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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」

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北海道の野生

「・・・なんかすごいですね」


「こういうのは初めて見るわね。やっぱり大変?」


「なんか犬みたいですね」


「ちょっと黙っててくれないか、集中したいんだよ」


山に入ってから少しして、康太は四つん這いの状態になって地面のにおいをかぎ、ウサギを追跡しようとしていた。


その姿はまさに犬のようだ。地面についたウサギのにおいを何とか嗅いで後を追おうとしているのである。


「・・・こっちに逃げてきたのは二匹だな・・・水と・・・雷の奴だ。山の奥に進んでる・・・かな・・・?」


康太はそういいながら這うように山の奥のほうへと進んでいく。ウサギのにおいをとにかく追いながら進むしかない。


「・・・あ、先輩、なんかそこの茂みにあるっぽいです」


「茂み・・・?お、本当だ」


数メートル先の茂みを指さした晴に、康太は先ほどまでと同じように這いながらその茂みへと頭を突っ込んでいく。


「何が見えたの?」


「先輩が茂みに頭を突っ込んでなんか見つけて喜んでるところを見ました。手がかりっぽいですけど」


未来予知にて見つけたのか、匂いをたどっていけば結局見つけていたのか、そのどちらともいえないがこの組み合わせによって捜索がかなり加速するのは間違いないようだった。


「よっしゃ、ナイスだ晴。この調子で追っていくぞ」


「ちなみに何を見つけたわけ?」


「糞、ウサギの糞。あいつら結構定期的に糞してるっぽいな・・・これでかなり追いやすくなった」


「・・・ウサギの糞を見つけてこれだけ喜んでるのも珍しいわよね」


「そういうなよ、俺だっていやなんだから。でもこのほうが効率いいんだって」


康太は一定の間隔で残されているウサギの糞や、その匂いを追ってどんどんと山の奥へと進んでいく。

そんな中、明がわずかに反応し周囲を警戒しだした。


「・・・先輩。十分後・・・なんか来ます」


「十分後?なんだ?何が来る?」


明が警戒しだしたということもあって文も周囲の索敵を密にしだした。いったい何が来るのかと康太も晴も警戒しだすが、明は未だにその答えを出せずにいた。


「動物・・・?なんか皆さん急に警戒しだして・・・奥のほうを見てます・・・なんか、大きな影を見てます」


「大きな影・・・一応確認したいんだけど、この辺りって熊出るのかな?」


「・・・確か北海道だとヒグマとかが有名かしらね。結構大きかったはずよ?」


熊。日本に生息している生き物の中でもかなり大型の生き物だ。


昨今町に現れていろいろと被害を出したりしているというのがニュースに上がっているのを康太たちは何度か目撃していた。


「先輩、先輩はナイフで熊倒せますか?」


「それは魔術なしで?それはちょっと勘弁してほしいな。ナイフ一本で熊と戦えとか死ねって言ってるようなもんだぞ」


「魔術ありなら勝てると?」


「そこは勝たないとまずいよな。いや、熊と戦ったことがないから何とも言えないんだけどもさ」


動物園などで熊を見たことがあるとはいえそれもかなり昔の話になってしまう。


具体的な熊のイメージができていないということもあって、熊と戦うということが想像できなかった。


特に熊がどのような動きをするのかも知らないのだ。どうしても想像しにくいものになってしまうのもうなずける話である。


「えっと・・・ヒグマはね・・・オスだと体長二メートルくらいになるんだってさ。かなり強いみたいよ?」


「そりゃ熊なんだから強いよなぁ・・・生身じゃまず勝てん・・・幸彦さんならもしかしたら勝てるかな?」


「あの人を何だと思ってるのよ。さすがに・・・いや・・・うん・・・勝てない・・・と思うけど・・・」


文は否定しながらも幸彦が正面から熊に立ち向かっていく姿を想像していた。しかも何故か熊を圧倒している光景が目に浮かんでしまったのである。


実際はそんなことはありえないと自分に言い聞かしているものの、幸彦ならば肉弾戦で熊を倒すこともできるのではないかと思えてしまうから不思議である。


「体重もかなりあるだろうな・・・もし遭遇したら足から切り崩すか・・・そんでもって背後に回って頭を一突き・・・」


「あんたも倒す方向で話を進めないの。可能なら追い払いなさい。縄張りに入ってるかもしれないのは私たちの方なんだから」


いくら事情があるとはいえ彼ら野生動物の住処に勝手に足を踏み入れているのは康太たちの方なのだ。


勝手に入ってきて襲われたから倒したなんて筋が通らない。何より生き物の血をつけた状態では小動物などは恐れて近づいてこないだろう。


良くも悪くも接近してきている動物は追い払うというのがこの状況においての最適解であることは間違いなかった。


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