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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」

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康太の機動力

康太が発動した魔術は火属性魔術の『噴出』と呼ばれる魔術だった。


起点を設定し、その起点から炎を噴出させる。噴出させる炎の方向や強弱を調整することができ、その炎から起点に対して推進力を与えることができるという魔術だった。


ロケットエンジンなどをイメージすればわかりやすいかもしれない。とはいえ別にその起点の部分から気体燃料などを燃やしながら噴出させているわけでもないためにどのような理屈で推進力を得ているのかは康太には理解できなかった。


これを教えてくれた奏に聞いてみたこともあるのだが、本人もよく理解していないのだという話だった。


こういった魔術を扱う時はとにかくイメージを先行させることが重要で、理屈などを考え始めると魔術の威力や効果が落ちることがあるらしい。


そのため康太はこの魔術が『そういうもの』であるという考えのもと使用していた。


この魔術によってもともと高かった康太の機動力にさらに磨きがかかったということになる。


ただの身体能力強化による移動の延長だった機動力は、今この時全く別物へと変化したのだ。


作り出した壁を容易に飛び越えられた魔術師は再度後退しながら康太に対する具体的な対策をいくつか考えて実行していた。


まず巨大なゴーレムの作成。先ほどまで作り出していた劣悪品ではなく、しっかりと魔力の通ったいわゆる戦闘用のゴーレムだ。動きも速く、体も大きく、なおかつ流れるような動きをしている。


そしてもう一つは文たちの方向に向かわせるゴーレムの数を増やすということだ。


先ほど黒い何か、ウィルが康太の体から分離したのは小柄な魔術師も見ていた。だがその物体がいったいなんであるのか正確に把握できているわけではない。


索敵で見た限り、今のところ剣を二本もってただ突っ立っているだけの存在だ。


先ほどと同じように粗悪品ゴーレムたちを文たちに向けて移動させていくと、ウィルが予備動作もなく急に動き出す。


両手に持った剣を振り回し、ウィルを通り過ぎようとするゴーレムたちを一刀両断していった。


ただのゴーレムの動きではない。熟練された技術を持った、まるで本物の人間のような動きだった。


それもそのはずである。ウィルが康太と行動を共にするようになってからずっと、ウィルは康太や小百合、真理の動きをトレースし続けているのだから。


未だ模倣できる技術は少なく、技術を使用できる時間にも限りがあるがそれでも確実にウィルの戦闘能力は上がっている。


この場にいる黒い物体は、まさにブライトビーの影に他ならないのだ。その戦闘能力、その戦い方は本物のブライトビーに酷似している。


粗悪品のゴーレムではこの状況を変えることができないと判断し、小柄な魔術師は戦闘用のゴーレムの操作に意識を集中することにした。


高速で動く康太はゴーレムを躱して接近しようとしてくるがそれを相手が簡単に許すはずがない。


壁を作り出し、空中に出なければ先に進めないような状況を作り出すとゴーレムを操って簡単に空中に飛び出せないように牽制する。


康太が先に進むにはゴーレムを破壊するしかない。


先ほどまでのゴーレムと違って動きがいい、簡単に破壊はできないだろうなと思いながら康太は眉を顰め、同時に笑う。


ここで逃がしてはいけないと、自分の中にいる何かが告げる。それは戦闘経験を培ったことによって育まれた康太の勘か、あるいは師匠である小百合から教わった戦闘の定石からくる判断か。


どちらでも構わない、康太はもとより逃がすつもりなど毛頭なかった。


自分の装備の中から鉄球が収められているカートリッジを取り出すと自身の斜め後ろへと一斉に射出し、収束の魔術によって壁の向こう側にいる小柄な魔術師めがけて襲い掛からせる。


康太の斜め後ろへと射出された鉄球は収束の魔術によって上空に弧を描くような軌道に沿って魔術師めがけて襲い掛かる。


魔術師も自分に対して、攻撃がやってきているということを理解したのか、上空に意識を向け自身の身を守るためにその体を土の鎧で覆っていく。


土の壁ほどの防御能力はないが、康太の放った物理的な攻撃であればこの程度で問題ないと判断したのだろう。


そしてその判断は正しい。康太の放った鉄球は魔術師が作り出した土の鎧にすべて受け止められてしまっていた。


距離による威力の減衰に加え、土の鎧の強度を打ち破れるほどの威力を得られなかったのが原因だ。


もっと強い攻撃ならば貫通できたかもしれないが、今はこれでいいと康太は自身が持っている鉄球や火の弾丸の魔術を断続的に放ち、小柄な魔術師をその場に足止めしていた。


鎧をまとっている状態で相手は足を止めている。そして康太がそうやって牽制している間にもゴーレムは康太めがけて攻撃を繰り出している。


無論、康太はゴーレムの攻撃に当たるほど遅くはない。


ゴーレムの攻撃を回避しながら、コツコツとその体に打撃を積み重ねていく。


同時に土の壁にも攻撃を重ねていく。準備は着々と整っていた。


とはいえこの方法は康太の消費も馬鹿にならない。装備という意味でも魔力という意味でも、着実に康太は消耗していく。


だが康太の残弾が尽きるよりも早くその時は来た。康太は蓄積の魔術を解放し、再び噴出の魔術を発動する。


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