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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」
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期待の戦力

「了解。とりあえず好きに暴れればいいんだな。っていうかさっき言ってた特殊な物品?ってなんだ?魔術的なものか?」


「あぁ、今回は呪いのビデオを扱ってる。それを奪取しようとしてるやつがいるんだよ。そいつのしっぽを掴もうとしてるってわけ」


「・・・呪いのビデオ・・・貞子的な奴か・・・?」


「いや、ターミネーター的な奴」


康太の言葉に倉敷は疑問符を浮かべて首をかしげてしまう。今まで呪いのビデオというといろいろな現象や事象がテレビなどで紹介されてきたが、ターミネーター的な呪いのビデオというのは聞いたことがなかった。


ロボットが何かしてくるのだろうかという見当違いな想像をしている倉敷をよそに、康太は話を先に進めることにした。


「そのビデオを指定の場所に運ぶのが今回の目的だ。指定の場所の地図はもう用意してある。基本的に最寄りの教会まで門を使って移動して、そのあとは徒歩で行くことになる。」


「確実に戦闘が発生するからあらかじめ準備しておくといいわよ。っていうかあんたって戦闘するにあたって事前準備とか必要なタイプだっけ?」


「いや必要ないけど・・・戦闘確実か・・・なんかいやな予感するんだよなぁ・・・」


「場所的には派手に暴れても問題なさそうな場所だから気にしなくていいぞ?洪水でも鉄砲水でも好きに起こしてくれ」


「お前な、そんな災害級の攻撃天候の補助が得られないと難しいっての」


できなくはないんだなと康太と文は水属性の術に関してはやはり倉敷はかなりの実力を持っているのだと感心してしまっていた。


初めて康太と戦った時、雨だったとはいえ大量の水に加え強い水流などを放ちかなり威力の高い攻撃などを行っていた倉敷。


あれからさらに術は洗練され、より効率よく、より高威力の術を扱えるようになっているだろう。


水属性の術しか扱えないというのが彼の欠点だが、一つの属性に特化しているというのも一種の強みだ。


「でも条件次第ではそれだけの攻撃が期待できるなら切り札としても使えるかもね。私たちって大質量攻撃ってあんまりないから」


「そういえばそうだな。タイプが違う術者っていうのはいるとありがたいよ」


康太は念動力をベースとして物理攻撃をメインとしている。文は属性魔術をベースとして現象系攻撃をメインとしている。


対して倉敷は属性攻撃をメインとして物理的な現象攻撃をメインとしている。


文との違いは物理的な影響力を強く持っていることで攻撃のタイプが大きく異なるという点だ。


文の得意とする電撃では相手を押しのけることはできないが、倉敷の水ならばそれができる。


特に水の力は恐ろしい。大きな速度を持っている水を一度に扱えばそれだけで抗うことは難しくなる。


受け流す技術などがあれば水の流れから身を守ることも不可能ではないが、その分身動きは取れなくなる。


体の自由を奪うという意味では水の攻撃はかなり有用なのだ。


タイプの違う実力のある術者がそろっていれば戦闘の幅が広がる。それぞれが協力できればさらにその戦闘能力は高くなっていくだろう。


「ただ一つ注意ね。これは康太も一緒だけど相手の正確な数がわからない以上最初から全力は出さないように。常に消費魔力と装備の残量に注意しなさいよ?」


「うげ・・・そんなやばい連中なのか?」


「本部相手にちょっかい出してるくらいだからね・・・これくらい警戒しておかないと不安だわ。全力で倒してその後に増援が来ないとも限らないもの」


文の言うことはもっともである。相手の数が限られているのであればある程度全力を出してもいいが、相手の数がわからないのであれば常に警戒し、余力を残した状態で戦うのがセオリーだ。


「ちなみに聞いていいことかわからないけどさ、倉敷って魔力の回復能力どれくらいあるんだ?俺ははっきり言ってほとんどないけど」


「俺の場合は平凡だな。精霊に補助してもらってるから比較的マシだと思うけど・・・あんまりでかい術を連発すると数分間は戦えなくなる」


それでも数分間で済むのかと康太は自分の供給口の貧弱さを改めて認識していた。


精霊を身に着けても自分が使える属性ではないために結局のところ自前の供給口でコツコツ補給するしかない。


今回は相手が魔術師ということもあってⅮの慟哭で相手の魔力を吸えるためある程度マシだろうがそれでも長期戦に耐えることができるとは思えない。


火属性、あるいは風属性の精霊を早い段階で身に着けておきたいと考える反面、そうすると魔力の貯蓄配分にも注意しなければいけない。


考えることが多すぎてパンクしそうになっている康太に対して、文は小さくため息をつきながら手をたたいて話を一度切る。


「はいはい、とりあえず状況はそんな感じよ。警戒は怠らないように。行動開始は二日後の深夜、協会支部に集まりましょ。戦闘ができるだけの格好をしてきて頂戴。何か質問は?」


「今のところはない。なんかあったらまた聞くよ」


「よろしい。それじゃまたよろしくね。これでたぶんあんたへの頼み事は最後よ」


「ようやく解放されるわけだ。まぁ来年度からは対等な立場で頼むぜ?」


「また何かやらかしたらその時は同じような契約を結ばせようかしら」


文の言葉に倉敷はやめてくれよと笑いながら拒否していた。いいようにこき使われた時期ではあったが、倉敷にとって決してマイナスなだけではなかった時期であるというのは間違いないようだった。












