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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」

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ブライトビーの噂

二人の戦いを、いや戦いとも呼べないような一方的な蹂躙を見て、一年生の女子魔術師二人は体の震えが止まらなくなってしまっていた。


戦いを望んだつもりはない。だが一年生として派閥を組むということになってしまい、なおかつそのトップが喧嘩を挑んだ。


体格的に勝っているはずのトール・オールは全く歯が立たず、一方的にやられた。


二人のうちの一人、先ほどブライトビーの名前に反応した女子魔術師の体の震えが止まらないのはもう一つ理由があった。


ブライトビーについての噂をいろいろと聞いているからである。


曰く、戦って敗北したものは、二度と魔術師としての活動は望めないような目に遭わされる。


曰く、戦って生き残っても、四肢の一つで済めばよいほうである。


曰く、敵に回したが最後、最後まで追い詰められる。


曰く、その身に強力な呪いを宿し、敵対したものを呪い殺す。


曰く、彼の師匠は、彼よりも性質が悪い。


ただの噂だと思っていた。ブライトビーの名前は協会の掲示板で何度か目にした程度だったが噂には事欠かなかった。


支部の中で戦闘行為をやったことのある人間というのは良くも悪くも噂の対象となってしまうのだ。


事情がどうあれ、魔術師としての戦いを見せた時点で他の魔術師からの印象は決まる。康太は何度か支部内で戦っているのだ。


その様子も、その光景も多くの者が見ていた。


デブリス・クラリスの弟子『ブライトビー』その悪名は協会に数えられる程度しか足を運んでいない新米魔術師の耳にも届くほどになっていたのである。


そんな魔術師に、自分の派閥に所属することになった、なってしまった魔術師が喧嘩を売り、瞬殺された。


彼女は自分がこれからどのような目に遭わされるのか想像し、震えと涙が止まらなくなってしまっていた。


彼女自身に戦闘能力などほとんどない。彼女はそもそも戦闘などするつもりのない魔術師だったのだ。


歯向かうことなどできるはずがない。戦闘能力に自信のあるものさえ負けたのだ。新米でまだまだ未熟な自分たちがかなうはずがないと女子魔術師二人はすでに戦意を喪失してしまっていた。


「あーあ、叩きのめしちゃって・・・生きてるでしょうね?」


「大丈夫だろ、あんだけ体格良ければ。脳震盪おこしてるだけだと思うぞ?たぶん」


確証はないために少し不安そうに倒れたままのトール・オールを眺める康太、そしてそんな康太に近づく文。


そして康太から徐々に距離を取ろうとする一年生の女子魔術師二人。文はその二人の様子を見て大きくため息をついた。


「ほら、あんたがいきなりやらかすから怖がらせちゃったじゃないの」


「え?マジで?いやいや、喧嘩売られたから買っただけじゃんか。ていうかかなり加減したほうだぞ?武器も使わなかったし」


「あんたの場合その体そのものが武器になるってことを理解しなさい。人間があんな動きするの初めて見たわよ」


「おうよ。頑張って練習したからな」


「あんたの動きじゃなくてぶっ飛ばされたトール君の方よ・・・まったく・・・ごめんなさいね、あなたたちに危害は加えないから安心して」


文が女子魔術師二人に近づいて安心させようとする。康太と一緒にいるということで文も同等の戦闘能力を有していると思われているのか、女子生徒の恐怖の視線は文にも向けられている。


まさか自分がこんな目で見られることになるとはと文は複雑な心境になりながらも女子二人をなだめていた。


「そっちの子、ビーの名前を知ってたのね?さっき反応してたでしょ」


「え・・・あ・・・は、はい・・・知ってました・・・ああああの・・・私たち・・・どうなっちゃうんですか・・・?」


「どうなっちゃう・・・っていうのはどういうこと?」


「あの、あの・・・ブライトビー・・・先輩は・・・敵は叩き潰すって・・・敵になったら終わりだって・・・噂で・・・」


そんな言葉を聞いて康太と文は絶句していた。いつの間にそんなうわさが流れていたのだろうかと二人は視線を合わせる。


だが考えても見ればそんなうわさが本人に届くはずもない。二人が知らないのも無理もなかった。


「大丈夫よ、ビーはそんなひどいことはことしないわ。特にあなたたちみたいな最初から戦うつもりのなかった子たちにはね」


「ほ、本当ですか?」


「えぇ、私が保証するわ」


「・・・で、でも、私たち・・・止められなくて・・・」


「あんな大きな男の子に何か言われたら反論なんてできないでしょ?仕方がないわ。あなたたちは無理やり従わされてただけ、そうでしょ?」


そうだといいなさいというかのような誘導的な文の言葉に、女子二人は何度も首を縦に振る。


悪者を一人作ってこの女子二人は助けようとしているのだろう。文らしい方法だなと康太は自分の噂についてショックを受けながら倒れたままのトール・オールのもとに歩み寄るとその状態を確認していた。


幸い死んではいないようなので、上半身だけ起こすと無理やりに意識を覚醒させることにした。


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