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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」

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痕跡は途絶え

「というわけです・・・すいません」


「・・・いや、体だけでも持ってきてくれてよかった。君らがいなかったらそのまま奪われていたかもしれないからね・・・これで帰ってきてないのはリュートだけか・・・」


リュート。雷の精霊を入れられている黒い体毛のウサギである。


まだ見つかっていないのはこのリュートだけであるが、もう夜も遅く、なおかつ黒い体毛となるとかなり見つけにくくなるかもわからない。


いくら夜が魔術師の時間帯とはいえ限度がある。何より匂いを途中から追えなくなったというのが不思議だった。


「とりあえずそのウサギのにおいをもう一度覚えてもう一度追います。どこでいなくなったのかがわかれば、まだ探せますから」


「わかった。頼むよ」


康太は件のウサギの入っていたケージをかいでその匂いを覚える。今度追うのは一匹だけでいいのだ。そういう意味ではまだ気が楽というべきだろうか。


匂いをしっかりと覚えた康太は支部の中の段階からその匂いを確認していた。間違いなく門へ移動している。そして門を越えて北海道の大地に立ってもう一度確認すると、その匂いは確かに外へと通じている。


そしてその匂いは平原方向へと進んでいる。平原方向に逃げた二匹のうちの一匹がリュートであるのは間違いないだろう。


だが予知でも索敵でも見つけられなかった。探し方が甘いのだろうかと康太たちは頭を抱えてしまっていた。


「どうしたもんかな・・・これだけの広さ・・・匂いで地道に追ってく以外に方法が見当たらないんだけど・・・ベル、なんかいい案ないか?」


「んー・・・ぶっちゃけ私の索敵もこれだけの広さだと焼け石に水なのよね・・・今のところ匂いは追えるの?」


「まだ追える・・・ただあの時途中から匂いがなくなってたのが気になるな・・・」


匂いがなくなっていた。空でも飛ばない限りいきなりにおいがなくなるということはまずないはずなのだ。


康太が途中まで犬のように地面を這って匂いを嗅いでいると、二匹感じられていた匂いは途中から一匹になってしまっていた。


「ここだ・・・ここでにおいが消えてる」


「・・・ここって・・・何もないわね。ただの平原って感じよ?」


「でもここでウサギの・・・リュート?のにおいが消えてる。こっからは匂いじゃ追えないな・・・二人とも、予知で何か見えるか?」


「・・・いいえ、ずっと平原を探してる場所しか・・・」


「・・・・・・遠い未来も同じですね・・・平原を探してます・・・」


途中でにおいが消えているということは何かしらの手がかりがあっていいはずなのに、この辺りには追っていたウサギのにおいは全くなくなってしまっている。


ここまでなくなっていると本当に空でも飛んだのではないかと思えてしまう。


「他の魔術師がもう回収したとかはないの?人のにおいはかぎ取れない?」


「ダメだな。人のにおいもこの辺りにはない・・・俺らのにおいが残ってるくらいだ・・・んー・・・手詰まりか・・・?」


康太はしきりに辺りのにおいを確認し始め、周辺に自分たち以外の魔術師がいないかを確認し始める。だがやはり匂いは残っていなかった。


「念動力とかで捕まえて移動・・・その場合匂いはどうなるの?」


「匂いのもととなってるものが地面に落ちればそれでも追える。でも普通に歩くよりもずっと少なくなるから追いにくくはなるけどな。でもこの辺りはそれすらないんだよ・・・空を飛んだってより消されたみたいな感じ」


「・・・消された・・・ねぇ・・・」


文は周囲を確認してよくよく観察してみるが、ウサギの痕跡ともいえる足跡や糞などは発見できなかった。


だが注意深く確認していた文は一つ何かを発見することができていた。


「・・・なにかしら・・・これ・・・」


「どうかしたか?手がかり発見か?」


「・・・方陣術の跡ね・・・ほとんど消されちゃってるけど・・・ほら」


文は光源を作り出してから地面を指さして全員に見えるように草をどける。そこには確かに地面にほんの少し残った方陣術の跡のようなものが残されていた。


「どんな術式か解析できるか?」


「無茶言わないでよ、こんなちょっとじゃ術式の解析なんて無理。でもここで何らかの術式が発動させられたのは間違いないわね・・・本当ににおいは残ってないの?」


「・・・ん・・・ダメだな、やっぱ匂いは残ってない・・・方陣術って離れてても作れるもんなのか?」


「不可能ではないけど・・・かなり技術が必要になるわよ?私でも・・・そうね・・・三メートル先に作れるかどうかってところかしら」


方陣術の技術を極めれば遠くの場所に方陣術を作ることくらいはできるらしいのだが、文でも三メートルが限界なのだという。


逆に言えばもっと技量の高い人間ならばもっと遠くに作ることも不可能ではないということである。


「土そのものに術式を書いてるなら、土そのものをどっか別のところから持ってくるってことはできないんですか?そのほうが楽じゃないですかね?」


「・・・それだ!その可能性は大いにあるな!ちょい待ち、地面をちょっと掘ってみる」


康太は地面を掘り返してしきりに匂いを嗅ぎ始める。だが土自体は念動力で持ち上げたのか、においは残されていなかった。


だが上辺の土と埋まっていた土のわずかなにおいの違いには気づくことができた。この辺りの土だけどこか別の場所から持ってこられたものであるという確証を得ることができたのは大きかった。



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