康太と文、そして倉敷は作戦の予定日に協会支部に集まっていた。


康太は外套に加えてウィルを纏うことで外見上は普段とあまり変わらないように見えるが、細かく索敵などをしてみることでその装備の多さを確認することができるだろう。


ウィルを纏うことで重量が増えているが、その分歩行補助や装備をウィルに持ってもらっているために康太自身に負担は少なくなっているようだった。


文は康太に比べると装備は少ないが、それでも普段に比べると所持している道具がやや多い。


普段文自身がそこまで戦闘メインの魔術師ではないためにこういう姿は地味に新鮮に映るのは仕方のない話だろう。


二人に比べて倉敷はさらに軽装だ。簡単な外套に半分だけの仮面、所謂精霊術師の仮面をつけたシンプルな格好だ。


もともと所持した道具などによって戦闘能力が左右されるタイプではないためにこの中では一番軽装となっている。


「なんかお前分厚くないか?俺の気のせい?」


「気のせいじゃないわよ。本気で準備したからいろいろと隠してるのね・・・良くも悪くもわかりやすくていいわ」


「それでもかなり頑張って索敵しなきゃわからないだろ?ウィルに手伝ってもらってるから隠すのはお手の物だぜ」


ウィルに取り込む形で装備品の多くを隠しているためにこれを索敵するにはかなりしっかりと索敵しなければ見つけるのは難しいだろう。


とはいえ康太の体が分厚くなっているのは普段の彼の姿を見ていれば一目瞭然だ。もっとも本部を相手にしている件の連中が普段の康太を知っているかは疑問ではあるが。


康太たちが支部長の部屋に行くと、支部長も準備はできているのか厳重に鍵のかけられたアタッシュケースを康太たちに渡してくる。


「それじゃあ健闘を祈っているよ。怪我しないようにね」


「全力を尽くしますよ。何かあったらお願いします。いろいろと頼ることになると思いますから」


康太はそういいながら何重にも施錠されたアタッシュケースを手にして支部長室から出ると協会の門の前に移動する。


「ベル、ビデオは任せた。俺が持ってるといつ取られても不思議じゃないからな」


「了解、任されたわ。いざって時は壊すからそのつもりでね」


文ならばアタッシュケースを開けることなく電撃などでビデオを破壊することもできるだろう。


前に出る康太と違って後衛での援護や攻撃が主流の文にビデオを持たせるのはあらかじめ決めておいたことであった。


「これが呪いのビデオってやつか・・・こんだけ厳重にするってことは見るだけで呪われるのか?」


「大体あってるわ。確かに見ると呪いの魔術がかかるわね」


「内容が内容だけに呪いのビデオとしての怖さは微妙だけどな・・・それはさておき、行くぞ?準備はいいか?」


康太は文と倉敷に視線を合わせて準備が万端であることを確認すると、協会の門の行き先を指定のポイントの最寄りの教会に設定してもらい、意気込んでからその門をくぐる。


すでに警戒は最大限にまで上げている。本部が情報をわかりやすく流したということは、門をくぐった段階で襲われても不思議はない。


最寄りの教会にたどり着いた康太はまず周囲に敵対意思を持った魔術師がいるかどうかを確認するべく索敵の魔術を発動する。


とりあえず周囲に魔術師はいない。教会の管理をしている神父くらいのもので康太の索敵範囲である三十メートル以内に魔術師はいなかった。


康太に続いてビデオテープを持った文が協会の門をくぐりやってくる。そして即座に索敵の魔術を発動し周囲の確認を済ませていく。


「ひとまず安心みたいね・・・魔術師らしい奴はいないわ」


「同じく・・・んじゃ指定のポイントまで移動しますか・・・ここから歩くとどれくらいかかるっけ?」


「結構かかるわよ?人通りもすごく少ない・・・っていうかほぼなくなるしね」


康太たちが目的としている場所は夜に向かうような場所ではない。少なくとも下調べした段階では全く人通りはなかった。


山奥にある場所にほんの少しできた平野。そこが今回の指定のポイントだった。時期が時期ならばそこにテントなどを張ってキャンプをする者もいたのだろうが、三月にそのようなことをするような稀な人間はいないようだった。


「んじゃトゥトゥ、指定ポイントまで一気に移動するから地図見て位置を常に教えてくれよな」


協会から出て人通りの少ない場所まで移動すると、康太は周囲に人がいないことと上空に向けている光などがないことを確認しながら準備を進めていく。


その様子に倉敷は疑問符を飛ばしていた。


「移動はいいけどどうやって行くんだ?車でも無理だろ?」


「飛ぶ」


康太は纏っていたウィルを薄く延ばして布状に変えると、残った部分を自身の体、そして文と倉敷の体に巻き付けて暴風の魔術を発動する。


風を受けたウィルの体が徐々に持ち上げられていき、一気に上空へと舞い上がっていった。


「ビー、あんたはウィルの制御に集中して。風は私が起こすから」


「了解頼んだ。トゥトゥ、ナビ頼むぞ」


「あー・・・そういえば前もこんな風に飛んでたよな・・・」


倉敷は以前康太が同じように飛んでいたことを思い出しながら携帯を取り出して指定ポイントまでのナビを開始した。


誤字報告を五件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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