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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」

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急遽来訪

「よし・・・条件としてはこんなものかな・・・あとはこれに近しい物件を探していくだけかな?」


康太たちが考える位置と幸彦がおすすめする位置を鑑みて康太と文はおおよその位置を確定していた。


とはいってもその場所に条件に該当する物件があるかはまだわからない。今後それらを探していくことになるだろう。


今は不動産屋に行かずともネットでいくらでもそのあたりを調べることができるため、見つけるのは時間の問題というところだろう。


「二人が拠点を持つなんてね、いろいろと思うところがあるなぁ・・・僕が歳をとるわけだね」


「何言ってるんですか、幸彦さんまだ若いでしょうに」


「いやいや、やっぱり動いてると体の衰えを感じるよ・・・反応が鈍くなっているのがありありとわかる・・・っていうかこの間聞いたんだけど、二人とも久しぶりに本気で戦ったんだって?」


小百合から聞いたのか、それとも真理から聞いたのか、幸彦は康太と文が一年の節目に戦ったことを知っているようだった。


別に隠すようなことでもないのだが、こうやって当たり前のように知られているのは少々気恥しくもある。


「えぇ、またしてもビーに負けました。まだまだ未熟であると実感します」


「勝ちはしましたけど結構反省点の多い戦いでした。っていうかベルがその気だったらたぶん負けてたと思います」


互いに自分自身の反省点と楽な戦いではなかったことを口にする二人に幸彦は小さく笑ってしまっていた。


互いに互いの実力を認めているからこその反応である。その反応をどこかで見たような気がして幸彦は面白かったのだ。


「そうかそうか、ちなみにベル、君の敗因を教えてくれるかな?」


「えっと・・・自分の魔術を自滅覚悟で使ったんですけど、巻き込まれてみたら無茶苦茶集中が乱されちゃって・・・自分の使う魔術の威力を正確に把握していなかったのが敗因の一つです」


「ふむふむ・・・で、ビー、君の勝因は?」


「ベルの攻撃にひるまず突っ込んだことだと思います。多少無茶をしましたけどその分の実入りはありました。特に面白い戦い方思いついたんですよ」


「へぇ、どんな?」


康太は幸彦に自分が文との戦いで使った手法を説明した。体の一部を起点として噴出の魔術を使い、体を強引に相手に当てて攻撃する。


隙だらけではあるが勢いがあり、なおかつ威力も高い。機動力と攻撃力を兼ね備えた戦いではある。


康太からすれば新しい攻撃方法であり、新しい肉弾戦の形なのだが幸彦としてはあまり良い使い方ではないと思っているのか何やら唸りながら難色を示していた。


「うーん・・・正直に言ってその使い方はあまり推奨できないなぁ」


「へ?どうしてですか?」


幸彦のことだからてっきりこの使い方を理解してよりよく改良するかと思ったのだが、そもそもこの使い方そのものが推奨できないという否定的な意見を出してきた。


幸彦にしては珍しいなと思いながらも、幸彦がそういうのであれば何かしら理由があるのだろうと康太は耳を傾けていた。


「実はその方法ね、僕も昔やったことがあるんだよ。その噴出の魔術は僕も使えるからね。あんまり使わないけど」


「そうだったんですか。でもそれならなんで・・・?あれって隙は大きくなりますけど体の自由が利かない時でも使えるから便利ですよ?」


「逃げるのに対しては役に立つだろうね。でもその状態で向かっていっても怪我をするだけだよ。僕は昔手首を痛めた。自分の意志で殴るのと違ってただ押し付けてるっていうかぶつけてるだけだからね・・・」


普通に全力で殴るときでさえ、一つ間違えば手首を捻り怪我をしてしまうものがいる。ただ殴るだけというがそれだけでもかなり危険なのだ。


しっかりと手首の筋肉を鍛え、なおかつ変な手の形や向きで殴らないことが何かを殴るときの鉄則である。


基本的な動作を繰り返せば、そういった正しい拳の握りなどがわかるのだが、体の自由が利いていなかったり、満足に態勢が整っていない状態で噴出の魔術により強引にたたきつければどうなるか。


二人の話を聞いていた文はようやくそのことを理解した。あの時康太は噴出の魔術で攻撃してきたとき、蹴りや掌底などを繰り出していた。単純に拳が握れなかったからそうしたというのは理解できるが、もしあの場で康太が拳を握っていたらどうなっていたか想像に難くない。


「なるほど、確かに危なそうね・・・ビー、あの使い方はやめておきなさい」


「ちぇー・・・せっかく思いついた使い方だったのに」


「なかなかいい使い方だと思うよ?その様子だと武器にも使っているんじゃないのかな?そっちは比較的安全だから多用しても問題ないと思うよ」


自分の体を叩きつけるのではなく武器を叩きつける形であれば康太の噴出の魔術は非常に強力な武器になる。


戦いにおける機動力の強化に加え攻撃の強化にもなる。この魔術を教えてくれた奏には感謝の言葉しかなかった。


「さて・・・それじゃ二人はどうするんだい?物件探しに出かけるの?」


「そうですね、いい感じの物件があれば実際に見てみようと思います。周辺の地形とかも知っておきたいですし」


「場所が決まったら協会にいる担当者に話を聞いてみるといいよ。周りにどれくらい魔術師がいるのか教えてくれると思うから」


どんな魔術師がいるのか、どんな行動をとっているのかはさすがに守秘義務があるために言えないだろうが、どのくらいの数の魔術師がいるのか、そのくらいは教えてくれるらしい。


