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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」

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次に向けて

「・・・そうか・・・君たちじゃあ無理か・・・」


「はい。現状俺たちができる手段はすべて取りましたが、最後の一匹を追う手段がなくなってしまいました。とりあえず急いで報告書を作成します。痕跡がなくなった場所も含め、今回の情報をすべて記載しておきますので、早いうちに目を通して別の魔術師に依頼を出したほうがいいと思います」


「すいません、大して力になれず・・・」


「いやいや、君たちの功績はかなり大きいよ。バズも主犯っぽい二人を捕まえてくれていたしね。やっぱり彼の知り合いだからすごいね」


実際は康太たちが取り逃がした敵を幸彦がとらえてくれていたわけだが、実際にどのようなことが起き、どのような結果になっているのかは康太たちの口からは言いにくかった。


何せ自分たちの不手際で逃がしたなどと言えない。報告書には書き記すことになるだろうが、堂々と言うようなことでもないのだ。


「今回の依頼ではこの二人が特に奮闘してくれました。俺たちよりもずっと役に立っていたと思いますよ」


「へぇ・・・この二人は確か君たちの後輩だったっけ?」


「えぇ、なかなかできる二人です。今後目をかけてやってください」


ベイカーはそういって前に出された土御門の二人を観察するとうんうんとうなずいて手を叩く。


「わかった。改めてよろしく。ところで依頼料の話なんだけど」


「それならかなり減らしてくれて構いませんよ。今回の依頼は実質未達成ですから。出すならこの二人に出してあげてください」


康太の言葉に土御門の二人は抗議しようとするが、それを先回りしていた文に取り押さえられ全く何も言えない状況にされてしまっていた。


「こちらとしてはそれでもいいけど、いいのかい?君に何の利益もないように思えるけど?」


「いえ、こっちはこっちで収穫がありました。それにこの二人は魔術師として活動し始めたばかりですから、いろいろ物入りでしょうし」


これは康太だけが考えたことではなく、文にも同意を得ていることだった。今回の依頼ではこの二人の力が大きな活路を見出したのは間違いない。それに比べて康太と文は正直あまり役に立っていなかったのだ。


ならば今後のことも考え、二人に多少なりとも便宜を図ろうと思ったのである。


「・・・わかった、そういうことならそうしておこう。思っていたよりもずっと良心的だね君は」


「褒められてるんですかねそれ・・・ちょっと複雑ですが・・・」


普段どんな風に思われているんだろうと思いながら、康太は仮面の下で苦笑してしまう。


そんなことを考えていると康太たちのいるベイカーの部屋の扉がノックされる。


「おーい、いろいろとわかったぞ・・・ってあれ、もう戻ってきたのかい?」


やってきたのは幸彦だった。尋問が終わったのか、それともただ単に運んできただけか、着ているものも全く汚れておらず、息も全く切らしていない。


「今回のこれは俺らじゃ手に負えないってことで中断してきたんですよ・・・痕跡が完璧に消えちゃってました」


「そうだったのか・・・ビーに追えないってなると・・・やっぱり介入してきたやつがほかにいるっぽいね・・・面倒なことになったなぁ・・・」


「・・・ってことはなんかつかんだんですね?連中が何か吐きましたか?」


幸彦の口ぶりからやはり何かしらの尋問を終えた後にここにやってきたのだなと康太は確信する。


普段の幸彦の姿を見ているからか、そういうことをするような人物には見えなかったのだがと、文は小さくショックを受けているがそんなことは完璧に後回しである。


「うん、君らがにらんだ通り、やっぱり第三者からの介入があったね。しかも彼らはあくまで末端、あのウサギを使って何かしようとしていたらしいけど、そこから先は知らされていなかった・・・あと二人、同時に動いている連中がいるらしいけど・・・」


あと二人動いている人間がいる。その言葉に康太と文は一瞬視線を合わせる。


康太たちが活動している間にそれらしい人物は見ていなかったし感じ取れなかった。地下から出てくる時も特に注意して周囲を索敵したがそれらしい人物には遭遇していない。


やはりあの時魔術師二人を逃がしたのは痛かったと、康太は歯噛みしていた。


「すいません、俺があの時二人を逃がさなければ、残りの二人も捕まえられたかもしれないのに・・・」


「いや、相手にとって有利すぎる状況だ、無理もない。それに・・・たぶんだけど彼らは使い捨てだね・・・仮に君らが二人を捕まえたままにしていても、彼らは助けられることはなかっただろうね」


幸彦の言葉に康太は眉を顰める。彼らの技量は決して低くはなかった。康太には至らないとはいえ攻撃や防御に対しての技量はそこそこある。


一般的な魔術師の中での戦闘能力は中堅どころといったところだろう。その魔術師が末端で使い捨て扱い。


「相手は組織ぐるみですか?もしかして本部を襲った連中とかと関わりが・・・?」


「・・・あぁ・・・そんな話もあったね・・・でもさすがにそのつながりを認めるには少々証拠が少なすぎるね。早合点は自分の首を絞めるよ」


確かにその通りかもしれないと、康太は少し平静を保とうとするが、何か大きな思惑が動いているような気がして仕方がなかった。


その様子を見た幸彦は苦笑して小さくため息をつく。


「まぁ気になっちゃうよね。最近ビーの周りではいろいろあるっぽいし・・・僕の方でもちょっと調べておくよ」


「すいません、お願いします」


大きな陰謀やら秘密組織などは男の子の憧れのようなもの。幸彦もそのあたりを理解しているのだろう。危険な道だとわかっていても首を突っ込まずにはいられないようだった。


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