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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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限界

拡大動作によって威力と射程を高めて襲い掛かる康太の突きは、広範囲に広げていた魔術師の障壁を突き破った。


その体に突きが襲い掛かると思われた瞬間、その体の表面が突如凍り付き康太の槍の一撃をほんのわずかにではあるが防ぎ、受け流していた。


風、炎に加え氷の魔術まで使えるのかと康太は歯噛みしていた。


そう簡単に倒せるとは思っていなかったが未だ奥の手を持っていたというあたりさすがというほかない。


だが康太は相手との距離をかなり詰めた。この距離であれば相手の攻撃もかなり限定されてくるだろう。


それを理解しているからか、相手は康太との距離を離そうと後退しようとするが、康太はそれを許さない。


突きの攻撃が防がれたものの、相手の障壁には十分以上のダメージを与えた。そしてそのダメージに加え、相手が発動した防御を崩すため、そしてさらに近づくために康太は槍を振り回して横薙ぎの攻撃を拡大動作によって強力化し放つ。


今展開している障壁でも、その身にまとっている氷の鎧でも防ぎきれないと判断したのか、魔術師は足元に氷の足場を作り出すとそれを足場に跳躍し康太の槍の薙ぎ払いを回避して見せた。


だが当然その体は宙に浮く。作り出された氷の足場は康太の一撃によって障壁ごと容易に上下に分断された。


空中に投げ出された魔術師は体勢を整え、さらに康太から離れようと風の魔術を行使しているが康太もそれを許さない。


暴風の魔術を自分に引き寄せるような形で発動することで相手の風を相殺するとその距離を一気に詰めた。


一歩、二歩、三歩。確実に前へと前進し、魔術師が完全に防御態勢を整えるよりも早く射程距離に入った。


瞬間、康太は自身の持つ攻撃を一斉に叩き込む。槍の斬撃、打突、突き、再現の魔術によって一気に再現してその身を覆ってる氷の鎧を細切れにしていく。


障壁の魔術を展開しようとした瞬間、康太は前に出てさらに相手との距離を詰める。障壁の内側へと入り込むと今度は拳や蹴りの魔術を一気に叩き込んだ。


斬撃に加え打撃、身体能力強化が加わった状態の拳を大量に受けたことで、魔術師の体は後ろに運ばれるが、康太はそれを遠隔動作の魔術によって防ぐ。


自身の体を前に運ぶと同時に相手の魔術師の下を潜り抜け、その踏み込みを利用して遠隔動作の魔術によって相手の魔術師の体を強引に前方へと蹴り飛ばす。


急に背後から衝撃を受けたことで動揺していただろう、魔術師はいつの間にか康太が自分の背後を取っているという事実に驚きながらも、状況を打開するために防御と反撃の準備を進めようとしていた。


だがもうすでに遅い、康太の攻撃準備はすでに整った。


康太のほうを向いた魔術師の眼前には、小さなボールのようなものが投げ出されていた。それがいったいなんであるかを把握するよりも先に、自身に向けて大量の鉄球が襲い掛かっているということに気が付いた。


全面に障壁を展開して防御しよう。そう考えた瞬間に、お手玉と魔術師を避けるように半球体状の障壁が展開される。


それが康太が展開した障壁であると気付くのに時間はかからなかったが、同時に何をしようとしているのか理解してしまった。


理解した時にはもう遅かった。康太はお手玉の中に入っている炸裂鉄球を解放し、お手玉を中心に無作為に鉄球をまき散らす。


そしてその鉄球は康太が展開した炸裂障壁の魔術に直撃し、その真価を発揮する。


砕けた障壁は刃となって魔術師に襲い掛かった。だが魔術師もとっさに反応して障壁の魔術を球状に展開しその身を守ろうとしていた。


だがとっさに展開した障壁は先ほどよりも耐久力に難があるのか、周囲から襲い掛かる鉄球に加え目の前に集中して襲い掛かる炸裂障壁の刃と鉄球によって部分的にではあるが破壊されてしまっていた。


だが十分にその身を守ることには成功している。右肩と左腕に炸裂障壁の刃が直撃したのか、わずかに血を流しているが問題なく戦闘は続行できる。


自身の被害状況を正確に判断しながら康太への反撃を行おうと魔術師が考えていると、砕けてしまった障壁から康太の両手がつきだされていることに気付いた。


いったい何を。魔術師が理解するよりも早く康太の声が聞こえた。


「お返しだ」


次の瞬間、康太の背後から急激な風が流れ込むと同時に掌から大量の炎が噴出され、ぎりぎり形を維持していた球状の障壁内を炎で満たした。


康太の体は噴出の魔術によって体をやや後方に運ばれるが、何度か地面を転がった後ですぐさま態勢を整え自身の攻撃を受けきった魔術師のほうに目を向ける。


球状の障壁の中はいまだに炎で包まれている。あの状態で生きていたとしたら完全に化け物だなと思いながらも康太は地面に突き刺していた槍を回収する。


障壁が消滅すると、魔術師は若干ではあるものの前傾姿勢になり肩を上下させながら必死に息をしている。


体の一部はまだ燃えている。ところどころから煙が出ているにもかかわらず相手はまだ意識すら喪失していない。それどころか、今のが逆鱗にでも触れたのか、小百合を彷彿とさせるほどの強烈な殺気を放ってきていた。


「・・・こりゃ無理だな・・・」


先ほどまでの攻撃は康太が持っている攻撃の中でもかなり自信のある攻撃だった。だがそれらすべてを受けきられた上に、なおかつまだまだ戦闘続行できるような相手となると今の消耗状態では倒しきれない。康太はそう判断した。


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