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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」
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泡遊び

「わー!お兄ちゃんかっこいい!」


「そうかそうか、神加も頑張ればあぁいうことができるぞ」


「ほんとに?頑張る!」


先ほどの康太の攻撃はすべて今の神加でも使える攻撃に限定して行われた。


必要な筋肉などはあるかもしれないが、魔術的な意味では神加の覚えているいくつかの魔術で代用が利くものばかりだ。


「それと神加、シャボン玉を壊すなら遠隔動作の魔術でもいいんだぞ?こうやって、ほいっと」


康太が拳を突き出すと遠くにあったシャボン玉が砕ける。遠隔動作の存在をすっかり忘れていたのか、神加はなるほどと納得していた。


蹴りだけではなく、遠隔動作の魔術を使えば手が汚れないということに気付いたのか、ボクシングのように拳を何度も突き出して少し離れたところにあるシャボン玉を何個か壊すとうんうんとうなずいて神加は笑みを作り、再びシャボン玉に向かっていった。


「随分としっかりと教えたな・・・お前のことだから一気に壊すと思ったが」


「それじゃ手本にならないでしょ。っていうか神加って距離感すごいいいですよね。さっきからシャボン玉外してないんじゃないですか?」


康太の攻撃を見習ってそれらしい動きをしながら拳を突き出してシャボン玉を壊していっている神加だが、先ほどからシャボン玉への攻撃を一度も外していない。


康太は距離感の調整が難しく、遠隔動作の魔術をまともに使えるまでかなり時間がかかったように記憶しているのだが、神加はそのようなことはなくすでに使いこなしている様子だった。


弟弟子の上達は素直に喜ぶべきなのだが、自分が苦労した魔術をこうもあっさり自分のものにされ、康太は少しだけ複雑な気分になっていた。


「子供の頃の物覚えというのはすさまじいというだけだ。お前の年になってからあのような魔術は才能がない限りてこずるだろうよ。それに神加の場合、見えている、あるいは近くにあるものにしか使っていない。距離ができてくるとあんなふうにはいかないだろうな」


「なるほど・・・確かにそうかもしれませんね。シャボン玉って見えやすいし」


近くにあり、なおかつ見えているのであればそこに拳をぶつけるイメージを作り出せば遠隔動作の魔術をコントロールするのは比較的難しくはない。


だが目に見えない場所。特に位置座標だけを確認して発動するのは難易度が一気に変化する。


神加は今までそのような発動方法をしてこなかったために今後が少し心配ではあるがこれだけ攻撃を繰り出せるというのはうれしい誤算と思うべきだろう。


「さて神加さん、ちょっと難易度を上げますよ。今度のシャボン玉は攻撃してきます」


「え?」


真理の合図とともに周囲を浮いていたシャボン玉が一か所に固まっていき、連結していき形を成していく。


いったい何の形になっていくのかと思っていたら、作り出されたのはいくつものシャボン玉で作り出された人形だった。


頭や腹部、股間部分などが赤いシャボン玉で作られており、急所を模していることがすぐにわかる。


真理はシャボン人形を操って神加めがけて攻撃を仕掛ける。とはいっても人形を動かして殴りかかるような動作をしているだけだ。


シャボン玉なのだから当たったら壊れるのはシャボン玉の方なのだろう。だが真理とのシールはがしの訓練のおかげか、神加は振り上げられた腕を見てほぼ反射的に回避行動をとっていた。


「ほう・・・しっかり反応するか」


「まぁゆっくりでしたし。あれくらいは大丈夫なんじゃないですか?」


「相手の攻撃だと認識して、シャボン玉だと侮らずにしっかりと回避行動をとった。もしかしたら反射的なものかもしれないが、どちらにせよちゃんと訓練の成果は現れているな」


相手がシャボン玉というと、どうしても油断が生じて突っ込みたくなるかもしれない。体ごとたたきつけてすべてのシャボン玉を壊そうとするかもしれない。


だが神加はそれをせずに警戒し、しっかりと攻撃を回避した。


ただ単なる習慣かもしれないが、それは小百合にとってうれしい行動だったのは言うまでもないだろう。


「うー!来ないで!またべたべたする!」


「・・・単にべたべたするのが嫌だったっぽいですね」


「・・・はぁ・・・やはりまだ子供か」


せっかく小百合が珍しく褒めたというのに、なんとも子供らしい理由で避けていたことに康太は少しだけ笑ってしまっていた。


よほどべたべたするのが嫌なのだろう。神加は割と本気でシャボン人形の攻撃を回避している。


徐々に真理はシャボン人形の動かす速度を上げているが、それでも神加はしっかりと回避することができていた。


これこそ今までの訓練の成果だろう。この結果こそ小百合は驚き、喜ぶべきなのだ。


「ほらほら神加さん、攻撃しないとべたべたの恐怖は終わりませんよ!」


「うー・・・!えい!」


神加はシャボン人形の攻撃に合わせるように障壁を作り出し跳躍すると、赤いシャボンで作り出された顔面めがけて蹴りを放つ。


とっさの反応にしてはタイミングは完璧だった。


カウンターで神加の攻撃が当たるかと思われたその瞬間シャボン人形は神加の攻撃を回避する。


「ふふふ、今度のシャボンは逃げますよ?神加さんに捕まえられますか?」


少し大人げなくなっているように見える真理だったが、康太も小百合もこれが真理なりの対人訓練の予行練習であることは理解していた。


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