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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十一話「新しい生活」
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あの時と同じように

康太と文が戦う日の夜、康太は小百合、真理、神加を引き連れて自分たちの通う三鳥高校にやってきていた。


一年前そうしたように、魔術師装束を身にまとい校門の前に立つ。索敵の魔術で周囲を確認するが、康太の索敵では入り口までも索敵できない。


もう少し広い索敵を覚えるべきかなと思いながらため息をつくが、その索敵に引っかかった魔術師が一人いた。


「やぁ、天候には恵まれたようだね」


現れたのはエアリスこと春奈だった。小百合と目を合わせた瞬間、互いに強い殺気を放ったのはいつも通りだとして、春奈は小百合への軽口を言うよりも早く康太のもとに歩み寄る。


「エアリスさん。今日はよろしくお願いします」


「よろしくするのはベルだ、私ではないよ。頑張りなさい」


「自分の弟子の応援はいいんですか?」


「もちろんベルも応援するさ。でも私は同じくらい君のことも応援するよ」


そう言って春奈は康太の肩に手を置く。自分の弟子のほうを応援するべきだというのは理解しているが、それでも康太も応援したいという考えがあるのだろう。彼女からすればどちらも同じくらい気にかけている魔術師だということがうかがえる。


「随分と余裕があるのだな。それとも負けたときに悔しがる演技をしないようにする伏線かなにかか?」


「ははは、悪いが今回は私の弟子が勝つだろう。応援するとは言ったが結果は正直だ。あの時とは違いベルは一人前以上の実力を身に着けている。もう負けないさ」


「どうだかな。うちの馬鹿弟子にせいぜい踊らされないようにすることだ」


「言っていろ。目にもの見せてやる」


「はいはいお二人ともそこまで。今回の主役はビーとベルさんなんですよ?二人が争ってどうするんですか」


小百合と春奈の間に真理が割って入る。そしてそんな真理の外套を掴むような形で神加が一緒になって二人の間に割って入っていた。


この二人の仲の悪さは本当に筋金入りだ。とても昔からの知り合いとは思えない。


「エアリスさん、ベルはもう中に?」


「あぁ。あの時と同じように待ち構えているだろうさ。君も早くいってあげるといい。きっとあの子も待っている」


「さっさと行かないといろいろと準備されそうですね・・・それじゃ行ってきます」


康太はそういって校門から一歩前へと進む。その瞬間、康太は自分に強い敵意が向けられていることに気付いた。


その敵意を康太は知っている。何度もその身で受けた敵意だ。絶対に倒してやるという意気込みが肌から伝わってくる。


「いいね、やる気十分って感じじゃんか」


康太は歩みを進めながら槍を取り出して深呼吸する。前と同じ場所、三階の廊下部分に彼女はいた。


ライリーベル。康太が初めて戦った魔術師。康太の同盟相手であり、唯一無二の仲間。


そして、康太のことを好いてくれている女の子。


文が姿を見せた瞬間に、康太は槍を構える。すでに戦いは始まっている。それを文も理解しているし康太も理解している。


だからこそだろうか、最初に文はあえてあの時と同じような攻撃を放ってきた。


三階から校庭へと降り注ぐ雷撃。あの時は単発の魔術だったが、今回は文も様子見なんてことはしない。


空中に作り出された電撃の塊が、無差別に地面めがけて降り注ぐ。まるで雷の雨だ。


康太は雷の軌道を読みながらそれらを回避しつつ上空へと跳躍する。


電撃をすり抜けて、煌々と輝く電撃の塊よりもさらに上空へと跳躍して見せる。


そして噴出の魔術を行使して文のいる三階へと一気に突入して見せた。


ガラスを突き破って突入すると同時に槍で文めがけて斬りかかる。だが文もその動きを読んでいたのか、康太の槍を見切ったうえで回避すると暴風の魔術を使い康太の体を押しのけ、強引に康太との距離を作って見せた。


「いきなりご挨拶だな、もうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?」


「あんた相手に手を抜けるわけないでしょ?あれでも簡単によけてくるんだから大したもんよ・・・ったく厄介な」


文としてはあの攻撃で多少康太にダメージを与えられればいいと考えていたのだろう、だが康太は回避に関しては一家言持ちだ。


特に文の使う電撃の魔術は訓練でもよく受けているために回避のコツもつかんでしまっている。


康太に電撃を当てるためには直接触れるか、あるいは間接的にくさびを埋め込んでそこに電撃を通すしかない。


「じゃあとりあえず・・・自己紹介でもするか?一応これから戦うわけだし」


「・・・そうね・・・そういうのもいいかもね」


康太は槍を構えて、文は手をかざして互いをにらむ。


思えば初めて戦うため出会った時には名乗りなどは挙げなかった。ライリーベルであるかどうかを確認する会話をしただけで、魔術師としての名乗りなど挙げていない。


こうして改めて名乗るというのはいろいろと意味があるのだろうと二人はわかっていた。


「デブリス・クラリスが二番弟子、ブライトビー!」


「エアリス・ロゥが一番弟子、ライリーベル」


互いに敵意を放ち、それが交わる。名乗りを上げ、すでに戦いは始まっている。


「いざ」


「尋常に」


「「勝負!」」


康太と文が叫ぶ瞬間、互いに魔術を発動した。


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