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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」
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ネクストステップ

「とはいえあれですよ?いきなり組手とかは許しませんよ?そんなことしたら神加が壊れます」


「お前はあいつの保護者か何かか」


「一応兄弟子です」


「私はあいつの師匠だが、あいつの指導方針について絶対の決定権があるのではないのか?」


「師匠のそれは危険すぎるので却下です」


「・・・師匠というのはずいぶんと肩身が狭いんだな、知らなかった」


小百合は大きくため息をつきながらパソコンを眺め、何やら考えだす。神加がどのような魔術師になるのか、というかどのような戦闘方法を主軸にするのかは小百合もまだイメージができていないのだろう。


真理は主に射撃戦を得意とし、近接戦もこなせるオールラウンダー。康太は近接戦を得意とし、最近は牽制として射撃も扱い始めた準接近戦を得意としたインファイター。二人とも両方の技術を持っているとはいえ、その素質や才能によって戦法は大きく変わっている。


康太の場合まだ発展途上と言えなくもないが、ある程度戦闘の形は決まってきている。


未だ人間としても未完成な神加がどのような戦闘方法を得意とするようになるのかは今のところ全くプランがないのだ。


「神加の武器って今は金槌ですけど、師匠は何かいい案はあるんですか?俺の時は槍を勧めてきましたけど」


「ん・・・鈍器、刃物といろいろと考えてはいるんだが、体も何もできていない今のところ単純な動きのほうがいいだろうとは考えている。将来的には私の使っている武器を譲るつもりでいる」


「使っている武器って・・・刀ですか?神加に扱えますかね?」


「そのあたりは訓練あるのみだ。あいつの素質を考えたら広範囲の攻撃を連続して繰り出せる。刀は相性はいいだろう」


刀という武器は切れ味こそ高いものの、武器本体の耐久力は低めになってしまっている。そのために魔術などを行使して間接的に攻撃するのが適切な使用方法である。そういう意味では神加は素質にも恵まれているため、刀を使用するというのは間違ってはいないように思える。


「でも神加には精霊がたくさんいますよね?属性魔術を主に使える武器のほうがいいんじゃないですか?」


「・・・あれが将来、お前の年頃になってもまだ多くの精霊に愛される存在であればそれも考えるがな」


「・・・師匠はそうならないと考えてるんですか?」


「そうあり続ける保証がないというだけだ。子供の頃に特殊な力を持っているケースというのは少なくない。たいてい大人になるにつれてそれらは失われていくものだ」


幼いころに霊感などがある人でも、大人になっていくにつれてそういった感覚がなくなっていくという話は聞いたことがある。


小百合も神加に対して似たようなことを危惧しているのだろう。


今でこそ多くの精霊に愛されている神加ではあるが、それがずっと続くとは限らない。もしかしたら徐々に精霊は少なくなっていき、最後には精霊はいなくなってしまう可能性だって十分にあり得るのだ。


あとに残されるのは彼女本人の素質。それでも十分以上に強いのだが、今から精霊をあてにしないほうがいいというのが小百合の考えのようだった。


それは間違っているとは言えない。今ある力ではあるが、これからもその力があり続けるという保証がない以上、彼女自身が持つ力だけに期待して修業するのが適切だろう。


もったいないと思われるかもしれないが、本当に神加に力をつけさせるにはそのほうがいいのかもわからない。


「とはいえ蹴り技ですか・・・なんかいろんな意味で難しそうですね・・・シールはがしみたいにできるとは思えませんし・・・」


「・・・それに関しては少し考えがある。昔私がやった方法をとる」


「・・・あの、危なくない奴で頼みますよ?」


「安心しろ、この訓練を考えたのは幸彦兄さんだ」


「あぁ、それなら安心ですね」


幸彦と小百合では圧倒的に信頼度に違いがあるのがこのやり取りからもわかる。小百合は相変わらずこの弟子は失礼な奴だなと何度思ったかもわからないことを考えながら大きくため息をつく。


「ちなみに、具体的には何をするんですか?」


「魔術と体術の併用訓練だ。それに合わせて足技を教える。今のあいつならうまく扱えるだろう」


魔術と体術を同時に使う。神加は確かに体を動かしながら魔術を発動するのは得意なほうだろう。


魔術の同時発動を行える程度にはすでに魔術を多く習得している。すでに高いレベルの技量を有しているとはいえそこはまだ小学生だ。


大したことができるとは思えない。


そのように康太が考えていると、小百合は今にあるタンスの中からいくつか道具を取り出していた。


「え・・・?それ使うんですか?」


「あぁ、これがなかなか難しい。まぁやってみればわかる」


それがいったいなんであるのか、康太はすぐに理解できた。康太も使ったことのある、おそらく子供の多くが見たことがあり、使ったことがある道具が小百合の手には握られていた。


それを使って訓練するというのが康太にはイメージできなかったが、康太の心配をよそに小百合はさっさと真理たちのいる地下のほうへと向かっていった。


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