以前の九州の時の様に大量に魔術師さえいなければそれでいいと康太と文は考えていた。

あれだけの数を一度に対応するのはかなり厳しいものがある。


「担当者って基本的にどこにいるんですか?」


「たいていは受付の人に話すと紹介してくれるよ?君たちならすぐに話を通してくれると思うよ?」


幸彦は康太と文を引き連れてエントランスまでやってくる。受付のほうを指さしながらいろいろと説明してくれていると、康太の姿を見つけてこちらに駆け寄ってくる二人の魔術師の姿があった。


「ビーさん!ブライトビーさん!」


「お久しぶりです!お元気にしていましたか?」


「ん・・・?あれ・・・?どっかで・・・?」


唐突に呼ばれて康太が振り向くと、そこにはどこかで見たような仮面がそこにあった。そして自分のことを呼ぶ声がどこかで聞いたことのある、いや妙に聞きなれた声であるということにも気づくことができていた。


妙になまったイントネーション、それが関西独特のものであるということに気付いた文は二人の正体に勘付く。


「あれ?あんたら土御門の双子じゃない?」


「え?ハレとメイか?」


魔術師の仮面をつけているということで康太は二人の術師名を呼んだ。その反応に二人の魔術師はあたりですと大きくうなずく。


土御門の双子、晴と明。康太たちにとっては何気にかかわりの深い魔術協会以外の魔術師である。


康太は一度土御門の双子の魔術師としての仮面を見ているが、長い間見ていなかったということもあって忘れかけていた。


こんなデザインだったなぁと思い出しながら感慨深そうにうんうん頷いていると康太と一緒にいる文のほうを見て双子が目を細める。


「あ、ひょっとしてそっちの方はライリーベルさんですか?お久しぶりです」


「久しぶりね、その節はお世話になったわ。あれのおかげでいろいろ助かったのよ」


「力になれたならよかったです。ところで・・・そっちの大きな人は」


康太と文と一緒にいる幸彦を見て晴と明はやや委縮してしまっているようだった。


無理もないかもしれない。幸彦の体格は二人に比べてかなり大きい。身長的な意味でも分厚さという意味でも幸彦の体は大きいのだ。


「あぁ、この人は俺の師匠の兄弟子だ。バズさん、この二人は土御門の天才双子です。今中学・・・あ、この四月で高校生になったんだっけか?」


「はい。初めまして。土御門ハレです」


「同じく土御門メイです。あのクラリスさんの兄弟子さんですか!」


小百合の兄弟子という存在を初めて目にして二人はテンションが上がっているのか、幸彦にあこがれのまなざしを向けている。


幸彦もきっと恐ろしく強いのだろうなという勝手な想像をしているのだろう。その想像が当たっているのが何とももどかしい。


「あはは・・・初めまして。デブリス・クラリスの兄弟子、クレイド・R・ルィバズです。ビーとベルがお世話になっているみたいだね」


「いえいえそんな、俺らの方こそお世話になりっぱなしっす」


「そうですよ。ブライトビーさんに至っては以前土御門の騒動に巻き込んでしまいましたし・・・」


土御門の家の人間としては四法都連盟の中の内輪もめに外部の人間を巻き込んでしまったことになる。


そういう意味では少々負い目を感じているのかもしれないが、その程度のことは康太は気にしていなかった。


むしろ今気になるのはなぜ協会の日本支部にこの二人がいるのかということである。


「なぁ二人とも、なんでここにいるんだ?なんかのお使いか?」


「あー・・・そっか、説明してませんでしたね。実はこの四月から俺ら魔術協会の所属になって活動することになったんですよ」


「魔術師としての見聞を広めるためにいろいろやろうと思ってるんですよ」


「・・・え・・・?」


土御門の双子の言葉に康太と文は目を丸くする。そして幸彦は嫌な予感がするのか額に手を当ててため息をついてしまっていた。


土御門の双子は康太が言った通り天才だ。未来の土御門の中核を担うといっても過言ではない虎の子の秘蔵っ子だ。


そんな秘蔵っ子を魔術協会の所属にするというのはどういう考えがあるのか。というか土御門の本家の人間は何を考えているのかと康太と文も額に手を当ててしまっていた。


「それでとりあえず何か依頼を受けようかと思いまして、先輩たち何かいい依頼知りませんか?」


「知ってたら教えてほしいです。良ければご一緒したいです!」


これは面倒なことになったぞと康太と文、そして幸彦は視線を交わしながらどうしたものかと悩んでしまっていた。


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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