表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
884/1515

盾の意味

単純な突進、文はその動きを見て眉をひそめ内心舌打ちをする。


障壁が展開させられていなければ足をかけて転ばせることができるほどに稚拙な動きであると素人程度の文でも理解できる。


言ってみればただ走ってぶつかってこようとしているだけなのだ。だがその体の周りを覆う障壁がその攻撃を厄介なものに変えている。


「トゥトゥ、あの障壁突き破れるだけの水出せる?」


「難しいな、あいつの障壁地味に硬いぞ?さっきから攻撃してるけど岩みたいだ」


倉敷は常に水を操りその障壁に圧力を加えているが全くびくともしていないようだった。


おそらく守りに特化したタイプなのだろう。その動きは緩慢でもその守りを破れるだけの攻撃ができなければ意味がない。


強い一撃を加えられれば突き破ることもできたかもしれないが、文は一撃に強力な威力を込めることは確かにできるがそれは現象系の攻撃に限られる。


物理系の攻撃に関しては杭を飛ばしたりと牽制レベルの攻撃しかないのだ。


大質量の攻撃というとこの中では倉敷が最も得意ということになる。もっともその倉敷でもあの障壁を破るのは苦労するらしい。


攻撃したとしてもその前に魔力が尽きる可能性のほうが濃厚だった。


そして文と倉敷が襲い掛かってくる肥満体形の魔術師の対応に苦心していると、隙を見て細身の魔術師が地面を凍らせ始める。空気中の水分を凍らせるのではなく地面を凍らせることでこちらの足場を奪いに来たようだ。


とはいえ近くで戦っている肥満体形の魔術師の邪魔だけはしないよう凍らせる場所は文たちの周りに限られている。


地面と一緒に自分たちの靴がわずかに凍り付くのを確認して文と倉敷はそれぞれ凍らないように適度に地面に足をたたきつけた。


「くっそ・・・熱とかそういう魔術は使えないのかよ!あいつらこのままだとどんどん調子に乗るぞ!」


「・・・トゥトゥ、あの障壁なんだけどさ、穴はないの?」


「周りを水で覆っても全くないな。水が浸透する気配もない」


「・・・わかったわ。ちょっと時間かかるかもしれないけど倒す手は思いついた。あっちの細っこい方はまだ対処できないけど・・・まずはあの近づいてくる奴を優先で対処しましょうか」


まずは自分たちの脅威となっている近づこうとしている魔術師への対処を優先することにしたが、倒せるといっておきながら文は対処するという言い回しを使った。


その言葉がどのような意味を持つのかはさておき、文は周囲に電撃を発生させ始め、空気中に電撃の球体を大量に作り出す。


ゆっくりと動くそれは触れた瞬間にほかの光球と反応して電撃を放つ魔術だ。唐突に現れた光球の群れに肥満体形と細身の魔術師は動くべきか否か迷っていた。


ほとんど動かないその魔術が何かしらのトラップ、あるいは何かしらの攻撃であるのは明らかである。


とはいえ動かなければ何も始まらないのも事実。最初に動いたのは防御のための障壁を展開したままの肥満体形の魔術師だ。


球体の障壁ごとその体を動かし、球体に向けて近づくと周囲にある電撃の球体が反応して一斉に電撃を放ってくる。


障壁によって完全に防がれてしまうが、一度の接触で二人の魔術師はこの魔術の効果をおおよそ把握できていた。


そして今の状態であれば防ぐこともできるということも証明できたことでこの魔術は脅威とはなり得ないと判断したのか、悠々と突進の準備をしていた。


そんな中文は展開されている球体の障壁めがけて電撃の弾丸を放つ。当然のように障壁に防がれてしまうが障壁はわずかに光を帯び始めた。


いったい何をしようとしているのか、そんなことを考えるよりも早く肥満体形の魔術師は文たちめがけて突進を、細身の魔術師は氷のつぶてと刃を作り出してその突進を援護するべく攻撃を仕掛けていた。


障壁がいくつもの球体に接触していき、電撃が浴びせられていくと障壁が帯びていた光は徐々に大きくなっていく。すると文が地表に浮き出させていた砂鉄が一斉に障壁に引き寄せられるように集まってきた。


砂鉄はあっという間に障壁を覆っていき、完全に黒い球体の塊のようになってしまった。


周囲に電撃を放ち、さらに砂鉄を地表に集めると球体に含まれた電撃の磁力に引き寄せられてどんどんその体積は増していく。


文たちに放たれてきた氷の攻撃を倉敷の水で押し流す中、倉敷は完全に砂鉄に覆いつくされてしまった肥満体形の魔術師のほうを見て眉をひそめた。


「うっわ・・・なんだあれ・・・キモイな」


「相手が考えなしで助かったわね。あれじゃもう何も見えないでしょ。砂鉄の重さもあって動きもかなり鈍くなるはずよ。今のうちにあの細いのを倒すわよ!」


「了解!お前結構えぐい手を使うのな」


「球体の障壁を張ったあっちが悪いのよ。周りを何かで覆ってくださいって言っているようなものじゃない。あの砂鉄を熔解させられれば完全に閉じ込められるんだけど・・・さすがにそれだけの熱量を出すのは面倒くさいわね」


文の電撃を応用すれば鉄に熱量を持たせることは不可能ではない。だが鉄が熔解するほどの熱量を出すのは容易ではない。


そんなことに魔力を消費するくらいならば別のことに使ったほうがいいと文は考えていた。


すでにあの砂鉄は多量の電撃を含んでいる。あの状態で障壁を解除しても、そしてさらに内側に障壁を展開してもあの状態で固定されてしまっているために外側を見ることはできない。


攻撃を防ぐ盾を相手が持っているのであれば盾ごと動けなくしてしまえばいいだけの話なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