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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」
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一瞬の攻防

文は攻撃するために電撃の魔術を、康太は文に接近するために噴出の魔術を発動した。


文の電撃を高速で移動することで回避しながら一気に距離を詰める康太。その機動力は今までのそれとは比べ物にならない。


もとより高かった康太の機動力は噴出の魔術によってさらに高くなっていた。


文は後退しながら康太めがけて電撃を放っているが、康太にとってただの電撃はもはや脅威とならないようだった。


不規則な動きをしている電撃だが、実際は文の魔術によって水の通り道が作られている。ほんの少し風を作り出してその軌道をそらせてしまえば大きな動きをしなくても直撃することはない。


康太が文との距離を詰めるのにそう時間はかからなかった。


文が槍の射程内に入ると同時に、康太は槍を振るい文めがけて攻撃を仕掛ける。だが文もその動きをあらかじめ予想していたのだろう、康太の槍を完璧に見切って回避して見せた。


急速に移動してきたために通り過ぎる形で振るわれた槍を回避され、康太はそのまますれ違う形となるが、空振りした槍の反動で回転した体の勢いをそのままに片方の手を文のほうへとむける。


その瞬間、その手から勢いよく炎が噴出する。


間近で炎を噴出された文だが、目の前に水の塊を構成することでその炎をほぼ無力化して見せていた。


倉敷ほどではないが文も水属性の魔術を得意としている。瞬間的にこの程度の水程度であれば作り出すことはできるようだった。


康太の炎を防ぐと同時に、文は水を蒸発させたことによってできた水蒸気に自らの電撃を流し込んで反撃する。


廊下の一角を満たすように発生した水蒸気に乗った電撃は康太の体にも襲い掛かるが、康太は即座に再現の魔術によって足場を作り体勢を整えると噴出の魔術を発動して水蒸気から逃れた。


だが逃れると同時に康太は空に向かって蹴りを放つ。その蹴りに対して遠隔動作の魔術を発動し文の体を攻撃していた。


だが文もその攻撃を読んでいたようだった。自らの腕を盾にする形で康太が放ってきた遠隔動作の蹴りを完璧に防いで見せる。


あらかじめ康太がどこを攻撃するのかわかっていないと防ぐことはできない。完璧に康太の攻撃パターンを理解したうえでの防御だった。


さらに康太は文との距離ができてしまったことで火の弾丸とそれに混ぜる形で鉄球を文に向けて放つ。


現象系と物質系の攻撃、文もその攻撃を即座に理解したのか自分の腰につけてある鞭を取り出し、その鞭に電撃を流しながら火の弾丸を的確に打ち落としていく。


さらに鞭にまとわせた電撃が文めがけて襲い掛かる鉄球を磁力によって吸い寄せ、その軌道を大きく変えていく。


文めがけて襲い掛かっていた鉄球はその軌道を無理やりに変えられそのすべてが壁や天井、床などに命中していた。


回転しながら地面に着地する康太と、鞭を振るいながら小さく息をつく文。一瞬の攻防だったが密度の高い読みあい、そして攻撃と対処の応酬。


並の魔術師では今の攻防で何が起きたのかを完璧に理解することはできなかっただろう。それほどの瞬間的な攻防が二人の間で繰り広げられていた。


「いきなりご挨拶ね。もうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?」


先ほどのお返しとばかりに笑いながらそういう文に対して、康太は眉をひそめながらも笑ってしまっていた。


「今のを完璧に防ぎきるかよ・・・畜生、こっちの動き完全に読まれてんな」


先ほどの康太の攻撃に対して文が行った対処は、文の持っている魔術を考慮すればほぼ最適解に近かった。


康太の攻撃を読んだうえでその攻撃に対する対処を可能な限り少ない魔力で実現するために、必要な魔術を厳選しその応用を一瞬で構築する。


もとより文は応用や同時発動などが得意なタイプではあったが、先読みができるとはいえ康太の攻撃に完璧に合わせることができるだけの発動速度を兼ね備えているとは康太も思わなかった。


「その鞭もだいぶ使えるようになってきてるじゃんか、全部撃ち落とされるとは思ってなかったよ」


「頑張って練習したもの。それでもまだあんたには当てられないわ。あぁいう単純な攻撃に対してじゃないと当てられない・・・でも十分厄介でしょ?」


「・・・全く持って厄介だよ・・・ったく、嫌な武器使いやがって」


文の放つ電撃であれば康太は容易に回避することはできる。


それは電撃が一定の法則を持って動いているからである。予測はできるし実際その通りに動いてくれるのだから回避自体はそこまで難しくない。


だが文の鞭はその法則とは全く別の動きをする。


文が自分自身で動かしているのだから当たり前だが、その動きは電撃とは全く違う。早さも法則も、そして何より鞭という武器の性質上避けにくい。


しかも当たってしまえば文の電撃が込められているので体が一瞬硬直する。回避が難しくなるのは言うまでもないが、そのまま文に畳みかけられても不思議はない。


それにしても、康太はわずかにショックを受けていた。普通の魔術師ならば間違いなく倒すとまではいわなくてもある程度ダメージを与えられていただろう連続攻撃をあそこまで簡単に防がれてしまってはそれも当然である。


だがだからこそ、康太はより一層気を引き締めていた。


自分の目の前にいる魔術師は、今まで戦ってきた誰よりも強敵であると認めたうえで槍を構えなおす。


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