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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」

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将来の話

「まぁこれらはあくまで理想です。実際はお二人ともまだまだこれから先にいろいろと考えることがあるのでしょうから、最低限のただの部屋を借りるというのも一つの手ですよ?いきなり大きな部屋を借りても手持無沙汰になってしまいますからね」


真理の言うことはもっともだ。使いもしない部屋にそこまでの大金を支払うというのはさすがにもったいない。


金を持っているということと無駄遣いできるということはイコールではないのだ。可能な限り節約したいと思うのは自然な思考だろう。


「そのあたり文としてはどうよ、最低限のラインとしてどれくらいはほしい?」


「そうね・・・ワンルームはさすがにいやね、せめて1LDKくらいはほしいかなぁ・・・一応実験室的なものが欲しいのよ」


「実験室?」


「そう、魔術の実験をする部屋。私の魔術の試し打ちをする場所っていえばわかるかしら?」


普段文は自分の魔術を発動、そして応用の訓練を春奈の修業場で行っている。そして実戦に使えるレベルになったら小百合の店で戦闘訓練の一環として試しているのだ。


拠点として活用するのであれば魔術師として普段やっていることができる場所が欲しいのだろう。


魔術師としての拠点に必要なものを考えるコツがわかってきた康太は普段自分が魔術師として何をやっているのかを考え始める。


「じゃあ俺は装備を置いておけるスペースと、装備を作れる場所が欲しいな。俺の場合は金槌と工具関係があればあとは棚を作ればそのあたりは事足りるけど」


「ふむふむ・・・ちょっと大きめの部屋を私の実験とあんたの倉庫に割り当てましょうか。くつろげるスペースとは隔離して、眠れる場所とも隔離となると・・・」


「・・・あれ?これ会議する場所とか考えるとやっぱり3LDKくらい必要になっちゃうのか?」


「会議をする場所は最悪リビングでいいとしても2LDKね。結構かさみそうだわ・・・あんたバイクも置いておく場所欲しいでしょ?」


「あぁ、となると駐車場も必要だな」


リビングはくつろぐスペース、一つは寝る場所、一つは工作兼実験室、そう考えると最低限2LDKは必要になる。


さらに駐車場も一緒についているとなるとなかなかに条件が限られてきてしまう。


現実的に拠点のことを考えると真理の言っていたことがなかなかに的を射ているということに二人は妙に納得してしまっていた。


「そうやって二人で話して、妥協点を探っていくのが一番でしょう。必要ならば奏さんに良い物件を斡旋してもらうというのも一つの手ですよ?」


「そうですね、そうなったら奏さんの力を借ります。その前にいろいろと調べてみるか。通いやすさが重要だよな」


「あと門のある教会近くね。あらかじめ門のある教会の位置を知っておかないと・・・一度協会に行って調べに行きましょうか」


魔術協会に出入りすることがそれなりに多い康太たちだが、門の位置を把握しているというわけではない。


康太たちが住んでいるあたりで条件を満たし、なおかつ門を配備した教会の近くにある物件となると探すのはなかなか難しいかもしれない。


「ふふ、一人前の魔術師としての活動の始まりということですね。お二人が少しうらやましいです」


「一人前だなんて・・・っていうか姉さんのほうが一人前になるのはずっと早いでしょう?そろそろ師匠から卒業試験を受けるみたいな話してませんでした?」


「えぇ、一応そろそろ師匠から教わることが少なくなってきたとのことですので。それが終われば一度就職活動に集中して、それが終わり次第一人前の魔術師として活動を開始しようかと」


「・・・あぁ・・・姉さんは就職活動がありましたか・・・」


「なかなかに厄介なものですが、一般人としても生きる以上は必要なことです。奏さんから誘われてもいるんですが、正直それは最終手段ですね」


真理はそれなり以上に優秀な人間だ。奏が目をかけるのも無理はない。文も現段階で奏の会社に来ないかと言われているくらいだ。


とはいえ奏に世話になりすぎるというのも問題だ。真理としては可能な限り自分の力で就職したいと考えているのだろう。


「ちなみに姉さんはどんな魔術師として活動するんですか?」


「そうですねぇ・・・協会内での評価も安定していますから協会で依頼を受けたり協会内での仕事をする魔術師になろうかと。特に物資関係の。そうすれば師匠の店からいろいろと融通を利かせられますからね」


「あぁそうか、そういうのもありなんですね」


小百合が魔術関係の道具を扱っていることもあり、協会内で道具などを取り扱う部門に取り入れば今後優位に事を運ぶことができる。


自分のコネを最大限活かして活動しようとする辺り真理は本当に有能だ。


康太の様にのほほんとただ漫然と日々を過ごしているだけではなく常に将来のことを考えて行動しているように思える。


こういう考えができるから敵を作らないような立ち回りができるのだなと、今更ながらに兄弟子のすごさを垣間見て康太は感心してしまう。


「すいません、話がそれてしまいましたね。お役に立てたでしょうか?」


「はい、ありがとうございました。すいません修業の邪魔しちゃって」


「構いませんよ。神加さんの休憩にもなりましたから」


神加との修業に水を差す形になってしまったが、神加の休憩という意味ではちょうどよかったのかもしれない。


真理は朗らかに笑いながらあれやこれやと話し始める康太と文を見て自分もこれからあのように考え始めるのだなと今更ながら実感し始めていた。


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