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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十話「映し繋がる呪いの道」

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副本部長

康太たちが副本部長との会談の都合がついたのはその数日後のことだった。


康太、文、アリスの三人は支部の門から本部の門へと移動すると、案内に従って副本部長にあてがわれている部屋へとやってきていた。


以前にも康太はあったことがある。少なくとも康太に対してあまり良い感情は抱いていないであろう人物を前にして、康太は少しだけどう対応したものか迷っていた。


康太とアリスが会いたいといっているのはすでに相手にも伝わっているだろう。危険人物二名が会いたいといってきてなお対応するというのは何か理由があるのか。


それともただ単に支部の人間が会いたいといって拒否するほど狭量ではないのか。どちらにせよ康太が警戒するのも仕方のない話だろう。


「久しぶりと言っておこうか。ブライトビー、そしてアリシア・メリノス・・・見ない顔が一人いるが・・・」


アリスによって翻訳がされた言葉が届く中、康太と文は互いに顔を見合わせて小さくつぶやいてからまずは文の自己紹介をするべきであると考え、文は一歩前に出る。


「初めまして。ブライトビー、並びにアリシア・メリノスと同盟を組んでいるライリーベルと申します。今回は副本部長からの依頼をビーと合同で受けさせてもらっています」


アリスの翻訳により正しくその自己紹介の内容を理解したのか、その文の自己紹介に副本部長は仮面の下にある目を細めて文のことを観察しているようだった。


康太とアリスという危険人物と同盟を結んでいるということで文にも何かしらの重要機密的なものがあるのかと考えているのだろうか、副本部長の文に対する視線の向け方が若干変化したように感じられた。


「まぁいい・・・それで・・・ブライトビー、アリシア・メリノス、私に会いたいといった目的を教えてもらおうか・・・あまり支部の人間と軽々しく会うのは避けたいので手早くしてくれ」


一応本部のナンバーツー、そう易々と支部に所属しているただの魔術師相手に接触するだけの時間をとるというのは避けたいのだろう。


明らかにさっさとこの要件を終わらせたいというかのように副本部長は話を先に進めようとしてくる。

康太としても願ったりかなったりだと話を先に進めることにした。


「今俺たちは副本部長からの依頼で呪いのビデオの案件にかかわってるのはもうご存知だと思いますが・・・副本部長が俺を指名したその理由を確認したいんです」


「・・・理由?」


「この際腹を割って話したいんです。俺を通じてアリスに依頼したかったのか、それとも別の何かがあるのか・・・今まで他の支部に依頼していた魔術師のことに関しても気になるところがありまして」


いきなり本題に入った康太に副本部長は眉をひそめて何かを言いかけるが、少し考えるそぶりを見せてから康太たちに向き直る。


その目には多少の迷いのようなものが見え隠れしているのを康太と文は感じ取っていた。


「仮に、お前への依頼に何か理由があったとして・・・それを話したらお前はどうするつもりだ?」


「俺とアリスの関係を利用してアリスの力を借りたいのであれば、俺が受けた依頼をアリスが受けてくれるように打診するつもりです。でもそれ以外の理由があるのであれば、その内容によって行動は変えるつもりです」


アリスへの間接的な依頼が目的なのか、それとも康太にそれ以外の価値を見出したのが依頼の発端なのか。


康太としてもこの件がどのような意味を持っているのかを図りかねているため副本部長のもとにまで足を運んだのだ。


「私がそれを素直に話すと思ってここに来たのか?」


「話すつもりがないのならそれならそれで構いませんよ。依頼は失敗ということで俺はこの件から手を引くだけの話です」


話さないならば康太からすればそれでも問題はなかった。今回のことはただ単に康太の実力不足ということで隠すようなことでもなく、依頼達成不可能として報告するつもりである。


初めての依頼失敗という手痛い評価を受けることになるかもしれないが面倒に巻き込まれるよりはずっとましだと康太は考えていた。


康太の言葉に副本部長は額に手を当てて悩み始める。


今回のことでどのような思惑があるのかは不明だが、はっきり言って調査はあまり進んでいない。


そして何かアクシデントが起きたというわけでもないために事態は全く進展していない。


破壊すればいいんじゃないのかと康太が本気で考えるようになった程度の進展しかない今、副本部長の考えているような何かが達成、あるいは思惑通りに事が運んだとは到底思えなかった。


つまり康太はこの場で副本部長の思惑を話させる代わりに、その手伝いをしてやってもいい、あるいはその手伝いができるかもという提案をしているのだ。


無論可能不可能はあるとはいえ、依頼を受けた身だ、本部へ恩を売っておくという意味でもここで副本部長に話をしておく価値はある。


「・・・一緒に依頼を受けたというライリーベルも同様の意見か?」


「そうです。私はビーの意見を支持します。依頼の内容は理解しましたが依頼の背景は少々疑問がありましたから」


康太は戦闘能力は評価されている魔術師だがそれ以外ははっきり言って微妙なタイプだ。だというのに指名してきたというからには理由がある。


副本部長が康太を指名した理由に文は興味があった。


副本部長はアリスのほうに視線を向けてため息をつくと、これ以上隠したところで意味はないかと小さく首を横に振る。


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