた手紙から相手の情報を読み取れるだろう?」


「まぁ匂いが残っているのなら・・・ちなみに手紙が送られてきたのはいつですか?」


「昨日の朝の段階ではあった。ということはその前にはもうやってきたということになるな。最も遅くて丸一日経過している。早ければ一日半といったところか」


すでにそれだけの時間が経過しているとなると調査は急いだほうがよさそうだと康太は眉をひそめていた。


とはいえ相手が車などの移動手段を使わないとも限らない。そうすると途端に匂いの精度が落ちるし場合によっては途切れることもある。


とにもかくにもとりあえず須藤宅に向かってみるのが最善だろうと康太たちは判断していた。


誤字報告を15件分受けたので五回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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