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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」

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水と雷の連携

目を使えず、音と索敵の魔術でしか状況判断ができなくなった魔術師たちに対して文は一気に攻勢に出ていた。


周囲に電撃を、そして自身の体の周りからは鉄の杭を取り出して一斉に放つ。


その攻撃は康太のそれに似ていた。現象系の攻撃と物理系の攻撃を同時に放つことで相手の防御法を限定する。


目が使えず、索敵によって周囲を把握している魔術師が何を『見て』いるのかこの攻撃でわかる。


魔力を含んだ周囲のすべてを観察しているのか、それとも物理的な存在だけを知覚しているのか。


康太の様に無属性、念動力によって生み出される不可視の攻撃を文は持っていないために康太には劣るが、文の放った物理系と現象系の同時攻撃は結果的に魔術師によって違う対処を促した。


長身の魔術師は電撃と鉄の杭両方に反応し、細身の魔術師は電撃のみに反応し、肥満体形の魔術師は鉄の杭のみに反応した。


長身の魔術師だけが完全に攻撃を防ぐことができ、細身の魔術師の体には鉄の杭が数本食い込み、肥満体形の魔術師はその体に電撃を受けてその場に蹲ってしまう。


おそらくこの中で最も高い索敵能力を持っているのは長身の魔術師なのだろうと文は即座に察した。


「トゥトゥ、背の高い魔術師を集中して攻撃しなさい。あいつを先に倒すわよ!」


「了解!とっておき出すぞ!」


倉敷が大きく手を広げるとその手の先に巨大な水の塊が作り出される。その中には文が先ほどの攻撃で作り出した砂鉄が多量に含まれていた。


中で加速し続ける砂鉄の勢いそのままに、両側にあった水は勢いよく長身の魔術師にめがけて噴出される。


かつて康太相手にも使ったウォーターカッターと同種の術だった。倉敷の持つ術の中で最も高い威力を有する術である。


自分に向けて攻撃が放たれたことを理解したのか、長身の魔術師は即座に障壁の魔術を作り出して防御するが、その障壁は徐々に削られていく。単純な攻撃ではなく、倉敷のこの魔術は継続的に物体を削っていく攻撃だ。


倉敷の魔力の続く限り放たれる攻撃は一度防御してしまえばそれ以外の行動がとれなくなってしまう。


障壁を動かしてなおかつ自分も動くことができれば何のことはないかもしれない。だが倉敷だって動く相手に対応して照準を定めることくらいはできるのだ。


仲間が攻撃されていることに気付いたのか、肥満体形の魔術師が自分以外にも障壁を張ろうとするがそこに文が追撃を仕掛ける。


周囲に電撃を作り出すと肥満体形の魔術師に襲い掛からせる。自分が電撃によって攻撃されていると気付いたのか、その体を覆うように半球状の障壁を展開して防御しようと試みているようだった。


細身の魔術師は自身に襲い掛かった鉄の杭を引き抜くとその傷口を一時的に凍らせて止血していた。


動きは鈍くなるが失血による体力の消耗を抑えたのだろう。そして倉敷の攻撃を止めようと倉敷の手元にある巨大な水の塊を凍らせようと冷気を走らせた。


だがその動きを察した文が即座に風を作り出してその冷気を吹き飛ばす。倉敷の邪魔はさせないといわんばかりの行動に魔術師たちは歯を食いしばっていた。


「おい!あと一分が限度だぞ!それ以上はこの状態を続けられない!」


「了解よ、ならちょっと強めに行きましょうか」


そう言って文は腰のベルトにつけられていた棒状の物を手に取る。


それは普段文が打ち出すそれとは比較にならないほど大きな杭だった。康太が見ればその杭の正体を理解できただろう。


それは康太が使う竹箒改に仕込まれている大蜂針である。普段なら康太が蓄積の魔術によって打ち出すが、文の場合は蓄積の魔術は用いずに磁力を使って打ち出す。


「水の勢いにプラスしてっと・・・さぁ!防げるもんなら防いでみなさい!」


文は磁力を操って倉敷の水の勢いに乗せるような形で巨大な杭を打ち出した。


すでに倉敷のウォーターカッターによって削られていた障壁ではこの一撃を防ぐことなどできるはずもなく、杭は障壁を貫通して長身の魔術師の体に深々と突き刺さった。


そして障壁を突き破った杭に追従するかのように倉敷の水が襲い掛かる。


水の勢いに負けてその体が背後にあった木にたたきつけられる中、砂鉄によってその表皮を一気に傷つけられ、とどめと言わんばかりにその体に強い電撃が襲い掛かった。


物理的な杭による攻撃、水の勢いに加えた砂鉄の攻撃、さらに文が放った強力な電撃のおまけつき。


この状態で意識を保っていられるはずもなく、長身の魔術師はその場で意識を手放した。


索敵に秀でたものを先につぶすことができたのは文たちにとってかなりのアドバンテージとなる。


だが文たちの攻撃が成功するとともに、相手の攻撃もまた文たちに襲い掛かっていた。


障壁を球体上にした状態で宙に浮き、肥満体形の魔術師がそのまま突っ込んできたのである。


肥満体形の魔術師に対しては電撃の攻撃を繰り返していた文だったが、球体上に障壁を展開されてしまっては届くものも届かない。


自分たちに襲い掛かってきている魔術師に対して爆風の魔術を発動するが、それでも突進は止まらなかった。


強引な突破、倉敷がとっさに水の壁を作り出すがその勢いを殺ぐのが精々で止めることはできなかった。

水を突破して目の前に現れた魔術師はその体をたたきつけるように文たちに突進してきた。


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